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竜騎士から始める国造り 作者:いぬのふぐり

西方領域攻防編

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幕間 今日のマシュー

 ロベールが、千歯扱きを持ってきたことにより脱穀が異常と言えるほど早く終わった。これにより、マシューでは普段よりかなり早めに、収穫のお祝いと無事な冬越しを祈願してのお祭りの準備が行われていた。

 だが、お祭りの日は昔から決まっており、その日付は雪が降るマシューから神様が渡り鳥の背に乗って、暖かな土地へ移動する日とも言われているので変えることはできない。

 だから、若者はロベールに頼まれた畑の拡張と既存の畑の区画整備を手伝い、体力の衰え始めた者がお祭りの準備をしていると言った具合だ。

 女性陣は、雪が降って町との交流が途切れる前に、最後の掻き入れとして石鹸工場をフル回転させ、石鹸作りを行っている。
 それは製紙工場も同じであり、冬になると紙の原料となる草が枯れてしまうので、それまでに材料を集めて紙にしなければいけないのだ。

 そんなに忙しければ人々の顔には暗雲が立ち込めているのが普通だが、今日(こんにち)のマシューの住民には暗雲どころか快晴も快晴だ。
 その理由は、ロベールが生み出した産業関係者や畑作業をしている人間等には漏れなく給料が支払われるようになった事で懐が温かくなり、マシューにある商店――と言っても鍛冶屋やパン屋・飲み屋程度だが――に金払いが良くなったことで恩恵を受けている。

 働けば働いただけお金がもらえる。今まで、税を納めて空いた時間で作った少ないお金を掻き集め年に1~2回来る品数の少ない行商で買い物するのを楽しみにしていたのが、今はイスカンダル商会がマシュー産の石鹸と紙を引き取りに来るので、2ヵ月に一度の頻度で商隊(・・)で来るようになり、しかも塩や調味料・日用雑貨以外に数はそれほど多くないが飾り物も持ってきてくれるのだ。

 それに、頼んでおけば手数料なしで希望に合った商品も買って来てくれる。こんな山奥の町では絶対に在り得ない待遇をさせてもらえ、そこまでマシューの存在価値を高めてくれたロベールに住民は感謝をした。
 感謝をし過ぎて、私兵を持っていないロベールの為に親衛隊が発足しそうになったほどだ。



 そんなマシューに存在する、ユスベルの旧城の一角にある倉庫――を改装した教室から元気な声が聞こえてきた。

「「「先生、今日もありがとうございました。また、明日もお願いします。それでは、みなさんさようなら!!」」」
「はいっ。皆も、気を付けて帰ってね」

 生徒たちから先生と呼ばれているのは、マシューに徴税官として来たメニフィレスだ。
 あの茶番が行われてから教師役を始めたのだが、初めは教師などやった事が無く手探りのような状態が続き、多くの失敗があった。しかし、それでも今はなんとか続けられている。

 一番の問題と言えば、メニフィレスが教師を始めて1ヶ月と少しした時に、別の徴税官がやってきた時だった。
 メニフィレスとは直接面識は無かったが、明らかに町の人間とは違う恰好をした――徴税官の服を着たメニフィレスと目が合うと、その徴税官は気まずそうに眼を逸らしたのだ。

 その瞬間、フィルドー領にある税務部で、自分がどの様に扱われているのかメニフィレスは悟った。
 そう言った打診は、マシュー派遣を言い渡された時にあった。その時は目の前が真っ暗になり、最悪死のうとさえ考えたが、それでも一回するだけで飽きてくれるかもしれない、と淡い期待をしてマシューへやってきた。実際は、一度どころか拍子抜けするほど何も無かったが。

 そこまで我慢するには理由がある。徴税官に支払われる月給金貨3枚と銀貨20枚は、メニフィレスを学校に行かせるために無理をしたせいで体を壊してしまった父親に必要な金額だったからだ。

 一度だけ戯れにマシューで教師として雇ってもらったら、給料は幾らになるか? と聞いたことがあったが、マシューの管理者のロベールは金貨2枚と即答した。やはり、徴税官としての給料の方が断然よい。酷い目にあっても、だ。
 ただ、メニフィレスは知らないが、ロベールの言った金貨2枚とは、マシューの()の学校での話だ。今は収穫時期で、千歯扱きと唐箕(とうみ)があっても子供も戦力として数えられているので、授業時間は午前10時ころから午後14時くらいまでを週4日。

 歩合制と言うわけではないが、授業時間が短い今は金貨2枚で、授業時間が長くなる――夜間学校も開くようになったらその分給料も上げるつもりだったが、メニフィレスはそれ以上聞くことなく話を切ってしまったから、給料が少ないと断じてしまった。

 しかし、今のメニフィレスは充実していた。もし、父親が健康になり無理をして自分がお金を稼がなくても良くなったときは私塾を開いてみたいと思ったくらいだ。



「ももたろう……は、オニをう……う……」
「打ち破り」
「うちやぶり、おにがしまに、あた……あった、きんぎんざいほ……を、なかまとともにもちかえり、おじいさんとおばあさんとなかよくくらしましたッ!!」

 元気よく最後の言葉を切り、レレナは時々姉のファナの力を借りて、『桃太郎』を無事に読み終えた。
 「どう? どう?」と、ややドヤ顔で聞いてくるレレナに、ファナは笑顔で褒めた。

「うん、こんなに早く読めるようになるなんてね。凄いわ、レレナ」
「お兄ちゃん、ビックリするかな?」
「きっと、ビックリするわよ。それに、絶対に褒めてくださるわ」
「えへへ~」

 嬉しそうな、恥ずかしそうな、はにかんだ顔を見せてレレナは笑った。
 父親から文字の読み書きと簡易計算の手ほどきを受けていたファナに対し、次女のレレナはそう言った教育を受けることなく生きてきた。

 だから、町長の子供であっても、他の大部分の住民と同じように文字の読み書きができなかったのだが、ロベールが学校を作ってからひと月でここまで読めるようになったのだ。

 本人のやる気も要因だが、それ以上に、ロベール様の書いた絵本は子供だけではなく大人にも人気がある。ただ問題なのが、女の子向けの絵本に描かれている絵は、ほんわかとしていたり可愛らしい女の子が出てくるが、桃太郎や一寸法師などの戦う場面がある場合は、凄まじく躍動感のある戦闘シーンが描かれているのだ。

 絵が画家並に上手いのは理解できるが、それでも戦闘シーンの掻き込みは異常だ。
そうは思っていても、ファナもロベールの描いたシンデレラが一番好きな話である。

 ファナは、一度だけロベールに「こんな事が本当にあるのか?」と聞いたことがあるが、「こまけーこたぁーいいんだよ」と返された。あとでミナにこっそりと聞いたところ、正妻ではなく側室であるならあり得ると教えられた。

 話がそれたが、レレナがここまで頑張るのは、何も絵本を読む為ではない。
 本人は隠そうとしているが、この町の存在価値を高めた管理者であるロベールのそばに行きたいからだ。
 毎日「おにーちゃん、まだかな~」「おにーちゃんは何してるのかなぁ?」と聞かれては、気付かない方がおかしい。

 身分が違うのだから――それこそ、シンデレラストーリーの様にならなければ――結婚どころか付きあう事すらできないのだが、思慮深いロベール様であれば妹を傷つけることなくやんわりと断ってくれるだろう、とファナは考えた。
 最近、話題にでないマシューでの今を書いてみました。
 アホな話ではありますが、母方の祖母の家は九州のドがつく田舎に在り、小さいころ(小学校低学年)は、私が遊びに行ったとき以外は時が止まっていると思っていました。
 変わらない田園風景に、牛たち。海パン一丁でバケツと網を持って道路を歩いている日に焼けた子供などなど。
 毎年行っても宅地開発も無く、また商店もできない――風景が全く変わらない――のでそんな考えに至りました。
 今年は6月に行ったのですが(更新が乱れた月ですね)、田んぼが牛舎に変わっていたりセブンイレブンができていたり、サンキューの内装が若干変わっていたりと。あとは、海パン一丁で徘徊する子供は居なくなっていました。
 泳いでいた川もゴミが増え、結構汚くなっていましたし。
 この話を書いていて、そんな事を思い出しましたw
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