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竜騎士から始める国造り 作者:いぬのふぐり

領地開拓編

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幕間 皇都に巣食う影

本日、2度目の更新です。
よろしければ、前話も読んでください。

この話は、ロベールがクリント幼少訓練場でエルクースと会ったときからカグツチ国でホモが発生するまでの間の話です。
「いや~、なかなか驚かせる事をする子だね、全く」

 楽しそうな笑い声を出しながら青年はワインをあおった。この部屋には酒の世話をする従者が居ないので手酌になるが、青年は全く気にした様子も無かった。

「ふん。何が面白いか。せっかく呼び込んだ間者(スパイ)も蜘蛛の子を散らすように出て行ったわ」

 そう忌々しげに返すのはまだまだ活気のある中年男性だ。彫が深く厳つい顔つきをしており、為政者に向いた顔つきをしているが、中身がそれに共わないとして兄直々に政界から遠ざけられた存在だった。

「それは仕方がないことだよ。帝国の要である騎馬騎士本部に堂々と入られていては、幾ら武を持って覇を制す皇帝であっても気付くさ」

 それは言外に「武」以外は役に立っていないと公言しているような物だが、ここに皇帝陛下を心の底から想っている者は居ないので誰も咎める事は無い。

「それより、騎馬騎士本部の幹部共が軒並み縛り首になったけど、そちらとしては大丈夫なわけ?」
「大丈夫と言うのはどういう意味だ?」
「だってさ。騎馬騎士本部に影響力が無くなったって事でしょ? 政治に口出しできなくなってからチマチマと他人名義で賄賂を贈って頑張っていたのに、それが一瞬にして水の泡……」

 「なんて悲劇」と額に手をやって頭を振るが、それを見た中年の男性は眉を小さくだが吊り上げた。

「その縛り首になる一端を担った者の言葉ではないな。お前が余計な事をしなければ、あいつ等は縛り首になるどころか刑罰の対象になる事は無なかった」
「まっ、それはそうなんだけどね。でも、彼らも貴方の言葉以外で動いている節があったし。外患誘致ってやつ?」
「それなら第一皇子も同じだろう。ニカロ王国のガキが竜騎士(ドラグーン)だと? こちらの得る物は何だ? 食器の作り方なんぞ知って何になる?」
「一応、技術交換になっているけどどうだろうね。ユスベル帝国(こちら)は建国前からのドラゴンの操り方。ニカロ王国(あちら)は磁器の作り方だ。一見、金になる磁器の作り方を教えてもらえるこちらに利があるように見えるけど、戦力の手の内を晒すことになる竜騎士(ドラグーン)の技術を方が得る物が大きい」
「それこそ外患誘致だ。皇帝は何をしている?」
「自国を盛り立てる為に他国に留学している息子が可愛いんじゃない? 頭の中身が全部戦争で埋まっているから、技術云々に関してはそれがどれほど大切な物か分かっていないんじゃないかなぁ?」
「皇が腐っていればそれを諌める筈の部下も腐っているのか。嘆かわしい……」

 国を憂いているように見えて、実際のところ国を潰そうと動いているのだから手に負えない……、と青年は声に出すことなく呟いた。
 したたかに動いていれば政界から消えることも無かったのものを、声が大きく動きも大きすぎた為に目を付けられ、政界どころか療養と称して皇都を追い出されているのが哀れだった。
 そこに関しては似た者同士だろう、

「そのロベールと言う子供は、何をどこまで理解しているんだ?」
「何を、とは何?」
「技術についてだ。そいつに言えば磁器に関しての技術くらい出てくるんじゃないのか?」
「出て来るかもしれないけれど、彼はきっと出さないよ?」
「なぜだ? 奴は国士ではないのか?」

 中年男性の言っているのは、帝国の被害を少なくするためにロベールが行ったラジュオール子爵邸襲撃作戦の事だ。このことについて軍属でなくても貴族であれば大多数が知っている。

「彼は国士でも何でもないよ。自分と言う存在を皇帝に認めさせるためにとった行動だよ」
「何と……そんな俗物だったのか……」
「俗物……フフッ」

 青年の小さな笑い声は、ロベールの考えに対して憤る俗物の権化たる中年男性には聞こえていなかった。
 青年にとってロベールは面白い存在であり、それを馬鹿にされるのは許せなかったが、今はこの中年男性の道化っぷりが面白いので何を言わないでいた。

「新軍の中でもロベールの旗下に入りたいと言う竜騎士(ドラグーン)はたくさん居るよ。まぁ、そのほとんどは学生だけどね」
「そんな俗物に人数を割くなど在り得ん話だ。無しにしろ」
「それは難しい事だけど……まぁ、なんとか納得はさせてみせるよ」

 確実性を欠く青年の返答に中年男性は忌々しくワインをあおった。続いてからになったコップにワインを注ごうとボトルを持つが、その中が軽くなっているのを感じると再び忌々しそうな顔つきとなりボトルを強く机に置いた。

「それに、騎馬騎士本部所属の兵士達の間での噂だけど、彼は平民から兵を集めようとしているようだよ?」
「どういう事だ?」
「そのままの意味さ。貴族を排他した編成にするんじゃないかな?」

 兵士の間で流れている噂と言うのは、ロベール自らが市井の訓練場に赴き、そこで目を付けた先のある子供をスカウトしていると言う話だった。
 どこから出てきた話かは探し出すことが出来なかったが、良く似た子供がとある訓練場に出入りしている所を目撃されている。

「それこそふざけるなだ。貴族あっての平民だ。その様な馬鹿な事が許されるか!」

 貴族絶対主義ではないはずの中年男性だったはずだが、やはり貴族と言う存在を蔑ろにされるのは我慢できないようだ。
 しかし、このポッと出の話がなぜ広まっているのかと言うと、ロベールが自分で率いる部隊員を自分で集めると言っておきながら公募している様子が見られないからだ。

 自らが声をかけてまわるのかと思いきや、そんな行動を起こしている様子が無いのでそれも噂を加速させる原因となった。
 ロベールは時々向う見ずな――何を考えているのか分からない行動をとる事があるが、それらが適当にやっていると見るのは危険だし、なにより彼は賢者の弟子である時点でかなり危険な存在だった。

 平民の子供を幼いころから兵士として育て、ロベールの為なら死をも厭わない最狂の兵士を育成することが目的なのかもしれない。彼はそれを行うだけの力があり、また技術もあるのだろう。
 静かに考え事をしていると、中年男性は面白くなさそうに息を吐いた。

「このような所に居ては陰気になる。俺は帰るぞ」
「分かりました。この国を良き方へ導いてくれるように祈っておりますよ」

 ニッコリと笑う青年に、中年男性はフンと鼻を鳴らすだけだった。
青年=『幕間 騎馬騎士本部に巣食う影』にも出ている正体不明の男。

2月28日 誤字修正しました。
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