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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第5章 消える人々

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消える人々(4)

「どう思う?」
 空は海の横顔を覗き込んだ。
 登校するなり、空は陸を連れて海のクラスへとかけこんだ。そのまま、海を引きずるように連れて屋上へとあがっていった。朝の礼拝はとっくに始まっているだろう。しかし、それどころではなかった。
 津田沼校長が美術室で亡くなった事件を警察が秘かに捜査していたこと、そして津田沼校長殺害の容疑で松戸が指名手配を受けたこと、殺害動機はどうやら学園への裏口入学をめぐってであるらしいことなどが、その日の朝刊には書かれてあった。
 裏口入学の噂はかねてから囁かれていた。幼稚舎から大学までエスカレータ式に進学できる聖パトリック学園に入学するチャンスは、幼稚舎と中等部の入試の二回しかない。幼稚舎の募集は学園にゆかりのある関係者に限られていて、一般に広く門戸が開放されるのは中等部の入試時だけだった。この入試をめぐって、入試問題漏えい、金銭の受け渡しが噂されていた。二、三年前には週刊誌沙汰になり、一時期、マスコミ関係者が学園の外をうろついていた。しかし、噂の域を出ず、結局、疑惑は煙のように立ち消えてしまった。
 松戸の津田沼校長殺害動機は金の配分をめぐる対立という話だった。二人は裏口入学に関わっており、受け取った金の配分に不満を抱いた松戸が事故に見せかけて津田沼校長を殺害したと警察ではみていた。警察発表を伝えた新聞記事では、津田沼校長が殺害されたと思われる時間帯の午後八時少し前に、学園の駐車場から慌てて出て行く松戸の車が防犯カメラによって録画されているとのことだった。
「警備員の小野さんは、あの日は先生方は誰も残っていなかったって言ってたけど……」
 空は小野との会話を思い出していた。残業していなかったはずの松戸が校舎内にいたからこそ警察は犯人として疑っているのだろう。
「津田沼校長を殺したのが松戸先生だとしたら、七美や聖歌を殺したのも松戸先生ってことになるけど……」
「犯人ではないとは言い切れないが、犯人とするには疑問のある点がいくつかある」
 屋上のフェンス越しに、海は人気のなくなったグランドを見つめていた。
「犯行直後の時間帯に松戸の車が駐車場を出て行ったらしいじゃんか」
「松戸先生の車が、だろう? 松戸先生が運転していたとは限らない」
 海の指摘に陸は黙り込んでしまった。
「だけど、運転していたのは多分、松戸先生だと思う」
「なんだよ! 松戸が運転していたとは限らないって海が自分でいったくせに!」
 陸は海につっかかった。
「言った。でも、松戸先生以外の人間が運転していた可能性は低いだろう」
「駐車場を慌てて出て行ったというのは、津田沼校長を殺して動揺していたってこと?」
 空は身を乗り出して尋ねた。
「約束の時間か何かに遅れそうで急いでたってこともありえる」
「でも、十分怪しいじゃねえか。事件のあったその時間に松戸は校舎内にいたってことだぜ」
「事件のあった時間に現場近くにいただけで犯人扱いされたらたまらないね。現に、山下さんは美術室近くの茶道室にいたそうじゃないか。忘れ物を取りに急いで学園に戻ったってことだけど、何も知らない人が見たら、津田沼校長を殺して慌てて逃げるところだった、に見えないこともない」
「確かに……」
 その様子を想像してみて、空は絶句した。
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