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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第2章 女神の死の抱擁

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女神の死の抱擁(7)

「石膏像、みんな壊れてしまいましたね」
 陸の視線はすっきりとした棚の上に向けられていた。心なしか、棚もそれまで抱いてきた石膏像を失って寂しそうにみえた。
「残念だね。僕はニケ像がお気に入りだったんだけど、それも粉々になってしまった。地震などで倒れてきたりしたら危ないから、デッサンし終えた後はきちんとしまっておくようにと普段から美術部の生徒たちには言ってきたんだけどね。あの日、僕は体調崩して早退してしまって、部活には出られなかったから、部員たちも気がゆるんだのかねえ……」
「早退したんですか? じゃあ、部活は誰が?」
「校長先生だと思う。早退すると言ったら、じゃあ、美術部は自分が監督するからと」
「ああ、それで、校長は美術室に」
「そうだね……災難だったとしか……」
 校長が美術室にいた理由がわかったとばかりに、陸は小さくうなずいていた。
「部活が終わって、美術室の戸締りは誰がしたんです? 校長ですか?」
「いや、どうやら美術部長らしいんだ。僕には美術部を監督するって言ったのに、どうやら何の面倒もみてくれなかったらしいんだな。まあ、校長先生が部活をみるってことはないだろうから、口だけだとは思って期待はしてなかったけども」
「じゃあ、美術部長が戸締りをして……。その鍵はどうしたんですか?」
「事務室のキーボックスに戻したと思うよ」
「あの日、先生は美術室の鍵がないって探し回ってたそうですけど」
「そうそう。校長先生だろうと美術部長だろうと、鍵は事務室に戻しただろうと思ってキーボックスを開けたらなかったんだ。戻し忘れたのかと思って校長先生に尋ねようとしたけど、出勤していないって言われてね。美術部長が何か知ってるかと思って訊いたら、鍵はちゃんと事務室に戻したって言うし。おかしなことになってるなあと思って。そしたら海くんが体当たりでドアを開けて――」
「そして校長が倒れているのを発見した……」
 凄惨な光景を思い出したのか、陸はそっと目を伏せた。
「まさか、美術室で亡くなっていたなんてなあ。あの日、校長先生が無断欠勤したっていうんで、職員室ではちょっとした騒ぎになっていたらしい。僕は昼少し前に出勤してきたから、他の先生から聞いた話だけどね」
「それで、鍵は? なくなったままですか?」
「いや、校長先生が持っていたらしいんだ。スーツのポケットに入っていたとかで、後で警察から返してもらったよ。部長が鍵を返した後、様子が気になって美術室へ戻ったんだろうね。石膏像がちゃんと置かれていなかったのを見て、なおそうとでもしたんだろうか。そんな時に地震があって、心配した通り、倒れてきた石膏像に押しつぶされてしまったってことなんだろうねえ……」
 互いに顔を見合わせる空と陸はふたりして青ざめていた。
 犯人が持ち去ったと思われていた鍵を津田沼校長が持っていた。では、犯人は一体どうやって美術室を脱出し、外から鍵をかけたというのか……。
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