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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第7章 解決編

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解決編(3)

 海と陸は、柱から外れたベンチの背もたれと柱の間に体を入れ、ベンチを押し始めた。ベンチはゆっくりと回転し、柱の足元にはぽっかりと暗い穴が開いていた。
「ここが開かずの間への入り口です」
 富岡が覗き込んだのを皮切りに、各々は恐る恐る穴をのぞきこんだ。冷たくて黴くさい空気が穴の奥から漏れ出してきている。
「学園の地下には地下壕が存在しています。八角の間の柱は地下壕への入り口となっているんです」
「地下壕……何だってそんなものが学園に……」
 そう呟いたきり、富岡は絶句してしまった。
「軍が造成したものだと思います。本土決戦に備えて造られたものだとかで、その存在を知られていない地下壕は日本各地にいくつもあるそうです」
「それにしても、よく八角の間が地下壕への入り口になっているなんてわかったね」
 海の天才ぶりは日頃から知っている市川は驚きを通り越してあきれてさえいた。
「八角の間の怪談がヒントでした」
「八角の間で目撃された兵士の幽霊の正体は、地下壕に出入りする関係者だったってわけなのね!」
 空は思わず無邪気な声をあげた。
「他の柱のベンチにも同じような仕掛けが施されています。八角の間を中心に四方にのびる地下通路があり、その通路を中心として碁盤の目のように細かい通路がいくつもはりめぐらされています。それぞれの通路はかつて部屋であった空間へとつながっています。陸たちが閉じ込められたのは旧ボイラー室であった地下倉庫ではなくて、いくつかある部屋のうちのひとつです。地上からの入り口は閉ざされてしまった地下倉庫へもこの通路を通って行くことができます」
「地下通路とは恐れ入ったね」
 安達は腰を屈め、暗い穴の中へと吸い込まれていった。安達の後を追って陸が勢いよく穴の中に飛び込み、その後に、海、市川、富岡と続き、まるでハーメルンの笛吹きに導かれるネズミのようにして希美、佳苗、奈穂や玲子たちが次々と穴の奥へと入っていった。八角の間にひとり取り残されてはたまらないと、空も慌てて全員の後を追った。
 腰を折って入り口をくぐると、たちまちのうちに闇にのみこまれた。入り口から差し込んでくる光がわずかに先を行く玲子の背中を照らしていたが、階段を降り切ってしまうと前を歩いているはずの人々の姿はまるで見えなくなってしまった。遅れをとってはまずいと、空は足音を頼りに彼らの背中を追いかけた。
 暗闇は時間の感覚を狂わせる。一時間でも走っていた気でようやく地下通路に漏れ出している明かりを目にした時、空は思わず安堵のため息を漏らした。
 開け放たれた鉄の扉のむこうに空間が広がっていた。先に来ていた先生たちは明かりの下に夏の夜の蛾のように集まって窮屈そうにしていた。
 閉じ込められた時の息苦しさを思い出し、空は中へ入るのをためらった。しかし、一人暗闇に残されるのも嫌だったので、不安を振り切って足を踏み入れた。
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