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学校の怪談殺人事件 作者:あじろ けい

第2章 女神の死の抱擁

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女神の死の抱擁(5)

「ねえ、陸。陸が犯人だとしたら、校長を殺して逃げていく時に美術室の鍵を閉めていく?」
 陸の返事はすぐにはなかった。
「密室トリックを思いついたら、閉めていく。そうでなかったら、閉めねえな」
「どうして?」
「なんでわざわざ閉めなきゃならねえんだ?」
 逆に陸が空に質問を投げかけた。
「さっさと逃げたほうがいいに決まってんじゃんか。現場を事故にみせかける細工はしたんだから。まあ、海みたいな鋭い奴には見破られるんだろうけど。逆に、鍵を閉めるほうが怪しくねえ?」
「なんで?」
「死んだ校長に鍵はかけられないだろ?」
 美術室に限らず、旧校舎の教室は内側からも外側からも鍵を差し込んで開け閉めするようになっていて、出入りには鍵が必要だ。
「鍵なんかかけないで、そのまま逃げればよかったのにさ。そうだよ、一体、何で犯人は鍵をかけたんだ?」
「かけなければならなかったのじゃないかな……」
 我ながら空は自分の抱いた考えにぞっとし、身を震わせた。
「小野さんが美術室を通りかかった時、犯人は美術室の中にいた。小野さんに中に入ってきてもらいたくなくて、犯人は鍵を閉めたんじゃないかな。私ならそうするから」
「小野さんがいなくなった後、美術室の外に出たはいいが、鍵を開けたままにしておくと、鍵がかかっていたという小野さんの話と矛盾することになる。だから鍵をかけるしかなかった……」
 突然、足を止めたかと思うと、陸は180度体を回転させた。丁度後ろを歩いていた生徒にぶちかりそうになったが、器用にかわし、次から次へと下校してくる生徒たちの波をかきわけ、陸は学園へと踵を返していった。
 空は慌てて陸の後を追った。
「何よ、急に」
「カバン。学園に置いて出て来ちまった。小野さんの顔を見たもんだから、そのまま正門出てきちまったけど」
 あっと空は小さく声をあげた。陸に言われるまで、手ぶらだったことに気づいていなかった。正門を出た時、体がいつもより軽い妙な感じにとらわれたのは気のせいではなかったというわけだ。
 空と陸は急ぎ足で学園にとって返し、再び小野のしわくちゃな笑顔に対面することになった。
「すいません、学園に忘れ物してきちゃって……」
 バツの悪い顔で、陸とふたりして警備小屋の前を通り過ぎようとした時だった。
「ああ、そう言えば――」
 小野が空たちを呼び止めた。
「今、思い出したけど、あの日、校長先生が亡くなった日、学園に戻ってきた生徒がいたっけ」
 空と陸は同時に足を止め、警備小屋の小窓に駆け寄った。
「それは何時頃ですか?」
 興奮をおさえきれずに空は震える声をふりしぼって尋ねた。
「七時半近くだったかな。地震の起こる前だったな。今日まですっかり忘れていたけど、君たちが戻ってきたんで思い出したよ。その生徒も忘れ物を取りに学園に戻ってきたんだ。完全下校時間の七時を過ぎていたんで正門は閉めてしまっていたんだが、どうしても明日まで待てないって言うんで、中に入れてあげたんだ。十分ぐらいで戻ってきたんだったかな。その生徒が正門を出るのを見届けてから巡回にまわったんだ。そうだ、うん、思い出してきたよ」
「その生徒が誰だか分かりますか?」
 空の声が上ずった。校長先生の死亡推定時刻は午後七時半ごろ、忘れ物を取りに生徒が学園に戻ったのも同じ時間、もしかしたらその生徒は犯人を目撃したかもしれない。
「いやあ……」と、無情にも小野は首を横に振った。
「女の子だったってことしかわからないねえ。陸くんのように遅刻の常習者だっていうなら、誰だかわかるんだが」
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