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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第6章 怪談の呪い

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怪談の呪い(10)

 空はすぐには陸の言うことが理解できなかった。
「いいか、ボイラー室だった地下倉庫の入り口は閉じられてしまった。唯一、煙突からなら地下倉庫へ入ることができる」
「……煙突から地下倉庫へ入るのは無理だと思う」
「そうだろ? なのに俺たちは今、その地下倉庫にいる。犯人はどうやって俺たちをここまで運んできたんだ?」
 煙突から投げ入れられたのではないと空にも理解はできた。
「どこかに別に入り口があるのね!」
「そうさ。その入り口を探すんだ!」
 空と陸とは、暗闇の中、ケータイの心もとない明かりを頼りに辺りを調べ始めた。
 元はボイラー室、かつて地下倉庫として使われていたというその場所はがらんとしていた。設備を身ぐるみはがされたとあって内臓を取り除かれた剥製の内側にいるかのような薄気味悪さがある。周囲の壁はすべてコンクリートで覆われていた。
「おい、空、ちょっとこっち来てみろよ」
 興奮した声をあげる陸のもとに、空はむかった。
「ドアだ」
 暗闇に慣れた目に鉄製のドアが飛び込んできた。
 陸は震える手を伸ばし、ドアノブに手をかけた。しかし、鍵がかかっているらしく、ドアは開かなかった。それでも、陸は執拗にドアノブを回し続けた。
 空は固唾をのんで陸を見守り続けた。どうか、鍵が壊れますようにと祈るような気持ちで。
「空、ちょっと離れてて」
「何するの?」
「ドアを壊す」
「壊すって、鉄の扉っぽいけど?」
「いいから!」
 空がドアの近くを離れるなり、陸はドアに体当たりをし始めた。
 陸が力いっぱいにドアに体をぶつけるたび、鈍い音が地下倉庫いっぱいに広がった。しかし、いくら陸が体をぶつけようと、鉄の扉はびくともしなかった。
「もういいって、陸……美術室のドアは木だったけど、ここの扉は鉄で出来てるみたいなんだから……」
「くそっ!」
 悔し紛れに陸は力いっぱいドアを蹴飛ばした。それでも嫌味なくらい、ドアはびくりともしなかった。
 苛立ちをぶつけるように、陸はドアにむかって叫んだ。
 その時だった。
 扉を乱暴に叩く音がした。
 空ははじめ、陸が蹴り上げた扉が震動で鳴っているのだと思った。しかし、執拗に鳴るその音は、扉の外から聞こえてくるのだ。
「静かに!」
 空と陸とは、息をひそめて扉を見つめた。
 扉は小刻みに規則正しいリズムで震動し続けていた。
 扉を叩く音に紛れて、波長の異なる物音が聞こえてくる。柔らかなその物音は人の声だった。扉と壁に阻まれてはっきりとはしないが、空と陸の名前を読んでいるように聞こえた。誰かが助けに来ないかと望む気持ちが聞かせた幻聴だろうか。
 しかし、神経を集中させ、耳をすませていると、確かに、「陸、空」と、ふたりにむかって呼びかけている。
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