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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第6章 怪談の呪い

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怪談の呪い(5)

「寺内くんが最近借りた本を知りたいの?」
「はい。面白い本を見つけたから、次読んでみろって言われてたんですけど、ああいうことになってしまって。彼、何の本を読んでいたかは言わなかったから……」
 篤史とさも仲がよかったかのようにふるまう海の演技力に、司書の中年女性はすっかりだまされ、気前よく本のタイトルを調べてくれた。
「これがリストよ。でも、まだ返却されていないわ。……まあ、返却できなかったってことなんだけど……」
 司書はプリントアウトした貸し出しリストを海に渡した。
 本は全部で四冊。法医学に関する本が二冊、戦後日本関連のものが一冊、後の一冊は学園の歴史を記した本だった。
 最後に会った時、篤史は分厚い本を何冊も抱えていた。五冊以上はあったはずなのにと空は不思議に思いながら、図書館を出ていこうとした時だった。
「卒業アルバムは、別にいいわよね?」
 司書が茶目っ気たっぷりに片目をつぶってみせた。
「卒業アルバム、ですか?」
 海が聞き返すと、司書は
「寺内くん、卒業アルバムを何冊か借りたの。貸出図書ではないから、本当は図書館から持ち出せないんだけど、マスメディア部だから、特別に許可したの。アルバムの方はその日のうちに返してくれたわ」
「いつごろのアルバムだったか、わかりますか?」
 空は身を乗り出して司書に尋ねた。
「さあ……。古いものだったと思うけど。取りあえず、昭和でなかったことだけは確かよ」
 どうやら昭和生まれらしい司書の女性は苦笑いを浮かべてみせた。

 古い卒業アルバムと聞いて、空と海とが真っ先に手に取ったのは二十年前のアルバムだった。
「パパもママも若い!」
 両親の若かりし頃の写真を目にして、空ははしゃいだ。制服姿の母は今の自分に瓜二つで、ほんの少し不気味でもあった。海たちの父親、真澄の姿も当然ながらアルバムに刻まれていた。
「御藏さんは今とあまり変わってないね」
「老け顔なんだろう」
 真澄が若さを保っているという風には海は考えないようだった。
 アルバムには、文化祭や体育祭、部活動の様子をとらえた写真がちりばめられていた。教職員の写真には、死んだ津田沼校長の姿があった。当時は校長ではなく、理科主任という肩書きだった。富岡校長は数学教師と紹介があった。二人とも二十年の時の変化を感じさせない姿だった。ある程度の年齢までいくと顔はそうそう変わるものではなくなるらしい。
 幸子の姿もあった。短い髪だが今よりも張りがあり、二十代から四十代への年齢の変化ははっきり見てとれた。幸子は同じ年頃の女性と一緒の写真に収まっていた。夏休み前に行われる球技大会での一枚だった。
「失踪した宮内先生って、この人じゃないかな」
 黒髪の美しい楚々とした美人だが、写真の女性は日本人ではないかのような雰囲気を漂わせていた。彫が深いわけでもない希美もそうで、どうやら外国語を日常的に口にしていると顔の造りがその言語を母国語とする人間の顔立ちに近くなっていくものらしい。希美は英語を教えていて、失踪した教師の担当教科は英語だった。その女性が写っている写真はその一枚きりだった。
「男子生徒が憧れるわけね……」
 ページの隅から隅まで、空と海は目を皿のようにしてアルバムを調べ尽くした。理科部の部活写真で骨格標本を発見した時は、興奮しきりで額をつけるようにして写真に見入った。しかし、さがしているものが何かもわからない身にとっては、何も見つけられなかった。
 平成に入ってからの卒業アルバムはすべて見尽くしたが、結局、篤史が何を発見したのかはわからずじまいだった。すべてのアルバムとはいうものの、十九年前のものだけが欠けていた。
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