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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第5章 消える人々

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消える人々(9)

 カーテンの仕切りの隙間からそっと様子をうかがうと、希美は佳苗に支えられて、ベッドの上に上半身を起こしていた。
「起きて大丈夫ですか?」
 空はベッドから起きて、希美のベッドの足元に立った。
「何があったのかしら。私、確か、授業をしていたと思うんだけど」
 まだ頭がぼにゃりしているらしい希美にむかって、佳苗が事情を説明した。
「空ちゃんがとっさに支えてくれなかったら、頭をぶつけるかして怪我していたかもしれないのよ」
「そうなの。星野さん、どうもありがとう。迷惑かけてしまったみたいで、ごめんなさいね」
 無理やりに作ってみせた希美の笑顔が美人なだけにかえって痛々しく感じられた。
「白石先生。これ、白石先生のピアスですよね」
 空はポケットをまさぐり、ピアスを取り出してみせた。
「倒れた時にきっと外れたのね」
 空の掌に転がるピアスを取ろうと望が指先をのばしてきたところで、空は手を閉じた。
 希美と佳苗とは怪訝な表情で空を見つめていた。
「倒れた時に外れたんじゃないんです。白石先生のピアスはちゃんと両方そろってます。これは別の時に別の場所で外れたピアスです。違いますか、白石先生」
 希美の表情がこわばった。ただでさえ、白い顔色がさらに色を失って死人のようだった。
「無くした場所も状況もわかっているのに、倒れた時に外れたなんて嘘をついたのは、その状況が人には言えないものだったから、じゃないんですか」
「……」
 空はなおも畳かけた。
「私は、このピアスを自習室で見つけました。初めは誰かの落とし物だと思って、届けるつもりでポケットに入れておいてすっかり忘れていたんです。でも、生徒の落とし物ではないと気づいたんです。校則でピアスは禁止されているから、生徒のものじゃない。それなら誰か女性の先生の物です。野沢先生も白石先生もピアスの穴を開けていますよね。それで、私、ちょっと賭けに出たんです。『白石先生のピアスですか』ってきくことにしました。違ったら、違うって言われるだけだし、野沢先生の物なら野沢先生が私のだって言うだろうと思って。思った通り、ピアスは白石先生のものでした。でも、両耳にピアスがあるのをわかってて、どうして倒れた時に外れたなんて嘘を言ったんだろうと思いました。先生は、外れたかどうか耳を触って確かめもしなかった。ピアスを見てすぐにもうずっと以前になくしたピアスだとわかったからです。そして、なくしたということもわかっていました。なくしただろう場所にも見当がついていました。でもその場所は言えない。だから、倒れた時に外れたなんて嘘を咄嗟についたんです」
「待ってちょうだい、空ちゃん。空ちゃんはさっき、ピアスは自習室で見つけたと言ったわよね。別に白石先生が自習室に出入りしててピアスをなくしたからといってやましいことは何もないと思うわ」
 佳苗は希美をかばって憤慨していた。
「野沢先生の言う通りです。先生方だって自習室に出入りします。やましいことはないはずです。なら、どうして自習室でなくしたと素直に言わなかったのか。それは自習室にいたことを知られたくなかったから。いてはいけない人と一緒にいたから――そうですよね、白石先生」
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