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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第6章 怪談の呪い

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怪談の呪い(12)

 井戸から救出された空と陸は、海が呼んだ救急車で病院へと連れていかれた。
 井戸に落ちたということになっている空と陸は、レントゲンだのCTだのといった検査を受けさせられた。井戸に落ちたのは嘘だとしても、頭を殴られたことに変わりなかった二人は、頭を強く打っているという理由で大事を取って入院させられることになった。
 着替えなどを取りに両親たちが家に戻ったのと入れ替わるようにして、安達が病室を訪れた。救急車と同時に海は警察にも連絡したからで、安達は井戸に落ちた事情を知りたかった。
「何があったのか、詳しく話してもらおうか」
 安達はすこぶる機嫌が悪かった。七美が襲われた事件が未解決なうえに、再度学園内で生徒が怪我をするという事件が起きてしまった。おまけに、津田沼校長殺人事件の犯人と思われる松戸はいまだに逃走中ときたら、苛立ちを隠せなくても無理はない。
 空と陸は顔を見合わ、海を窺った。二人とも、襲われて地下倉庫に閉じ込められたことは伏せておくようにと海から言い含められ、事実、教師たちには真実を話していなかった。
「安達刑事、実は……」
 口火を切ったのは海だった。
「古井戸に落ちてしまった――事故だったと空と陸には言うように僕から言いましたけど、これは事故ではなくて、殺人未遂事件なんです」
「海の言う通りです。俺たち、頭を殴られて、地下倉庫に閉じ込められて殺されるところだったんです」
 堰を切ったように陸は語り始めた。
 陸が話をしている間中、海の視線はベッドに横たわる空にむけられていた。
「まあ、君たちの話を聞こうか」
 学園には、“開かずの部屋”と呼ばれる怪談のあること、実在しないと思われていたその部屋がどうやら地下倉庫であるらしいとわかったこと、怪談に見立てた殺人が起きていることから、もしかしたら何事かがその開かずの部屋で起きていやしないかと調べまわっていたところで襲われたことを、陸は安達に話して聞かせた。
「井戸に落ちたというのは嘘なんだな」
「はい。海が助けに来てくれて、地下倉庫を脱出して井戸まで歩いていったんです」
「なあ、それだ。地下倉庫に閉じ込められた。それを双子の兄貴が助けてくれたってんだろう? 君は、どうやって地下倉庫に行って、どうやってまた地上に出たんだ?」
 安達は海に向き直った。
 空と陸もまた、海をみやった。二人もまた、安達と同じ疑問をずっと抱いていた。海はどうやって地下倉庫までやってきたのか、古井戸の底に二人を残した海だけは、どこか別の場所から地上に出て助けを呼んだ。一体、どうやって地上に出たというのか。
「地下倉庫と古井戸とは地下道でつながっているんです。その地下道は別の場所で地上とつながっています。僕はそこから出入りしたんです。おそらく、二人を襲った犯人も、同じ場所から地下へ出入りしたはずです」
「君はどうやってその地下道の存在を知ったのかね?」
「今はまだ言えません。地下道の存在を、まだ誰にも知られて欲しくないんです。それで、ふたりには井戸に落ちた嘘をついてもらいました。井戸の底から助けを求めたところを、僕が気づいたという筋書きに協力してもらったんです」
「ふーん……。でも、犯人は君たちが地下道の存在を知っていると気づいただろうな」
「そうですね。次は何が何でも僕たちを殺そうとするでしょうね」
「さて、そこだ。何で君たちは襲われなければならないんだね?」
「最初に言ったように、これは事故ではないんです。今回のことだけじゃありません。この一か月の間に学園で起きた事件、事故はすべて殺人事件です」
 海が答えた。
「津田沼校長の事件、女子高生が襲われた事件と生物室で発見された男子生徒の事件については警察も殺人事件として捜査しているが、あとは、自殺と家出で、事件性はないだろう」
「学園には全部で六つの怪談が伝わっています。美術室の動く石膏像、トイレの紙さま、血を流すマリア像、八角の間の幽霊、骨格標本、そして、開かずの部屋。津田沼校長は、美術室の動く石膏像の怪談に見立てて、事故に見せかけて殺されました。相馬さんはトイレで、山下さんは自殺に見せかけて殺されました。中山くんは、幽霊が出るという八角の間に靴が片方だけ残され、まるで幽霊に連れていかれたかのように見せかけられました。おそらく、殺されているでしょう。生物室で死体を晒された寺内は、骨格標本の怪談に見立てられています。そして今回の開かずの部屋、つまり地下倉庫での事件。これらはすべて同一人物による犯行です」
「……津田沼校長を殺した犯人が、と言ったな。ということは、やはり松戸が犯人か」
「いいえ、松戸先生は多分殺されています、真犯人によって」
 安達は勢いよく立ち上がった。あまりの勢いにパイプ椅子はけたたましい音を立ててその場に転がった。
「君は――」
 そう言ったきり、安達は次の言葉がなかった。
 安達はジャケットのポケットに両手を突っ込んだまま、病室内を歩きまわった。
「君は、事件について、一体どれだけのことを知っているんだ?」
 今にも噛みつきそうな勢いで、安達は海に迫った。
「すべてです。犯人が誰かも、動機についても。安達刑事、マリア像には二つの異なる血痕があったのじゃありませんか?」
「どうしてそれを?! 現場を荒らしたっていうんで鑑識はカンカンだったし、こっちはこっちで鑑識がへまをやったんだと思っていたが」
「血痕は二十年前についたものです。二十年前、学園では奇妙な事件が相次ぎました」
「海、二十年前の事件が今回の連続殺人と関係があるっていうのか?」
 陸は思わず身を乗り出していた。
「二十年前の事件がなかったら、今回の事件はなかったかもしれない、とだけしか言えない」
「君は、今回の事件の犯人が誰かを知っているんだな」
 陸を押しやるようにして、安達が海に迫った。
「はい。それと七つ目の怪談が何か、七つ知ると死ぬという呪いの謎についても――」
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