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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第4章 嘆きのマリア

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嘆きのマリア(7)

「職員室にいたなんて嘘だな」
 松戸の去っていく背中にむかって、陸は呟いた。
 市川と別れ、三人はマリアの祠へと向かっていった。
「白石先生がひどく怖がっていたというのは本当だろう。ただ、“職員室で”でないだけで」
「海は、松戸と白石が一緒にいたのは本当だと思っているのか?」
「たぶんね。職員室ではないにしろ、叫び声の聞こえた範囲、トイレにごく近い場所にいたんだと思う。校内放送がかかるのと同時ぐらいに教室に戻ってきたんだろう? つまり、校内放送で何が起こったかを知る前にはすでに何かしらの事情を知っていて、慌てて教室に戻ってきたってわけだ」
「噂は本当だったんだわ」
 空が呟くと、海は不思議そうな顔をした。陸は“噂”の内容を知っていたようで、したり顔でいる。
「松戸先生と白石先生が付き合っているんじゃないかって噂」
 祠の入り口の前で空たちは足をとめた。生垣の草いきれにまじり、人工的な甘く誘うような香りと、清潔だが精悍な香りとが漂っている。精悍な香りは松戸がまとっていたものと同じだった。
「学園の外で会っていたのを見た生徒がいるの」
「外でだって会うだろうに」
「週末に二人きりで? それに松戸先生は結婚しているのよ」
 ふうんと荒い息のようにもとれる返事を残して、海は腰をかがめて、祠の中へと入っていった。ゴシップにはあまり関心がないらしい。
 祠の奥へと進んでいった海は、腰をおろして中の様子を見わたしていた。
 祠の一番奥まった場所には、記念礼拝堂にあるマリア像を小さく模したものがあるばかりでがらんとしている。
「聖歌はここで襲われたと考えているの?」
 空は入り口から奥にむかって声をかけた。
「多分。犯人は祠の奥に隠れていて、山下さんがやってくるのを待って、隙をついて襲ったんだと思う」
 というなり、海は祠の中から勢いよく飛び出してきた。空と陸とは慌てて脇に飛びのいた。昼間だから海の姿が見えたが、真夜中だとしたら不意をつかれて抵抗できなかっただろう。
「犯人は、聖歌を記念礼拝堂まで運んでいって、血を流すマリア像の怪談になぞらえて聖歌を殺したってわけなのね……」
 空は視線を旧校舎に投げかけた。視線の先には記念礼拝堂が、マリアの祠からちょうど対角線上に位置しているのだった。
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