挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜騎士から始める国造り 作者:いぬのふぐり

領地開拓編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

131/174

原因究明

前話のロベールがカグツチ国へ出立後に、皇帝陛下とロベリオン第二皇子の会話を追加しているので、よろしければお読みください。
 カグツチ()にある隔離部屋では、病気になった住人が苦しんでいた。
 そこに横たわっている住民は皆、腹を下しており酷い者もとなれば死に至っている者まで居た。

 それでも、そこに居る住人達は幸せな部類だ。ほとんどの人間が病気になれば真面な治療を受けることなく死んでいくのに対し、カグツチ()の住人は領主から薬草を配られるからだ。中にはそれを飲むことで持ちなおした住民も多く居た。

「皆、喜べ! ロベール様が来てくださったぞ!」

 その一報があったのは昼過ぎだった。不思議な事に病気になるグループとならないグループは顕著に表れており、今この報せを持ってきた若者も病気にならなかったグループの一人だった。

「ロベール様が……来てくださったのか……!?」

 酷い脱水症状のせいで唇がカサカサになった中年男性が、最後の力を振り絞るように起き上がった。
 それにつられるように一人、また一人と起き上がろうとするが、体力の消耗が激し過ぎるのか皆すぐに倒れた。
 しかし、倒れた者たちの顔には一様に安堵の表情になっていた。



「ヴィリア、ありがとう。すぐに荷物を下ろすから、少しだけ待っていてくれ」
「分かった。無理だけは絶対にするなよ」
「あぁ、大丈夫だ。それじゃ、行ってくる」

 ヴィリアから降りた俺は、ここまで夜通し飛んできたヴィリアへの労いもそこそこにしてイスカンダル商会へと急いだ。
 途中で何度も住民から薬草のお礼を言われたが、いちいち止まって聞いていくわけにはいかなかったので適当に答えるだけだった。

「ベイリース! ベイリースは居るか!」

 やっと完成した一階部だけで営業を始めているイスカンダル商会で、その奥に立って作業をしている商人――カグツチ支店の支店長であるベイリースの名を呼んだ。

「ロベール様!? 皇都はもう大丈夫なのですか!?」
「大丈夫にしてきた。それより現状を説明してくれ」
「はい」

 聞くとベイリースは今までの出来事の説明を始めた。
 最初は腹痛を訴える者がチラホラと現れ、それが子供や年寄りを主とした層だったため、よくある腹痛と思われていた。
 しかし、日が経つにつれ老若男女問わず症状が現れ、その下し方も下痢だけではなく嘔吐を伴う物だった。

 倒れた者の中の体力がない者から症状は一気に酷くなり、一人、また一人と死んでいったんだそうだ。
 初めはベイリースの独断で薬師に薬草を煎じてもらった物を配っていたそうだが、そこは良い判断だったと言いたい。

「症状が出始める前と今で前と何か変わった事は無いか?」
「獣人の一部ですが、水が臭いと言っています」
「水が臭い……?」
「はい。夏初めの嵐が過ぎた辺りから訴える者が出てきています」
「水が……」

 嵐と言うのはそのままの通りで、この国は夏の初めに嵐が来る。去年、どこぞの騎馬騎士が引き返してきた原因となった、あの嵐だ。
 これが中々曲者で、日本の台風の様に水不足の時はありがたい存在だが、風によって農作物にダメージがあるうえ、降りすぎた雨で根が腐る事もある。

「とりあえず、その獣人と問題の井戸を見せてくれ」
「はい。こちらになります」

 ベイリースに案内され、イスカンダル商会カグツチ支店を出た。



「ここ()水が臭くなった井戸です」

 そう言うのは豹頭の獣人だった。アマゾネスと言いたくなるような体つきの女性で筋骨隆々。
 しかし、本人が言うには戦闘は全くの不得手だそうで、普段の仕事は麻で布を織っているそうだ。
 この獣人が言う『臭い』と言うのがどんな臭いがするのか確かめる為に、手動ポンプに手をかけようとしたところで待ったがかかった。

「お待ちください、ロベール様。何が原因か分からない状態なので、ロベール様は何も触らない方がよろしいかと」
「――そうだな」

 確かに、水に何らかの原因があって――例えば水が腐っていた場合、それがただ腐っているだけなら手を洗うだけで何とかなるが、大腸菌群が発生していれば手洗いやアルコール消毒だけでは心もとない。
 ミイラ取りがミイラになってはいけないのだ。

「こちらをどうぞ」

 獣人が手柄杓で貯めた水に鼻を近づけて臭いをかぐが、獣人(かのじょ)達が言うような臭さと言うのは感じられなかった。
 人間と獣人とでは身体能力に大きな差があるので、それが原因かもしれない。

「すまない。俺の鼻では臭みが分からない」

 俺が分からないと言うと、獣人は慌てて(かぶり)を振った。

「いっ、いえっ! そんな、滅相もございません! 我々の鼻が良すぎるだけで、決してロベール様が悪い訳でも、そもそも謝られるような事を我々にするなど!」

 貴族が平民――しかも、獣人に謝罪の言葉を言うなど絶対に無い。獣人(かのじょ)達にとって、人間・獣人分け隔てなく薬草を配っているロベールは神のような領主であり天上人の様な存在なのだ。

「しかし、こうなるとますます分からんな。臭み……と言ってもどんな臭いか分からんし、そもそも毒の可能性も考えないといけなくなるな」

 井戸の様に開口部が大きくないと言っても、ハンドルの接合部は開いているのだ。そこから毒を入れられればポンプの内側に付けられた毒が消えるまで長期に渡って被害を出し続ける。
 それ以前に、毒が投げ込まれたのだとしたらその投げ込んだ犯人を見つける所から始めなければ、手動ポンプを付け替えたとしても同じ事の繰り返しになるだろう。

「腹を下していない住民はどこから水を汲んできているんだ?」
「同じく井戸からです。あとは、河から直接水を汲んできている者ですね」
「河から水を汲んできている住民のどれだけが腹を下している?」
「河限定で水を汲んでいる住民では皆無ですね。仕事中は河で、家は井戸を使っている住民は皆腹を下しています」

 って事とは、汚染源は河ではないと。しかし、安全な水があると言うのは良かった。水の全てがダメだったら、この町自体を捨てないとどうにもならなかった。

「ならば河から水を汲み、湯を沸かせ。できるだけ大量に」
「風呂ですか?」
「今、風呂に入ってどうする。腹を下している者は脱水症状が起きている。抗生物質が無い状態では、その者の持つ免疫力だけが頼りだ。何とか生かす為に水を飲ませないといけない」
「分かりました。動ける者に指示を出し、すぐに湯を沸かします」
「分かっていると思うが、井戸からは絶対に水を汲むな。あと、腹を下している者が使っている鍋も使うな」
「分かりました」

 湯を沸かす指示を出してから、経口補水液を作るための材料を取りにヴィリアの元へ向かった。
 半日以上、重い荷物を付けた状態で飛ばした上に、さらに荷物を付けた状態で放置してしまった事を謝ろうとしたが、すでにイスカンダル商会の人間に荷物を下ろされておりヴィリアは厩舎へと移されていた。

 経口補水液については、今回のブレイフォクサ公爵との戦争で有耶無耶になっていたが、元は夏に向けて熱中症対策で作っていた物だ。
 砂糖が手に入りにくいこの世界で経口補水液はとても高価な飲み物ではあるが、ただの水を飲むよりも浸透性が良く、病気の人間に対して効果的だ。
 これの使用先は高級貴族の子供達で、ときおり熱中症とみられる症状で倒れ最悪は死に至ると言う事も聞いていたので、恩を売るために配合率を調べていたのだがちょうど良かったとしか言いようが無かった。



「ロベール様、こちらを」
「あぁ…………よし、これくらいだな」
「ありがとうございます。では、すぐに体温まで冷まして飲ませます」
「頼んだ」

 湯を沸かし、そこに塩と砂糖を入れれば完成だ。柑橘系の果物があれば味のアクセントと共に栄養価にも貢献してくれるので欲しい所だが、さすがに高望み過ぎるので諦めた。

 知的財産として経口補水液も今後も使って行ける物なので、他に漏れないようにベイリースを筆頭に信頼できるイスカンダル商会の人間のみに作らせている。
 怪しい兵士上がりの住民や、ストライカー侯爵家から俺の監視に来ている人間も床に臥せっているのだが、警戒するに越したことはない。

「あっ、あの、ロベールさま……」

 イスカンダル商会の隣に急きょ設置された経口補水液製作所の出入口から、亜人の少女が顔を覗かせながら俺の名を呼んだ。

「誰だっ!? クソッ、警備は何をやっていたんだ!」

 胡散臭い人間が流入してきているカグツチ国で、自分達の利益は自分達で守らなくてはいけないのが常識だ。ベイリースは守られているはずの製作所に、自分達以外の人間が居る事に悪態を吐いた。
 その声に亜人の少女は小さな悲鳴を上げた。

「いや、大丈夫だ。亜人・獣人の開拓者達のリーダーの娘だ」

 ナウルはベイリースの怒号に身を縮ませたが、俺が手招きをすると途端に笑顔になって部屋に入ってきた。

製作所(ここ)の門には警備兵が居たはずだけど、その人たちは居なかったのか?」
「はっ、はい。誰かが倒れたらしくって、駆けて行きました」
「なるほど」

 警備兵がどこへ行ったのかナウルから聞きだし、俺はベイリースに耳打ちした。

「解雇しろ。役に立たん」
「はい。すぐに切ります」

 身内の誰かが倒れたのだろうが、それを言ってくれさえすれば対策を――誰か別の人間を警備に付ける事もできたが、こうも勝手な行動をとられては動くことが出来ない。
 可哀想だが、勝手に動く奴は始末に負えない。さっさと切り離すのが吉だ。

「それで、ナウルはどうしたんだ? ここは危ないから近づいちゃだめだよ」

 危険な物は火を扱っている鍋周りだけだが、秘密を守らなければいけない物もあるのである意味危険だ。
 今は俺が居るからすぐに殺す事は無いと思うが、場合によっては口封じの為に消される可能性もあるしな。

「お礼を! お礼を言いたくて、ロベール様を探していたらお友達がここに居るって言ってて……」
「そうか、ナウロのお母さんも倒れていたんだね」
「お薬を貰って、お母さんの顔色も最近良くなって! あんな高いお薬を配ってくださって、本当にありがとうございます!」
「ここに住んでいる皆は家族みたいなもんだ。できる限りの事はするさ」

 数が増えていけばそれだけ医療費がかさみ、こんな事を言っては居られなくなるが相手は子供だ。難しい事を言って悲しませるわけにはいかない。それが嘘であっても。

「あとは頼んだぞ」
「任せてください。必要量を作り、順次症状の酷い者に飲ませていきます」

 ベイリースに後は頼み、俺はナウルを外へ連れ出した。
 残念な事に、外へ立たせていた警備兵は全員どこかへ行ってしまっているようで、傭兵ではなくなるべくカグツチ()の人間で兵を賄いたかったがこれでは無理そうだ。
 やはり、二陣として来たやや若い奴だけではなく、第一陣として来た老兵を警備に付かせておけば良かったと悔いた。

「そういえば、ナウルは平気なんだな」
「お父さんが、井戸の水は飲むなって」
「そうか。賢明な判断だ」
「お母さんは、お父さんが注意する前に飲んじゃってそれで……」
「そうか」

 それでも、話を聞けば軽症だと分かる。獣人の被害が少ないのは、単に体が丈夫だからと言う訳ではなく、鼻が良い者が臭いから水が腐っていると知りそれを伝えたからだろう。

「お母さんの代わりに、私もお家の手伝いをたくさんしてるんですよ!」
「偉いな。どんな事をしているんだ?」
「えぇとですね……。お掃除に洗濯にご飯です! お父さんが畑で頑張っているから、私はお家で頑張るんです!」
「お父さんも家の事を心配せずに働きに出られるのはナウルのお蔭だな。偉いぞ」

 グシグシとスピッツ型の耳ごと荒く撫でると、ナウルは尻尾を激しく揺らした。
 適当に話をしながら歩くと、すぐに隔離部屋についた。危険なため貴族であり領主である俺を重症患者の居る部屋には入れる事は出来ないと断られたので、症状の和らいだ病人の見舞い訪問だ。

 俺が来たくらいで誰が喜ぶのかと思ったが、皆心底安心したように顔を綻ばせ、幾人かは涙まで流している。
 その中にナウル母親も居たようで、隣に居たはずのナウルはベッドで上半身だけを起こした女性の横に立っていた。
 その女性は栄養と水分が足りていないようで、頬がコケ全体的に乾燥している印象を受けたが、顔色は元に戻りつつありここに居る時点で今すぐどうにかなる症状はほぼないそうで安心した。
 その後、数か所の隔離部屋に慰問した所で止めた。あまり回っても向こうに気を使わせるだけだし、俺の目的は原因の根絶だからだ。

「ここまでありがとうな。もういいぞ」

 母親の所に居れば良いのに、なぜか懐かれて隔離部屋を回るのに着いてきたナウルに言った。

「ロベール様は、今夜はどこに泊まるんですか?」
「あーと……、多分、イスカンダル商会だな」

 宿泊施設の無いカグツチ()で寝る場合はイスカンダル商会の一角を借りる。それまでは天幕だった。

「じゃあ、明日、お魚を持って行きますね!」
「魚……?」
「はいっ。河の流れが変わってから(・・・・・・)林の中を河が流れるようになって、そこに行くと魚が草に引っかかっているんです」
「なんつー便利な自然罠」

 林の中を流れる河がどれくらいの深さか分からないが、ナウルくらいの身長でも大丈夫な事や元々陸地だった事を鑑みればさほど深さは無いのだろう。
 嵐の来る今の時期限定だろうが、子供でも漁ができるのなら倒れている人たちにとっては心強いだろう。
 …………流れが変わった――――?

「河の流れが変わったからか……」
「どうしたんですか?」

 そうか。河の流れが変わったからか。
 俺の知っている話は長期的に存在しておりゆっくりと汚染されていったが、この()の地質的に可能性はあった。
 困った顔で話しかけているナウルに早く帰るように言い渡し、俺はイスカンダル商会へ行き急ぎ必要な物を集め行動させた。



 次の日。俺の前には開口部を地面へ向けた桶が置いてあった。

「では、開けます」

 イスカンダル商会の人間が桶を取り外すと、そこには雫を付けたシダ系の植物の葉が刺さっていた。

「やっぱりな……」
「これはいったい……?」

 納得する俺と違い、意味が分からないイスカンダル商会の人間は俺に聞いた。
 これは地表に近い水脈を見つける為の方法で、地表に近いところを地下水が流れていれば蒸発量も多く、こうして桶を被せて一日置けば蒸発した水分が桶に溜まりシダの葉に雫が着くと言う寸法だ。

 ただ、イスカンダル商会はこの雫の事を言っているんじゃない。俺はここで井戸を作る時に彼らと等間隔に桶を置いて、どこが井戸に適しているのかを調べたからだ。
 そして、ここは地表に近い水脈が無く葉に雫が付かなかったところでもある。

「水の流れが変わったんだ」
「この間の嵐でですか?」
「そうだ。この辺りは粘土質の土が少なく大体が砂だ。お蔭で井戸のパイプを打ちこむのは楽だったが、弊害が出たな」

 畑は腐葉土と山の麓の粘土質の土を持ってきたから何とかなっているが、町の地面のほとんどは砂地で学校の運動場の様な地面をしている。
 吸水性と水はけが良いのが特徴だが、その二つが良いと言う事は水の移動が容易と言う事だ。

「弊害……ですか? いったいどのような?」
「肥溜めを作っただろ? 水の流れが変わったせいで、多分肥溜めの辺りも地下水が流れている」
「あれですか……」

 肥溜めと聞いた瞬間、イスカンダル商会の人間の顔が曇った。 
 やはり、こちらの人間にはまだまだ慣れない物なんだろう。

「肥溜めは馬鹿に出来ん施設だぞ。しかし、まぁ、今回は悪い方に向いたが……」

 肥溜めと言うのは人間の糞尿を井戸の様な物に溜めている施設だ。
 よく衛生的だとか言われているが、実際は糞尿をそこらへんにばら撒かずに済むと言うだけで、肥溜め自体が衛生的と言う訳ではない。
 臭いしハエは集るし、雑菌が発生しているので傷口に入れば即化膿するし、そもそも落っこちたら色々な意味で洒落にならん。

 前の世界と同じように、おが屑・もみ殻・糠・細かく切った藁などでフタをしているがその程度じゃ肥溜めの暴力的な臭気は抑えられない。
 それに、問題となった肥溜めはモルタルやレンガが届くまでの臨時で作られた簡易的な穴を掘っただけの物だ。モルタルやレンガなどで土と肥溜めが仕切られていないので、地下水がこの肥溜めまで流れてくると糞尿も一緒に溶け出してしまう。
 前日にヴィリアに頼んで井戸水の臭いを嗅いでもらったのだが、確かにそれらしい臭いはすると言っていた。

「しかし、色も臭いもその――そう言った感じはしませんでしたが?」
「流れ出たのは臭いや色だけじゃなく、大腸菌とかも――えっと、目には見え難い(・・)虫の様な物が悪さをするんだ」

 目には見えず分かりにくい物であっても、前に測量した時に説明した菌類の話は覚えていたようでベイリースは頷いた。

「ですが、それら虫は煮沸をすれば大丈夫だと言う話ですが」
「確かにそうだ。けど中には()を作る菌も存在し、増殖後に出された毒は煮沸しても消えない。それに、俺が奨励している歯磨きだが、その歯磨きをするときは煮沸した水を使っているか?」

 俺の言葉を聞いて、一同はハッと気付いたようだ。
 海外に行くと飲み水には気を付けるが、歯を磨く時には現地の水道から出る水をそのまま使い腹を下す人が多いと言うのは前世の記憶でもある。
 たぶん、彼らも歯磨きの時にはそのままの生水を使った覚えがあるんだろう。

「ですが、今まではそれでも何ともなかったのにどうして今更?」
「水の流れが変わって大腸菌が流出し、大腸菌の多くなった井戸水を使ったのが始まりなんだろう。今までは大丈夫だった体の弱い奴がまずは感染し、その糞尿を処理する者へ移る。そこから倍々ゲーム的に増えて行ったのが原因と考えられる」

 ってか、正直それ以外の回答を求められても俺には答える事ができない。
 しかし、ここに居る彼らは納得してくれたようで、俺が恐れていたそれ以外の回答は求められなかった。

「我々はどう行動すれば?」
「まずは肥溜めの移動だ。嵐が来るたび、毎回こんな事になってちゃ()が死ぬ。今まで大丈夫だったんだから、肥溜めの移動だけで何とかなるだろう」
「分かりました。すぐに移動させます」
「肥溜めを嫌がる奴が増えない様に、申し訳ないが理由はそちらで考えてくれ」
「はい。やらせていただきます。ですが、そこまで考え込まなくても、ロベール様の威光が落ちる事は絶対に在りませんよ」
「だと良いけどな」

 せっかく綺麗な河なのだから、都市部の河川の様に有機水オーガニックウォーター化してほしくない。
 だからこその肥溜めなのだが、こういった文化の存在しない世界ではなかなかどうして難しい物だ。

 最近はやっとマシューでも受け入れられて使用されているが、あれはマシューに住む人たちの気性があっての事も多いだろう。これが、人種や出身地や年齢の違うカグツチで上手くいくかどうか。
 今回の件がどう転ぶかが問題だ。

 それ以前に、マシューでは水の流れが変わる事が無いので安心だが、ニカロ王国がどうなのかが気になった。
 今のところクレームが来ていないのでそれほど騒ぎになっていないのだろうが、急ぎ伝えた方が良いだろう。

 場合によっては賠償として何らかの技術を要求される可能性がある。その場合は見せ(・・)金ならぬ見せ技術として、何か適当な物を用意しておいた方が良いだろう。
 しかし参ったな。雫機関ではすでに肥溜めの話はしており、何人くらいか分からないがブロッサム先生の様な何でも試したいっ()の場合はすでに作っている可能性がある。

 今回は俺の()で発生してくれたので土質も理解がありすぐに原因を見つける事ができたが、これが他領であれば原因が見つからず叩かれる原因となっただろう。
 徴税部の人間の言いなりになるのは癪だが、可及的速やかに雫機関を再開講して今回の話を伝えなければならなくなった。
 面倒臭いが、仕方が無い事として割り切らなければいけない……。
5月3日 文章の一部を書き直しました。
cont_access.php?citi_cont_id=84031287&si
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ