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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

エピローグ

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エピローグ(2)

「石膏像の位置が変わっていたことから津田沼校長の犯罪に気づき、殺された。まるで今回の事件みたいだな。もっとも、今回の事件の犯人は市川先生だったけど」
「もしも津田沼校長が殺されていなかったら、怪談の裏に隠された真実を知った人間は、津田沼校長の犯罪を暴く者として殺されていただろうね。それこそが怪談を七つ知ると死ぬという噂の正体なんだ」
 海の思考回路は複雑すぎて、普通の人には理解できない。双子だけに陸は海の考えていることがわかるのか、あっけにとられているのは空だけで、陸は口元をほころばせていた。
「そうか、そういうことか」
「なんなの、ふたりして納得しちゃって。どういうことか説明して、海」
「裏口入学の証拠を握った人間を殺し、死体を骨格標本としてそばに置いておく。殺人現場の目撃者も殺し、遺体は地下に隠す。その腐敗臭を防ぐために美術室から石膏を盗みだした。その時に移動させた石膏像が、動く石膏像の怪談の真実だろ。笹木少年の遺体を地下に運んでいく途中で脱げた靴が落ちていたことから、八角の間は異次元につながっているという怪談ができた。実際は地下通路につながっていたわけだが」
「そっか! ひとつひとつは独立した怪談だけど関連づけていくと校長の犯罪にたどりつくのね!」
 海と陸とやっとつながったのが嬉しくて、空は両手を叩いてはしゃいだ。
「待てよ……美術室の動く石膏像、八角の間、開かずの間、生物室の骨格標本……四つしかないぜ」
 指折り数えながら陸が素っ頓狂な声をあげた。
「残りは、血を流すマリア像とトイレの紙さま」
「それでも六つだぜ」
 陸の左手の小指がピンと立っている。
「え? マリア像とトイレの怪談も関係があるの?」
 腰かけていた机の上から思わず空は身を乗り出した。それから、何か知っているだろうかと陸の方をみやった。
 陸は何も知らないと言わんばかりに肩をすくめてみせた。
「六つすべて二十年前の津田沼校長の犯罪と関係がある」
 話が長くなると言わんばかりに、海は空の隣の席についた。
 それならばと陸も手近な席から椅子を引き出し、後ろ向きに腰かけた。
「父さんたちの話によると、二十年前、マリア像は血を流した」
「その話が、血を流すマリア像の怪談になったのよね」
「血、血っていうけど、本当に血だったのか?」
「人間の血だった。山下聖歌の事件で警察はマリア像から二つの異なるDNAを発見した」
「まさか本当に血を流したんじゃ……」
「像が血を流すわけはない」
 海は空にむかってきっぱりと言い、
「血はつけられたものだ。というより、ついてしまったと言った方が正確だ。つけた本人は気づいていなかったんだと思う。気づいていたら、その場でふき取ったはずだろうから」
「それはつまり……」
 空はごくりと唾をのみこんだ。
「マリア像のある礼拝堂は、市川先生の彼女が殺された現場だった。襲われた時の血がマリア像に飛び散ったんだろう。数か月後、生徒に発見されて、マリア像が血を流しているという騒ぎになった」
「DNAは市川先生の彼女のものと一致したのね……」
 海は頷いてみせた。
 家宅捜索により、市川の自宅からは盗まれた骨格標本、宮内理恵の白骨体が発見された。布に包まれ、大切に保管されてあったのだという。
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