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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第6章 怪談の呪い

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怪談の呪い(2)

 部活の朝練はおろか、その日の授業も中止になり、生徒たちはただちに下校するようにとの指示が出された。休校になったと電車に乗ったところで知った空は次の駅で降り、御藏家へむかった。
 陸は遅刻する気だったらしく、パジャマ姿に寝グセのついた髪で空を迎えた。海はその日は朝早くに登校したらしく、真澄が慌てて迎えに行ったところだった。
 休校になった連絡では詳しい理由は知らされなかったが、またしても事件が発生したらしいとは簡単に想像できた。
「今度もまた、怪談に絡んだ事件なのかな」
「たぶんな」
 陸は欠伸をかみ殺した。二度寝でもするつもりでいるのか、いまだにパジャマ姿のままだ。
「残っている怪談は、開かずの間と動く骨格標本の二つだから、そのどちらかだな」
「ねえ、陸。思うんだけど、開かずの間に見立てた殺人事件はもう起きているんじゃないかな」
「んあ?」
 伸びをした姿勢でとまった陸の目が見開いていた。
「美術室の動く石膏像、トイレの紙さま、血を流すマリア像、八角の間……犠牲者は津田沼校長、相馬、山下、中山って子の四人。他に死んだ人間はいないぜ?」
 自分のマグカップ、空のカップ、真澄ののみさしのカップと、陸は視界に入ったものを手元に引き寄せ、並べてみせた。四つ目は真澄の食べかけのトーストが乗った皿だ。
「松戸先生!」
 空はジャムの瓶を滑らせた。
「松戸はだって、警察に疑われて失踪中だぜ?」
「ってことになっているけど、実は殺されていて、死体は開かずの間に隠されているんじゃないかな」
「なんでそう思うんだ?」
「実はね……」
 玄関で物音がした。海が帰ってきたのだ。
 だが、居間にいる空には目もくれず、海は廊下をかけてまっすぐにバスルームへとむかった。
 真澄が後からゆっくりとやってきた頃には、シャワーを使う音が聞こえていた。
「何があったのさ?」
「さあな。迎えにいったはいいが、とにかく一言も口をきいてくれないから、さっぱりわからん。わかっているのは、学園で死体が発見されたってことだけだ」
 真澄は陸にむかって肩をすくめてみせた。
 死体が発見されたと聞き、空と陸とは顔を見合わせた。
「何があったの? 死体が発見されたってことだけど」
 Tシャツに着替えた濡れ髪の海にむかって空は穏やかな調子で尋ねた。そうでもしなければ、今にも海が爆発しそうにみえたからだった。
「生物室だ。骨格標本のかわりに死体が吊るされていた……」
 そう言うなり、海は膝の間に頭を垂れた。
「図書室で調べ物をしたかったから、朝早くから学園に行ったんだ。旧校舎に入ったところで、異臭にはすぐに気づいた。他の生徒も気づいていて、生物室の前でちょっとした騒ぎになっていた。ネズミだか何かが死んでいるようなにおいだと言われてたけど、そんな生易しいものじゃなかった。腐敗臭というよりは、崩壊といった感じの不自然な形の……。浅見さんが来て、生物室のドアを開けたとたん、それは廊下にいた生徒全員に殴りかかってきた。臭いとかじゃない、痛いんだ。まるで横っ面を殴られたみたいに。……今も呼吸しているだけで、あの臭いを嗅いでいるような錯覚に陥る。あの死臭が細胞にまでしみ込んでいる気がする。いくらシャワーで洗い流しても、取れないんだ……」
 話をしている間中、海は両腕をしきりにさすっていた。まるで死臭をこそげ落とそうとしているかのようだった。
「海は、死体を見たのね?」
 膝の間に沈んだ頭がかすかに上下した。
「寺内だったそうだ。週末から行方不明になっていて、家族から捜索願いが出されていたらしい」
 かきむしらんかのように強く髪の毛をつかんだ両手に、海の恐怖と混乱、怒り、悲しみ、様々な感情がこめられていた。
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