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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第6章 怪談の呪い

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怪談の呪い(9)

 後を追ってたどり着いたのは北東側の旧校舎の裏手だった。正面からみると旧校舎の屋根の上の左隅にはえているように見える煙突が、裏に回ると真っ直ぐ地面から伸びているとはっきりとわかる。
「ここが入り口さ」
 陸はいまにも雨粒の落ちてきそうな空を仰いだ。
「入り口?」
 つられて空も天を仰いだ。
 地下倉庫への入り口が天空にあるはずがない。あるのは天を衝く煙突ばかりだ。煙突の先端には角帽のような雨避けが被せられてあり、煙突と雨避けの間に蒸気を逃すわずかな隙間があるばかりだ。
「ねえ、まさか……」
 空は隣で天を仰ぐ陸を見やった。
「入り口って、蒸気が出てくるあの隙間のこと?」
「あたり!」
 よじ登っていくつもりでいるのか、陸は煙突を下から上まで眺めまわしている。
 煙突の高さは十数メートルほど、表面はつるりとして、手をかけるような場所もない。肝心の“入り口”も、人が入れるほどの大きさがあるか怪しいものだ。
「ずっと不思議だったんだ。なんで煙突なんかあんだろって。ここはちょうど食堂の裏手だろ? 食堂には火の気はまったくない。でも、ボイラー室があったってのなら、煙突があって当然なんだ。蒸気を逃がすための煙突がな」
「陸、まさか煙突から地下へ降りていくつもり?」
「サンタクロースはそうやって家の中に入るだろ? ああ、そうか。のぼるのはいいとしても、煙突の中を降りていくのが大変か。縄梯子みたいなんが必要か」
「そういうことじゃなくてね……」
「体育倉庫とかにありそうじゃね? 俺、ちょっと行って探してくるわ」
 そう言うなり、陸は体育館目がけて走り出していた。
 すぐに戻ってくるだろうと思われた陸はしかし、なかなか戻ってこなかった。
 縄梯子だか別の何かを探して学園中を走り回っているんだろうかと呆れながら、ケータイを取り出した空は、後頭部に強い刺激を覚え、ケータイを地面に落としてしまった。
 そこから先の記憶はない。後頭部に強い痛みを覚えて意識を取り戻した空は辺りの様子を窺った。数時間ほど意識を失っていたらしく、周囲は真っ暗な闇に包まれていた。しかし、日が暮れたにしては、闇が深すぎた。ひんやりとした空気が座っている地面の下から立ち上ってくる。かび臭い空気だった。
「気がついたか?」
 若い男の声に、空は身を固くした。陸だとわかって、空はうっすら涙を浮かべた。
「ここはどこなの?」
「ケータイが通じないから、たぶん、地下倉庫。俺たち、どうやら開かずの部屋に閉じ込められたらしいぜ」
 陸は意外にも落ち着いていた。空の手前、取り乱すわけにはいかないとかっこつけていただけかもしれないが、陸が一緒にいるというだけで空も気分を落ち着かせることができた。
 陸によると、体育館へむかった先で、何者かに背後から襲われたらしい。状況は空と同じだから、同一人物がふたりを襲い、地下に閉じ込めたのだと考えられた。
「私たちを襲ったのは、七美たちを殺した犯人なのね……」
「だろうな。開かずの部屋の怪談に見立てて俺たちを殺すつもりなんだろ」
 空は思わず陸に身を寄せ、その手を強く握りしめた。
「陸……どうしよう」
「落ち着け、空」
 そういう陸の声がうわずっていた。
「俺らがいなくなったってわかったら、海がきっと捜しにくる。海なら、俺らがどこにいるかわかるはずだ。海なら……」
 空と陸はひんやりとした地下室の床に腰を下ろし、互いに身を寄せあった。
「まさか、私たちが開かずの間の怪談に見立てて殺されるだなんて……」
「海が助けにくるって」
 陸はきつく空の肩を抱いた。
「私たち、きっと犯人につながる何かを知ってしまったんだわ」
「何かって何だよ」
「七美が襲われた事件で松戸先生にはアリバイがあったって知ってるのは、私たちだけよ。そのせいで、松戸先生は犯人じゃないんじゃないかって考えるようになったんだから」
「松戸のアリバイを証明できるのは、一緒にいたっていう白石先生だけか。二人は付き合ってるからなあ。なあ、こうは考えられないか? 松戸と白石先生は共謀して校長を殺した。その後も、校長殺害事件の目撃者や相馬の事件での目撃者を殺した。ここで、問題が発生した。松戸が警察に目をつけられた。白石先生は、松戸ひとりに罪をなすりつけようとして、松戸を殺し、松戸のアリバイを知っている俺らも殺すことにした」
 陸はすくっと立ち上がったかと思うと、地下室を歩き周り始めた。
「何してるの?」
「ここから出るんだ」
「出るって……。私たち、閉じ込められたのにどうやって出るっていうの?」
「閉じ込められたからさ。出られるんだ」
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