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0から始める小説の書き方徹底講座! 作者:N.M.ぺんくらぶ

キャラクター論

22/61

キャラクター描写のコツ

「キャラクターの外見や人物像はイメージできているけれど、上手く文章で表現するのが難しい」
 今回はそんなリクエストにお応えして、人物描写についてお話します。
 なお、この項目はどちらかと言うと上級者向けです。しかも筆者もそれほど得意なわけでもないので、色々と突っ込みどころがあるかもしれません。あくまでご参考までにということで、どうかご了承ください。

・イメージが読者さんに伝わっていないのではないか
・語彙が単純で、表現が稚拙になっているのではないか
・人物の魅力を演出できていないのではないか

 冒頭のお悩みは、おそらくこのような疑問から生まれているのでしょう。
 ですのでこの事を念頭に置いて、キャラクター描写について考えていきたいと思います。
(でもこんな風に読み手の目線を気にすることができた時点で、人物描写の第一関門はクリアです!)


 さていきなり後ろ向き発言ですが、人物描写はどんなに細かくやったところで、100%のまま読者さんに伝わることは決してないでしょう。
 一応、「芸能人の○○のような顔」のような、誰もが想像できる見本のある表現をすることはできます。しかし、それでもそのキャラクターが芸能人の○○さんと全く同じ顔というわけではないはずです。雰囲気は同じだったとしても細かいところで違いはあるはずですし、逆に違いが無ければ、それは創造したキャラクターではなくて誰かと共有しているイメージから借りてきた人物像ということになります。そんなものは生きたキャラじゃないです。へのへのもへじでしかありません。

 そんな理由で、こういう実在の人物を見本にしたキャラクター描写は、おおよそ作者の文章力が足りないものとみなされます。昔のネット小説ではたまに見られた手法だったように思いますが、一般的にはそう見えてしまうものなのです。
 ただ、最近ではライトノベルでもこういった表現が登場し始めているらしいです。でもそうだとしてもそれは文章力のあるプロが「文章力なんてなんぼのもんじゃい! わかりやすければええんや!」というノリであえてやっているだけですので、騙されてはいけません。もしわざとやっているわけではなくこういう書き方しか浮かんでこないのでしたら、もっと違う表現ができるように練習する必要があるでしょう。

 ここで話を戻します。
 作者のイメージをそのまま文章にし、読者さんのイメージまで伝えるのは無理があるという話でした。
 でももしかしたら、それでも諦めずキャラクターの描写を細かくすることで、自分のイメージと読者さんイメージとの食い違い・齟齬を減らすことができるかもしれません。ためしに架空のヒロインを書いてみましょう。


例文1
『彼女の顔立ちは整っていた。鼻は小さめだが目はくっきりとした二重で、瞳は大きくやや黒目がち。まつげも長く、やや上向きにカールしている。その目にかかるかかからないかの長さで、茶色く染めた前髪が横一直線に切り揃えられていた。横髪は胸のあたりまで伸び、後ろ髪は腰の下まであった。唇は化粧もしていないのに、皮膚の内側を流れる若い血液で紅く染まっていた。身長は(以下略)。服装は(以下略)。
 だが性格は最悪で、横暴極まりない。金にがめつい。世界の存続よりも目先の一万円を優先する。』

 すごく……くどいです! 
 味はありますが読みにくく、このままでは人物描写だけで一冊終わってしまう勢い。

 というわけで、ここで発想を逆転させます。自分のイメージをそのまま伝えることができないのであれば、読者さんにイメージの構築をゆだねてしまいましょう。
 その場合、架空のヒロインの描写はこうなります。
 なおイメージの重複を避けるため、前の文章とは別の人物です。想像してみてください。


例文2
『彼女は誰が見ても美人である。しっとりとした黒髪に対比されて明るく輝く、エメラルド色の瞳が印象的だ。
「あなたなんて大嫌い。ううん――世界そのものが嫌い。みんな死ねばいいのに」
 苦々しくそう言い放ったあと、突然背を向ける彼女。
 腰まで伸びた長い髪の毛が、ワンテンポ遅れてその背中にはらりと舞った。』

 自分で言うのもなんですが、例文1よりわかりやすく、外見も内面も魅力的に見えていると思います。
 しかし実はこの文章では、彼女の外見について髪と瞳の色、髪の長さしか具体的に描写していません。なのにどうして、最初のくどい外見描写よりキャラクター性が伝わってくるのでしょう?
 ――バレバレだと思いますが、それは当然のこと。なぜなら、この文章には彼女のセリフと動きがあるからです。そのおかげで読み手の想像力が刺激され、内面と外見の想像が容易になっています。
 それと同時に、動きとセリフがあるということは、ストーリーが進んでいることを意味します。そのため読み手は説明文を読まされているというストレスを感じることなく、ストーリーを追っているついでとして、ごく自然にキャラクターの内面・外見を想像することができるわけです。
 そういうわけで、キャラクターの描写をする際には例文1にあったような説明文の表記に終始するのではなく、あえてストーリーを進めるようにしてみましょう。人物描写はそのついでに、隙間を見つけるように意識して行います。そんな描写を物語終了まで何度も徹底する。その繰り返しが積もり積もって膨大な量となり、読み手の中に印象的なキャラクター像を植え付けることになるのです。

 今度は例文2について、細かい描写技術を見ていきます。
 彼女の口調と発言からはまだ彼女が精神的に幼いことが想像できるので、背の高さや外見年齢を書かなくても「少女」であることがなんとなく想像できるのではないでしょうか? (できてなかったらすみません)
 それから動きを伴う髪の毛の描写で、よりスムーズに髪の長さやその質感がイメージできるようになっています。
 また、このキャラクター描写には語り部の主観をこっそり入れてあります。「印象的だ」という発言がそれです。こうやって語り部や周囲の人物の反応を入れると、それが主観的なものであっても読み手も同じように反応しようとします。すると彼女の瞳はただの緑色ではなく、エメラルド色にぎらぎらと輝き始めるのです。
 「そう言い放ったあと、突然背を向ける彼女」という文章も、まるで彼女が読み手の目の前に立っているかのような錯覚を与えます。読者さんのより深い感情移入と、臨場感のある想像を手助けするための描写です。
 しかし、特に難しい単語や表現は使われていませんよね。
 例文1とは違って、目鼻立ちや唇の描写は全面カットです。その代わり『誰が見ても美人』とだけ表記してありますが、それだけで読者さんの想像の中で、最も美人な顔立ちが選択されることになります。ほとんどを読者さんの想像に任せているため、細かい特徴は読み手によって違うかもしれません。しかしどの読者さんにとっても、『美人』と思える容姿と雰囲気が彼女に備わっていることでしょう。
 これが逆転の発想です。あえて描写しない点と、ヒントとして描写する点。それらを意識しておくことで、読み手に想像の余地を残します。それがかえって読者さんの想像力を刺激して、キャラクターを魅力的に演出することに繋がる、という理屈です。

 まとめ
・キャラクターはストーリーと一緒に描写しよう!
・作者のイメージをそのまま読み手に伝える必要はない!
・簡単な語彙でも深い表現はできる。それは稚拙な表現とは言わない!
・キャラクターの魅力は読者さんに引き出させよう!

 最初から外見をあまり描写しない人も結構います。それは多くの場合、仕草や発言から特徴を与えているので外見は自分で想像してね、という読み手に対するメッセージです。(ライトノベルは絵師さんの引き出す魅力に賭けている部分もあります)
 そういう作品に出会ったら、外見を全力で妄想してみてください。
 きっと良い創作のトレーニングになりますよ! M
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