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竜騎士から始める国造り 作者:いぬのふぐり

領地開拓編

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新しいこと

モンスター文庫大賞2次通過しました! ありがとうございます!

注、今回は、ゲイ表記があります。注意してください。
「ロベール様は、どうやったら一緒にお茶を飲んでくださるのでしょうか……?」

 ロベールの態度に騒ぐ同級生を窘めながら、パスティナは去って行った出入口を見つめた。
 初めて会った時の会食は、多少無理矢理ではあったが成功に終わったと言っても過言では無かったはずだ。しかし、それが今では避けられている。

 クラスメイトに相談したところ何かと親身になって受け答えをしてくれた上に、ロベール様との仲を取り持ってくれると言ってくれたが、なかなか会うこと自体難しいのか話の進展は無い。

 こんな仲になってしまった原因としては、去年までロベールが下宿していた部屋で見つけた暗号(・・)を聞いたためだった。
 ロベールの従者であるメイド(ミナ)が、パスティナが来るまで必死にその暗号を消している所から始まった。
 初めは自分が入るのだから学校が隅々まで掃除してくれているのだろうと思ったのだが、良く見ると机しか掃除していない。異様とも言える執念で机を拭いていたのを恐ろしく感じ、自分の従者に言ってすぐに出て行ってもらった記憶がある。

 その拭いていた部分には見慣れない記号(・・)が羅列してあった。
 落書きと一蹴する警護の者と、それは違うと規則性を見つけた私のメイドの間で喧嘩があったのだが、前に住んでいた生徒がロベールだと分かった事でそれは何らかの――どこかの国で使用されている文字だと理解した。

 暗号暗号と言ってはいるが、そんな重要な物を机に書きこむわけがないと自分自身思っている。それでもこの文字を理解すればロベールと言う人物も同時に理解できるかもしれない。
 と、考えているのパスティナだったが、言葉を交わすどころか会う事もままならないのでどうにもならない。
 メイドを介して会わせてもらおうかと考えたのだが、一度会ったが最後その後はメイドにすら避けられる有様だった。

「あまり御気に病むことはありませんよ!」
「その通りです! あのような無礼な態度、皇帝陛下からお言葉を頂いた事に増長をしているのですよ」
「敵地への襲撃は事実だったとしても、そこには彼以外の兵士も多く居た事から彼一人の功績ではないと言うのが一般の意見です。騎馬兵士を動かせないからと言い、この学校の先輩方を自らの功績を作るために危険に晒すなど言語道断です」

 今年入学したばかりの一年生は、昨年ロベールが行ったラジュオール子爵邸襲撃作戦の事は親やその周辺、または入学してから同級生から聞いた又聞きがほとんどだった。
 特に前々から交際があったわけでもなく、またロベールにより何かしらの被害を被ったわけではないのにこの様な物言いになるのは、パスティナを慰めると言う事以外にも様々な原因がある。

 その主たある原因は彼らがこの学校に入学した理由にあった。
 皇帝陛下が直接言葉をかけたロベール・シュタイフ・ドゥ・ストライカーとは、ストライカー侯爵が妾との間に作った子供である。または、全く関係のない血筋から連れて来た別人である、と言う噂があの表彰の後にお茶会(サロン)でよく流れていたのは記憶に新しかった。

 しかし、国議会にも参加できる有力貴族であるストライカー家を直接批判できるほど強い家柄でもなく、またそれほどの功績を叩きだせるほど優秀な人材が居る訳でもない貴族たちは考える。
 ならばその子供――ロベールに取り入れば良い。現在第三軍を新設している上に痛い腹を探られるよりは簡単に入る事が出来るだろう。そして、そこに取り入る事が出来れば先は明るい。

 と言うのが一般的な中・下級貴族の見解だった。
それに、新しい物好きのロベリオン第二皇子の肝いり部隊の為、作った後は多少の戦果を残し後はロベリオン第二皇子の為のお飾りになるだろうと判断しているからだ。

 お蔭で今年の入学生はドラゴン所持者が少ないうえに、ドラゴンに乗る事が出来る人間も少ない。とは言う物の、普段通りの入学数はドラゴンを所持し騎乗する事も出来るので、できない生徒は突如入学が決まった子供というのがすぐに分かる。

 なぜそんな子供がたくさん入学する――入学できてしまったかというと、過去の皇帝陛下が決めた法律に問題があった。
その法律と言うのが竜騎士(ドラグーン)を育成する為に可能性がある者は拒まぬと言う竜騎士(ドラグーン)と言う兵種が確立していない前時代的な法律によるものだった。

 一人二人の声ならば無視できたが、上下問わず貴族から声が上がってしまったので、多少無理があっても入学させるしかなかった。
 その為、竜騎士(ドラグーン)になるつもりが無かった子供が集まり、結果として質の低下を招いてしまったのだ。

 そして入学初日から新一年生の保護者たちは、こぞってロベリオン第二皇子の一番のお気に入り――と思われている――であるロベールにプレゼントを贈ったのだが、全てその日の内に返却された。
 後日、プレゼント内容が気に入らなかったのかと再び別の品を送ったのだが、本人から受け付けはしていないと手紙を添えて返された。

 その事について多くの貴族は、ロベリオン第二皇子か実家から何らかの事を言い含められておりプレゼントを受け付けないと理解したが、一部の貴族とまだ世慣れしていない貴族の子供達はせっかくプレゼントを贈ったのになぜ受け取らないのかと声には出さないが不満を持った。

 その噴出が出始めたところに、パスティナと言う輝く異物(・・)が入った事により強く表面化した結果となった。

「それでも、自らの体を張って国の為に事を成したと言うのは事実です。いくら言っている事が正しかろうと、行動に移せない人の言葉は弱いのです」

 そうパスティナは勢いづく同級生が間違いを起こす前に窘めた。しかし、少数ではあるがパスティナの言葉に感銘を受けた(・・・・・・)ように頷く生徒も居た。
 大人になれば他家に嫁ぐはずだった自分には関係のない言葉だったが、このような大役を任されるようになって初めて理解できた。
 なので、口を出すだけではなく危険ではあっても必要であれば行動に移すロベールの事を、パスティナは尊敬すると共に憧れていた。

「ですが、ロベール様が受け持つ事となった準統治領ですが、あちらでも何かお手伝いできることがあれば良いのですが……」
「先の戦場跡地の事ですか? あそこは帝国の端も端。辺境どころの騒ぎではない危険地帯ですので、まず町になったところで真面な人間は住めないでしょう」

 戦場となったカタン砦から南下した所にカグツチ国となる領地があるのだが、地図でもあやふやな国境地帯の為、皇都在住の生徒たちの認識はその程度だった。
 2ヵ月ほど前に皇都を出立した、カグツチ国へ行った元兵士達も皆新しい土地へ未来を描いているようだったが、文明の()の字もない辺境での生活なぞ想像できない貴族の子供には人生も終わったとしか言いようのない行先だった。

 だから新一年生たちはこう考える「ロベールは嫌われているのであのような僻地へ送られたのだ」と。

 実際そのような事は全くなく、また資金も多量に国家予算を割いているので国としてもある程度期待されているが目に見えて分かる。しかし、都合の良い部分しか目がいかない子供にそこまで考えさせるのは酷な事だった。



 パスティナと会ったせいでアムニットとのお茶会は中止となり、さりとて寮へ戻る気も起らなかったので俺はロンに扮して平民街へと下りた。

 アムニットもミシュベルも雑多で不衛生な平民街は好まないらしく、前に誘ったら遠まわしに断られたので今回も止めておいた。
 アバスを誘おうとしたら、今は訓練場で訓練をしているそうで会えなかった。今までも訓練量はかなりあったらしいが、あのラジュオール子爵邸襲撃作戦からこっち上級騎士訓練課程に混ざって鍛錬を積んでいるらしい。

 そのストイックさに舌を巻くと共に、14歳と言う成長途中である体の方は大丈夫なのだろうかと心配になる。
 最後にミナを誘おうと思ったが、今日はオーダーメイドで頼んでおいた剣が出来上がるらしく昼から出かけていたのを思い出した。
 俺が皇帝陛下直々に帯剣許可を貰ったので、その従者であるミナも俺が許可すれば帯剣することが出来るようになり、貯め込んでいた給金のほぼ全てを(はた)いて作ってもらったそうだ。

 前にミナに「帯剣を許可する」と仰々しく言いながら木刀を渡したらマジ泣きされた。うれし泣きとかじゃなくて悲しさの方のマジ泣き方でドン引きしてしまった。
 仕方が無いので今日はクリント幼少訓練場に来た。何ヶ月ぶりかの出席のため忘れ去られていると思ったが、クリント先生は俺に会うなりすぐに気付いてくれた。

「むっ……久しいな。もう来ないのかと思っていたぞ」
「御久しぶりっす。ちょっと行商に狩り出されていてなかなか出て来れませんでした」
「そうか。まずは、素振りから始めるんだぞ」
「分かりましたっ」

 このクリント幼少訓練場での俺の立場は商人見習いだ。見習いと言っても丁稚と言った方が良いような扱いなので、今回の様に長期出席しない場合は仕事を理由にすれば全てにおいて説明がつく。
 このクリント幼少訓練場はスズメの涙程度の月謝で教えてくれるので、今日も市井の子供達が訓練に来ていた。

 軽く準備運動をした後、適当に使いやすそうな木剣を箱から抜き出すと素振りを始める。
 貴族になってから余り振っていなかったクワを最近振り始めたので、広背筋が鍛えられ素振りも早くなり良い音が鳴っている。

「ロン……くん?」

 素振りをしていると後ろからルティスに声をかけられた。

「おぉ、久しぶり。今来たのか?」

 ルティスは今来たばかりなのか汗をかいておらず、服も綺麗なままだった。

「うっ、うん……。さっきまでお母さんの手伝いしてたから……。ロンくんはいつ頃来たの?」
「俺も、まぁさっきだな」
「そう……」

 そして微妙な空気が流れた。今までだったら俺を見つけた瞬間から木刀で叩いて来たり、背中目がけてライダーキックかましたりしてきたと言うのに何か変だった。

「どうしたんだよ?」
「あっ、ううん。ねぇ、ロンくんって親戚とかに貴族様って居る?」
「貴族? ……あぁっ!?」

 このよそよそしさは、騎馬騎士本部の門での出来事が原因だろう。竜騎士(ドラグーン)育成学校の服を着ていたが、外套を羽織っていたので気付かなかったためにロンとしての俺を知っているルティスは馴れ馴れしく声をかけ、それを半ギレのミシュベルが窘めたのは記憶の端にあった。
 だから遊んでみる事にした。

「あぁ、あれは大変だった……。部屋で寝ていたら突然叩き起こされて、兵士に囲まれるわ逆さ張りつけの刑にされるわ、終いには「俺と顔が似ているとは気に入らん。二度と見れん顔にしてやろう」とか言われてナイフで顔の皮を削ぎ落さして痛てぇ!!」

 初めは顔面蒼白で聞いていたルティスだったが、途中から嘘と気付いたのか頬を膨らませながらローキックしてきた。

「お前ふざけんなよ、すぐ殴ったり蹴ったりするやつは真面な大人になれないぞっていつも言ってるだろう?」
「すぐ嘘つく子だって将来は悪人になるんだよ! ロンくん嘘ばっかつくから、将来は悪い人になるんだよ!」
「良くわかったな。俺の将来の夢は世界征服だ。世界征服をして俺と言う名を歴史に刻むのだ」
「バッカじゃないの? 前々から馬鹿だと思っていたけど、やっぱり馬鹿じゃない!」

 勢いを取り戻したルティスは人目もはばからず俺に馬鹿馬鹿と連呼した。
 静かに聞き流していると逆に馬鹿にされていると取ったのか、ルティスは拳を振り上げた。

「バ――!?」
「馬鹿はお前だ、馬鹿。何、年下の子を苛めているんだ馬鹿」

 振り下されようとしていたルティスの腕を掴んだのは、ルティスの兄のエルクースだった。
 カタン砦で臨時の大将を務めていたエルクースだったが、あの防衛戦が終わったからか皇都に帰って来ていたようだ。
 あの日見たような険のある、追いつめられたような表情が嘘のように消えているので、今は落ち着いて過ごすことが出来ているようだ。

「あっ、お兄ちゃん! この子がロンくん! 嘘ばかり吐く悪い子!」
「どうも、素直な子と(ちまた)で有名なロンです。初めまして(・・・・・)

 険しい顔は消えているが、妹を窘める顔は怒れる兄の顔だった。しかし、当の妹はそれすらも嬉しいのかニコニコしている。
 自己紹介をした俺だったが、エルクースは俺の顔を正面から覗くと途端に驚いた顔になった。

「ロッ、ロベール様!?」
「お兄ちゃん、声大きい! ロンくんと似ている貴族様が居るけど、違うんだよ! ほら、ロンくんからも言って! 違うって言って!」
「いや、でも、この方は……」
「だから、違うって!」

 あの時の事がよっぽどトラウマだったのか、ルティスは青ざめた顔をして兄の間違えを必死で訂正しようとしている。
 髪の色を変えただけなので、見る人が見なくても分かると思うのだが、ルティスの必死な訴えにエルクースは驚きを隠せぬ様子で頷くだけだった。

「あっ、あぁ……なら、そういう事か……」

 自分でも何を言っているのか分からない言葉を呟きながらルティスの言った事に頷くと、ルティスは安心したように自らも頷いた。

()の顔に良く似た貴族様が居るらしいけど、会った事がないからどれだけ似てるのか分かんないや」
「会わなくて良いよ! 貴族様と関わってもろくな事が無いよ!」
「あぁ、分かった。分かったから」

 必死で訴えるルティスに、これ以上貴族の話をしない方が良いだろうと見切りをつけた。
 その後は普段通り訓練をしたが、そこにエルクースも混ざったのでかなり実践的な内容になった。

 殿(しんがり)を務めるだけではなく、敗走している仲間を集めて追撃に来た敵を返り討ちにするような奴なのでどんな訓練法がと思ったが内容は至って普通だった。
 とにかく基本に忠実に体を動かし奇をてらった事はやらない。人から又聞きとその殿の事を遠まわしで当時の事を聞いたが、本人は特に気にした様子もなくやらなければいけなかったからと軽く応えた。やっぱりおかしいわ。



 カグツチ国が自称(・・)建国されて半年が経った。入植者たちも初めの内は色々と戸惑う事が多かったようだが、今は問題なく過ごせていると思う。
 特に途中から懸念材料となった食料の調達だが、マシューから暫定的出張扱いで猟師を呼び、その猟師を教師として食料調達部隊に指導をしてもらったので今は問題なく獣肉が安定して供給されている。

 この暫定的出張と言うのは、個人の希望によりカグツチ国に完全移住すると言う物だ。特に腕の良い猟師は教師として、また食料の安定供給の為に一番必要とされているジョブだったからだ。
 しかし、そのせいでマシューの猟師が減っては本末転倒なので、減り過ぎないくらいの人数を個人の希望とすり合わせる事でカグツチ国の住民として受け入れた。

 ただし、漁師の方は普段から流れの無い湖で魚を獲っているため、流れのある川ではかってが違うらしく色の良い返事は貰えなかった。なので、漁に関しては当分の間、俺が作った罠で何とかしのごうと思う。

 またこの半年で大きく変わった事は、畑作りが予想以上に進んでいる事だ。
 マシューの住民も働き者だが、そこはただの農民だ。軍隊に所属しており、一線を退いたとは言えまだまだ現役でも通じる体力と筋力をフルで使っているので、森から腐葉土や粘土質の土を荷車でギリギリ運べる量を積み込み、かなりの速度で持ち帰り、これまた素早く畑に撒いては漉き込んで森に腐葉土と土を取に行くと言う規律のとれた働きで面白いように畑は作り上げられた。

 また亜人の農奴に至っては持久力があるので、夜明け前から日が沈んで少しするまで砕土と漉き込みを繰り返し、こちらも元兵士に負けない働きっぷりである。
 そんなカグツチ国だが、問題が起こった。新しくできた国で、しかもそれなりに荒っぽい人の集まりの元兵士達と、差別の対象である亜人達なので問題が起こる事は想定内だった。

 ただ、その問題と言うのが一応(・・)は気にしていたのだが、まさか起きるとは思わなかった問題だったので困った。
 しかも、問題が発生した側のリーダーからの報告ではなく、マシューから堆肥などの作り方・使い方を指導する為に呼んだ農業技術者から報告されて初めて気づいたのだ。

 そう、男性同性愛者(ゲイ)が発生したのだ。

 元兵士のほぼ全ては独身寮で生活しており、皇都やその周辺に家族を残してきている者はその限りではないが、(くに)に彼女やそれに準ずる人が居ない一部の独身者がゲイに走ったのだ。

 江戸の町では男女比が凄まじい事になっており、それにより男色が盛んだったそうだがまさか自分が自治する国でそんな事が起こるとは、予想していたが実際発生すると言葉に言い表せなかった。

 男女ともに良い感じの人数の()り軍隊の出でないマシュー出身者にとってゲイとは理解できない存在であり、また光燐(ハロウ)教の聖書にも『同性愛に未来は無い』と言う表記がしてあり疎まれる存在だからだ。

 ただこの聖書の内容は「同性愛じゃ子供が生まれないから、そんな事やってたら国が滅ぶよ。だから滅ぶ前に止めさせなよ」と言う意味だそうで、全面的に否定はしていない――と言う()をとっているのだそうだ。

 一応、倫理に反しない限り多様性は認めたいと思っていたが、このゲイを認める様な発言をした瞬間、マシュー出身者に「あっ、そちら側の方でしたか」みたいな顔をされたので動かざるを得なくなった。全くもって面倒くさい。認めようぜ、多様性を。

「えぇ、そうですね……確かに、そう言った者も中には居ますが、全員が全員そういう者ではありません」
「当たり前だ。俺はこの国に神聖隊(ヒエロス・ロコス)を作りたいわけじゃない。良い国を作りたいんだ。それで、一体どれだけの数がゲイなんだよ?」
「今のところ、51組居ます……」
「…………」

 帝国から送り込まれた元兵士の大部分じゃねぇか……。こりゃ、帝国軍で持て余した……いや、見栄えが悪いからと体の良い厄介払いで(うち)に送り込んだな。
 まだ良かったと言えるのが、片方が無理強いされて女役をしている訳ではなく、互いに好き合っているそうだ。後で個人面談しなければいけないが。

 だが、それに伴い心配事は他にも出てきた。ゲイは良いとして他の独身者や単身赴任者が犯罪に走らないかということだ。
 亜人家族には人・亜人問わず女性が居るので危険ではないかと思ったが、そこは元兵士側のリーダーのキヤナが安全だと確約してくれた。

 その確約内容と言うのが、カグツチ国の住民を強姦した場合は手足の先から斧で細切れにしていくと言う死刑方法を取ると言う事らしい。この内容は元兵士全員が知っており、またキヤナのベッドの枕元にはそれ用の小型の斧(トマホーク)が飾られていた。一応安心して良いだろう。

「とりあえず、同性愛については個人の自由だからとやかくは言わないでおく」
「ありがとうございます」

 本人(キヤナ)はゲイじゃないのにゲイの仲間が居るせいでゲイ側に立って頭を下げなければいけない不運な立ち回りだが、元々隊を率いる立場に居た為か静かに下知を待つ姿は様になっていた。
 どちらかと言えば犯罪者の如く煙たがられる存在なので、俺の後ろ向きな認知はキヤナにとって青天の霹靂だっただろう。

「だがしかし! 多様性は認めるが、それに伴い大手を振って世間様にお披露目して良いと言う訳ではないので、他の者が不快に思わないように付き合っていくよう周知しておけ。あと、()仲間を呼び込むのは絶対に禁止だ。呼び込んだ者は、先にお前が言った死刑を適用すると言っておけ」

 さすがにこうでもしないと、カグツチ国が本当に国として自立する前に色々な所から異端認定されかねん。それは絶対に回避したい。

「分かりました。ロベール様の温情あっての者たちです。必ず守るように周知させます」

 深々とキヤナは頭を下げて感謝の意を表した。

「とりあえず、外で聞き耳を立てている馬鹿どもを何とかして来い。自分達の事を話されていて気になるのは分かるが、仕事をサボっていい理由にはならんし、なにより上の人間同士の会話を盗み聞きするような奴は信用ならん」
「はい。すぐに罰してきます」

 ペコリ、と軽く頭を下げてキヤナは外へ出て行った。
 それと同時に、火山が爆発でもしたのかと思わせるほどの怒鳴り声がテント内にもビリビリと響いてきた。これで、神聖隊(ヒエロス・ロコス)共も少しは懲りるだろう。

 その日の夜は、入植半年記念としてお祭りをした。
 伴奏も無く、各々が適当な物を楽器として鳴らし、声を合わせて歌を歌い、好き勝手に踊ると言う原始的なお祭りだ。
 食糧も乏しく、普段よりは多いがお祭りにしては質素すぎる食事にも関わらず、人も亜人も楽しそうに興じている。

 元兵士達の大部分が右ほほ・左ほほを腫らしているが、それでも自分達の存在を肯定してもらえたのが嬉しかったのか晴れ晴れとした顔をしていた。
 余り嬉しくは無いが、前例のないこの世界の常識を壊せるような国を作っていきたいと考えているので、ある意味幸先の良い再スタートかもしれない。

 ちなみに、今回も酒がコップ一杯――ただし、今回は溢れるギリギリまで入っている――の酒があるが、これはマフェスト商会の船で運んできた物だ。
 海からこのカグツチ国まで問題なく遡上で来た証拠だ。これから、物資輸送に関しては大分楽になるだろう。
ルティス=クリント幼少訓練場でのロン(ロベール)の先輩。一つ年下だけど、体格が良いのでロベールの方が年下にみられる。
エルクース=カタン砦で臨時大将をしていた兵士。
キヤナ=カグツチ国入植者の人間側のリーダー。(くに)に妻子を残して入植している。

4月19日 差別用語があったため、一部表記を変更しました。
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