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0から始める小説の書き方徹底講座! 作者:N.M.ぺんくらぶ

技術論

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五感描写の利用法

 小説は地の文と会話文で構成されていますが、今回は地の文での描写に特化したお話です。
 地の文での描写は、基本的に「目の前で何が見えているか」を説明するだけで進めることができます。でもこれだけで小説としては一応の形になるとはいえ、ただ見えているものだけを淡々と説明した地の文はあまり良い文章とは言えません。
 小説における地の文は箇条書きのメモ帳とは違うので、読み手がより情感豊かに物語の世界を感じることができるように、様々な角度から工夫を凝らしてやる必要があると思います。

 最も簡単で代表的なものが、ストレートな心理描写です。登場人物の考えていることや、見たものへの感想を地の文に書き込むことで、「見えているもの+感じているもの」といった二種類の情報を読み手に伝えることができます。
 ただし心理描写は「人物の内側の世界」に関する情報を与えているだけに過ぎませんから、「外側の物理的な世界」に関する情報――つまり情景描写が上手くできていることにはなりません。
 では情景描写をより情感豊かに演出するためには、どうしたら良いでしょうか?

 有効な手段は、描写に『五感で取得できる情報』を用いることです。

 五感とは、以下の五つを指します。
・視覚
・聴覚
・触覚
・味覚
・嗅覚
 人間の感覚には厳密には五種類以上があり(平衡感覚など)どれも描写に活用することができますが、今回はわかりやすく上記五つで考えていきます。第六感やセブンセンシズの話がしたい方はあとでゆっくり私とガンダムや聖闘士星矢について語り合いましょうね!
 とにかく、仮に地の文へこれらすべての情報を書き込むことができれば「見えているもの+聞こえているもの+触れているもの+味わっているもの+匂っているもの」といった、実に多角的な物語世界を読み手に伝えることができます。しかもこれらは、すべて物理的な情報です。

 なぜこれらの物理的な情報を与えることで、読み手に情感を与え、物語世界に没頭させることができるのか。それはこれらの五感が、人間の本能的な感情を刺激するものだからです。
 綺麗なものを見たとき。人の心は和みます。逆に醜いものを見れば、嫌悪・恐怖の感情を抱きます。大きな音を聞けば驚きますし、小さな弱弱しい声ならば「なんだ?どうした?」と気になりますね。
 触った感触が柔らかければ気持ちいいですし、熱ければ心拍数も上がるでしょう。料理の美味しさを「宝石箱や~」と目の前で語られたら自分も食べたいと思いますし、理科準備室で刺激臭を思いっきり嗅いだら「エンッ!!!」と叫んで鼻血を吹き出したくなります。
 そして小説の地の文は、これらの情報を生々しく表現することにより、読み手に同じ感覚を追体験させるという錯覚効果を利用することができます。その結果、読み手の感情移入が深まって、情感豊かに物語世界を感じることができるのです。

 これら五感情報を地の文に書き込むのは意識すれば簡単なことですが、決して必要不可欠ではないために、うっかりすると省略してしまうことが多いものです。また、あまり一つ一つの描写にゴチャゴチャした情報を詰め込み過ぎると、情感豊かになる代わりにデメリットとして読みにくくなるので、あえて視覚情報のみにとどめてカットする、という判断になることも少なくはありません。
 そのうえ、慣れていないと五感描写は上手には書けない可能性もあります。たとえば、白飯の美味しさを「本当に美味しそうに」文章で表現するのは結構大変なことです。
 ただし。五感描写を使うと使わないとでは、表現の幅に圧倒的な違いが出ます。
 それこそ次元が違うというくらいに。――――当たり前ですよね。仮にこの現実世界が視力しか存在しないものだとしたら、どんなに味気ないものになるやらわかりませんから。
 小説における物語世界においても同じことが言えます。


 人間の感覚は、かなりの比率で視力に頼っています。だから小説でも漫画でも映画でも、見ている人間を物語世界に引き込むためには視覚情報が欠かせません。
 その点では漫画や映画、アニメといった映像媒体に比べると、小説における視覚情報の伝達力はかなり劣っていると言えるでしょう。なにせ漫画では1コマあれば伝えられる主人公の顔を、小説では何行にもわたって描写しなければならず、それでも正しく伝わらないことが多いですから。(参照:「キャラクター描写のコツ」)
 その代わりに小説は、触覚や嗅覚、味覚といった他の五感を伝える方法としては、映像媒体よりもはるかに優れています。心理描写も同様です。残念ながら聴覚情報は大の苦手ジャンルで視覚情報以上に魅力的に伝えるのが困難ではありますが、そこは短所を嘆くよりも長所を活かし、小説だからこそできる味わい深い表現というものを狙ってみるほうが前向きですし、楽しい執筆ライフになるでしょう。

 それでは最後に、久しぶりの例文で締めくくりたいと思います。

【例1:朝の食卓風景(視覚情報と心理描写のみ)】
 季節は夏。部屋の日めくりカレンダーは、今日で半分以上が破り捨てられてしまったことになる。俺は目が覚めてから顔を洗い、そのまま台所へと向かった。
 すると、おふくろが水着にエプロンでサバを焼いていた。
 テーブルの上では白く光沢のあるコシヒカリが踊っていたが、それで一気に食欲がなくなった。

【例2:朝の食卓風景(あらゆる五感情報と心理描写)】
 火照るような体と蚊の飛ぶ音にうなされた熱帯夜が過ぎ去り、部屋に朝日が差し込んだ。
 重たく感じる全身に鞭を打って顔を洗いに行ったが、あんなにぬるい水では目が覚めない。だが台所でおふくろの姿を見た瞬間、俺の背筋は凍えるように冷たくなった。
 おふくろが、水着にエプロンでサバを焼いていたのだ。
「…………」
 無言の台所に響くのは、おふくろがひたすらに魚を焼く音。
 青魚の油が熱せられ、台所いっぱいにその香ばしさが広がっている。
 テーブルの上では白く光沢のあるコシヒカリが、弾力に富んだその体中に、精一杯の甘みを閉じ込めて踊っているのだが……。
 目の前の光景に再び目をやると、俺の口の中は徐々に酸っぱい感覚で満たされていった。
「嫌なら食うな」
 水着エプロンのおふくろは俺の顔を見るなり、低く冷たい声でそう吐き捨てた。


 いかがでしたか? あまりやりすぎるとクドさが鼻についてしまうので、こういった演出を使う場合には短く推敲を繰り返しながら、狙い通りの五感だけをシンプルに用いることをオススメします。 M

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補足解説:前提として五感描写をふんだんに使っている例2は、例1に比べて情感豊かになるよう演出がかかっていると言えます。
 ただし、ほぼ同じシーン・同じ時間の流れを伝える文章であるのに、例2は文章量が演出過剰気味で肥大化してしまっています。そのため、全てのシーンで例2のように五感描写を書いてしまうと、物語のテンポが遅くなってしまいますね。
 また、例2はありとあらゆる物事の描写をいちいち五感描写で演出してあるため、あっさり流していいものまで事細かに書いてしまっています。そういった濃いめの描写が必要なシーンばかりではないので、上記例1と例2には優劣は存在しません。
 例文は使い方を提示してあるだけですので、使い所は書き手自らが考えなければならない、というなかなか困ったお話です。
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おまけ
 なお、講座の内容とは全然関係がありませんが、今回の記事をお読みくださった日本美少女エプロン協会の上層部関係者と思われる方から「極めて重大な精神的被害を被った」というメッセージを感想欄にていただいてしまいました。
 例文で描写されているシーンを詳細にイメージした結果、「アラフィフ女性の(以下検閲削除)」というシーンを思い浮かべてしまったので、例文3を追加して被害を緩和してほしいとのことです。
 お題としては「水着エプロン装着したせくしーばでぃの悪戯好き美女がいる光景を、同様のシチュエーションでR15寸前限界に迫りつつ」とのことですので、至らぬ身ではありますが誠意をもって対応させていただきます。同じ被害を与えてしまった皆様に対し、深くお詫び申し上げます。
 なお、お題がお題ですので逆に不快になってしまう方もおられるかもしれません。該当すると思われる方は、申し訳ありませんがここでブラウザバックをお願いします。


【例3:朝の食卓風景(準R-15編)】
 昨夜は、あんまり眠れなかった。
 ――当然だ。なんせ今日からこの家で、見ず知らずの美女と一緒に暮らすことになってしまったのだから。
 海外にいる親父は息子の俺に何の許可もなく再婚し、「君を一生幸せにするよ」などと歯の浮くセリフを父娘ほど歳の離れた女性に向けて抜かしたその直後、なんかよくわからん異世界に召喚されてしまうという暴挙に出たらしい。唯一の血縁者である俺はつい昨日、日本に押しかけてきた若妻からカタコトの日本語でそれを聞かされた。
 そして、我が家に新しく、出会ってまだ二日目の母親ができたってワケだ。
「ったく。あのクソ親父め」
 戸惑いと怒りの中、ほんの少し嬉しく思っているのを感じながら、俺は洗面所で顔を洗う。
「……母さん、か」
 一日経つと怒りも戸惑いも薄れ、嬉しさが目立つようになっていた。
 事の経緯はどうあれ――小さい頃に母親を失ってしまった俺にとって、その響きは胸の奥にこみ上げてくるものを感じる。本人も一生懸命に俺の母親をやると言ってくれているし、俺も一人暮らしに疲れてきたところだった。家に誰かが居てくれるというのは、それだけで嬉しいものだ。
 だが。――だがっ!!
 どうやら彼女は母親というものを、根っこから勘違いしているようだ。

「あっ、ケーイチ! オハヨウございます♪」
 気軽に台所のドアを開いた直後、俺はとんでもないものを目にすることになる。
 母親となった彼女はもともと、外国人特有のけしからんボディの持ち主だった。
 ピーチブロンドの髪に、ロリ顔の巨乳。
 そんな類稀なる美貌を持つ彼女は、親父の趣味嗜好をドストライクしたのは間違いない。何を隠そう、俺だってそうだ。つい勢いで結婚してしまうのも頷ける。
 そんな彼女が台所に立っているだけで感動的ではあるのだが、今回は度が過ぎていた。
 彼女は、サバを焼いていたのだ――スクール水着にエプロンという、変態的な姿で。

「あれ? ソイソースどこでしょう。ここカナ?」
 性格がボケボケなせいでもあるが、今は調理に集中しているのだろう。
 硬直している俺にはまったく気づかず、彼女は前かがみになって足元の戸棚を探り始めた。
 小さくも肉付きの良い尻が、俺の目の前へ無防備にさらけ出される。
 サイズの合わないスクール水着のラインが喰いこみ、さらには白いエプロンが腹部から下に垂れ下がることで、まるで俺が彼女のスカートを乱暴にめくり上げているような気分に錯覚させられていた。
「あれれ~……? ここにもナイですネ?」
 やがて戸棚の奥を探すのを止めて、彼女は振り返りながら立ち上がろうとするが、
「ケーイチ。ソイソーどこ――きゃっ!」
 すぐに何もない場所で盛大に躓いた。
「おっと!」
 硬直していた俺だが、それを見た瞬間に体が動く。
 俺の腕が彼女の体を支えて、そのまま胸板で抱き留める。
「ケーイチ……ありがとう」
 抱き留められた彼女は、俺に全身を預けてきた。
 水着に、エプロン。柔軟性のあるそれらの布地は、あって無いようなものだった。
 彼女の大きな乳房の柔らかさを、ぬくもりを、俺の胸板に感じさせてくれる。
 髪の毛から香る女の子の匂いが、俺の鼻腔を不意に、甘くくすぐる。
「あ……」
 胸の中で俺の顔を見上げた母親は、一瞬で顔を赤らめた。
「ケーイチの、カチカチになってます……」
「い、いやっ! これは若者の朝特有の生理現象であって、別に――」
「……いいデスよ」
「えっ?」
「ケーイチの……お世話をするのも、母親のヤクメですから」
 彼女はおもむろに俺の下腹部に手を伸ばし、そして


 私の実力不足により、あっという間にR-18展開となってしまいました。
 この先はお題であるR-15展開とはかけ離れてしまっているため、ここで終了となりました。筆者としても誠に残念ですが、お許しください。 M
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