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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第5章 消える人々

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消える人々(10)

 希美は首を折ってうなずいた。その姿はまるでしなだれた白バラのようだった。
「私たち……私と松戸先生とは確かに自習室にいました。あの日、相馬さんが襲われたその時です。彼の奥さんが浮気を疑っていて、残業という言い訳が使えなくなって私たちは学園の外では会えなくなっていました。学園で毎日のように顔を会わせているといってもそれは本当に顔をあわせているだけで、私は不満だった。だから、教育実習生がいる間、授業を彼らに任せて私たちはこっそり会っていました。自習室なら誰もいなくて都合がよかった。あの日も、私たちは自習室で落ち合った。悲鳴が聞こえてきて何事かが起こったのはわかったわ。それで慌てて教室に戻ったの。その時、ピアスをなくしたと気づいたけど、取りには戻れなかった……」
 空はピアスを希美に渡した。
 ピアスは掌の上で転がり、希美はぎゅっとその手を握りしめた。
「自習室にいたのなら、どうして職員室にいたなんて嘘をついたの?」
 佳苗に尋ねられ、観念しきったとばかりに希美は深いため息を漏らした。
「松戸先生に、職員室にいたって言えって言われたから。授業をほったらかして密会していたなんて、私もとても言えなかった……」
「不倫を隠そうとして、嘘のアリバイを言うなんて。警察に疑われるとは思わなかったんですか?」
「自分たちは事件とは無関係だから、嘘をついても問題ないって松戸先生が……。私たちのアリバイが証明されなくても、いずれ犯人は逮捕される。警察に余計なことを言う必要はないって。不倫のことが警察から奥さんの耳に入るほうが怖かったみたい」
「警察から疑われることよりも?」
 希美は苦笑いを浮かべながら、大きなため息をついた。
「津田沼校長が殺された日も、もしかして、松戸先生と会っていましたか?」
 駐車場を慌てて出て行く松戸の車を思い描きながら、空は尋ねた。
「ええ。でも、残業で約束の時間に少し遅れると連絡があって。でも、結局は時間通りに来てくれたけど」
 松戸のアリバイがはっきりしたとはいえ、裏口入学に加担していたこと、不倫関係を解消するように迫られたことなどから、松戸には津田沼校長殺害の強い動機があり、疑惑がすっかり晴れたわけではなかった。
「白石先生は、松戸先生が校長を殺したと思いますか?」
 空は、佳苗にしたのと同じような質問を、よりダイレクトに希美にぶつけた。
 返事はすぐにあった。細い声だけれど力強い調子で希美は「いいえ」と言った。
「津田沼校長を殺した犯人だからこそ、疑われているのを知って逃げたんだろうって警察は言っているけれど、私は信じていないの。行方不明になる前の日、私たちは旅行の話をしていた。少しまとまったお金が入ったから、それで海外旅行にでも行こうって。それなのに、自分からいなくなるなんて、考えられないの……」
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