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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第7章 解決編

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解決編(7)

「恐るべき犯行です。完全犯罪といってもよかった。誰も、目の前にある骨格標本が殺された人間だとは考えもしないでしょうから。でも気づいた人間がいた――」
「それは誰だ?」
 しばらくの沈黙の後、声を絞り出した安達が恐る恐る尋ねた。
「今回の連続殺人事件の犯人です。津田沼校長の犯罪に気づいた犯人は、おそらく津田沼校長に詰め寄ったと思います。津田沼校長のことだから、否定したか、あるいは秘密を知られて逆上し、犯人を殺そうと考えたかもしれない。しかし何か手違いがあって殺されたのは津田沼校長の方でした」
「津田沼校長への恨みが殺害動機ではないのか?」
「だから、はじめから、松戸先生は犯人ではないと言ってきたじゃないですか!」
 希美の視線が安達を責めたてていた。
「あの日、美術室で何があったのか、僕は知りません。ともかくも、津田沼校長は死んでしまった。ちょうどその時間、美術室の近くを通りかかった生徒がいました。山下さんです。部活を終え、一旦下校した山下さんは再び学園に戻ってきました。そうですよね、小野さん」
「時間ははっきり覚えていませんが、地震の少し前だったかと。女の子の生徒さんが校門の守衛窓口まで来て、忘れ物を取りに行きたいから中に入れてくれと頼んできたんです。それで門を開けてやりました」
 警備の小野さんは小さな目をぱちくりさせた。
「聖歌は、ママに黙って借りた帯留めを茶道室に忘れたので慌てて取りに行ったんだと言っていました」
 空は聖歌から聞いた話を繰り返した。
「でも、犯人を見たとは言っていませんでした。茶道室と美術室は近いから何か見てないかと思って話を聞いたけど、何も見ていないと言っていました。帯留めのことで頭がいっぱいで、急いで学園に戻ってきて、茶道室に駆け込んだ、ずっと走り続けていたから地震にも気づかなかったって」
「そう。山下さんは犯人を見なかった。犯人どころか何も見ていなかった。しかし、犯人の方は、彼女が茶道室から帯留めを持って飛び出していった所を見て、殺人現場を見られたと思い込んでしまった。そしてもうひとつの間違いを犯してしまった。山下さんと同じ茶道部で、彼女によく似た相馬さんに見られたと勘違いして、彼女を殺した――そうですよね、市川先生」
 その瞬間、全員の視線が市川のもとに豪雨のように注がれた。
 絵の具の飛び散った白衣のポケットに両手を入れたまま、市川は困ったような表情で立ち尽くしていた。
「市川先生に相馬七美さんが殺せたはずはないわ。相馬さんが発見された時、市川先生は職員室に入ろうとしているところで、私はちょうど職員用のトイレから出てきたところで、職員室の前で出くわしたんです」
 幸子は勝ち誇ったような笑顔を浮かべてみせた。
「午後の一限目の授業が始まってすぐに相馬さんのご家族から電話があって、すぐに相馬さんが授業を受けているPC教室にむかいました。相馬さんにおうちの方に連絡するようにと伝え、教室に携帯電話を置いてきたからという相馬さんと昇降口付近の階段下でわかれました。私はそのまま職員用トイレにむかいました。市川先生と会ったのは事件が起きた直後、職員室の前でです」
「名簿を忘れてしまってね、職員室に取りに戻るところだったんだ」
 ポケットから右手を出し、市川は苦笑いで胡麻塩頭をかいていた。
「美術室から職員室にむかっていた市川先生が、どうやったら新校舎にいた相馬さんを殺せたのかしら」
 幸子は疑り深い眼差しで海を見つめた。
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