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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第7章 解決編

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解決編(2)

「ここ、八角の間では不思議な出来事が語られています。創立者の幽霊が徘徊するだの、日本兵が周回するだの、異次元につながっているだの……。八角形の広間という珍しさも手伝っているのでしょう。二十年前、中等部一年の笹木弘明くんが行方不明になった時も、ここ八角の間に彼の上履きが片方落ちていたことから、異次元に連れていかれたのだという噂がたちました」
「その事件なら覚えている。だが、殺人事件ではなくて、ただ行方不明になったという話だったはずだが」
 富岡が口をはさんだ。二十年前、学園にいたのはこの場では富岡と幸子だけだ。
「笹木弘明くんは行方不明になったのではありません。殺されたのです」
「どうしてそんなにはっきりと殺されたなんて言い切れるのかね。死体でも見つかったのかね?」
 富岡は海に食ってかかった。
「いいえ、死体は見つかっていません。でも、どこにあるのかはわかっています」
「死体を発見していないのに、殺人だと断定するのかね? それはちょっと――」
「見当がついているというのなら、その場所を教えてもらおうか」
 富岡を遮って安達が身を乗り出してきた。海は大きく息を吸い込み、
「笹木弘明くんの遺体は開かずの間にあります」
「でも、開かずの間……地下倉庫にはそれらしいものは何もなかったわ」
 同意を求めて空は陸を振り返った。
 その空と陸を、他の全員が振り返った。
「君は地下倉庫に入ったのかね? 確か、入り口は閉じてしまって誰も入れないはずなのだが?」
 富岡が怪訝な表情で尋ねた。
「俺たち、もう少しで開かずの間――地下倉庫に閉じ込められて殺されるところだったんです」
 目を見開いたり、顎が外れたかのように口を大きく開けたりと、さまざまな驚愕の表情が浮かび上がった。
「待ちたまえ。地下倉庫、かつてのボイラー室への入り口は壁に埋め込んでしまったんだぞ。その地下倉庫にどうやって閉じ込められて、脱出できたっていうんだね?」
 両腕を組み、富岡は右足の膝から下をしきりと揺らしていた。
「別に入り口があるんです」
 八角の間に全部で四つある柱のうち、中央階段の左脇に佇む柱にむかって海は歩いていった。
 柱の中央部分は飾り棚になっていて、往時の学園の姿をとらえた写真やトロフィーなどが飾られている。柱の足元には作り付けのベンチがある。時代を経て、漆を塗りこんだように艶めいて深い飴色になった木製のベンチだ。
 ベンチに近づいていった海は、一メートルはあろうかというベンチの背もたれに手をかけ、手前に引き寄せようとしていた。どうやら、ベンチを柱から引きはがそうとしているらしい。
「八角の間には幽霊が出るという怪談があります。行方不明になっている中等部一年の中山敦くんも幽霊を見たと言っていました。幽霊など存在しませんから、中山くんが見たのは人間だと僕は考えています。突然姿を消したものだから幽霊だと思いこんだのでしょう」
「でも実際には、本当に人が姿を消していたってわけだ」
 陸は海と一緒になってベンチを引きはがそうとし始めた。この頃になると海のしようとしていることが明らかになってきて、誰もがその瞬間を今か今かと待ちわびていた。
「戦時中、学園は日本軍に接収されていました。そのせいで、日本軍の兵士の霊が出るという怪談が出来たと考えられますが、この怪談のもとは、八角の間で消える軍人たちの目撃談ではないかと考えてみたんです」
 カチッと何かが外れる音がした。微かな音だったが、全員が息を殺して海と陸を見守っていたものだから雷鳴のように八角の間に響きわたった。
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