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手紙 作者:Pー龍
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無茶ぶり

「陽夏ちゃん、詠子から手紙を預かっていたのよ。」
 ママの葬儀の日、家に帰ってきてからぼんやりとしていた私におばあちゃんは手紙を渡してくれました。

 それはママから私に宛てた最後の手紙でした。


 陽夏へ

 陽夏がこの手紙を呼んでいる頃、ママはもういません。できれば陽夏が大人になって素敵な男の人と巡り会って家庭を持つようになり、可愛い孫の顔を見るときまでは生きていたかったけれど、ママの身体はもうダメなんだそうです。死んだあとママの魂がいったいどうなるのか、これはわからないのだけれど神様にお願いして拝み倒して陽夏の成長していく姿を見守ることができるようにしてもらうつもり。だからこれからもずっとママは陽夏のことを見ているわ。

 陽夏はカメラマンになるつもりみたいだけれど、いつか挫折するようなことがあるかもしれません。カメラマンだけが陽夏の道では無いのよ。他にも陽夏の進む道はいっぱいあるはず。高校生活で他の道が見つかるかもしれない。ママは陽夏がどの道を選んだとしても陽夏のことを応援していることを覚えておいてね。

 陽夏は、中学校の入学式で私が胸に付けていたブローチのこと、覚えているかしら? あのブローチがママのアクセサリーケースの中にあります。あれだけは陽夏が持っていてくれないかな。他のモノは誰かにあげたり、売り飛ばしても構わないわ。

 お金は保険も含めればどうにか陽夏が大学(国立にしてね)へ進学しても暮らしていけるぐらいあると思うの。母さんと竪くんに任せてあるから、よく話し合ってね。贅沢がしたくなったら、竪くんにお願いしてみてね。私の残すお金で贅沢はムリだよ。

 陽夏、高校合格おめでとう。もしかするとまだ試験受けてないかもしれないけれど、竪くんによれば合格は間違いないようだから、言わせてね。大学合格のお祝いはまだ早すぎるかしら? その時が来たら陽夏に声が届くように頑張ってみるわね。

 私は幸せ者だと思うわ。この年になって大好きな人と結婚できたし、娘は私の仕事を継いでくれようとしている。でも、ひとつだけ心残りがあるとすれば、ケンカがしたかったかな。竪くんと陽夏とママの3人で家族の喧嘩をしてみたかったな。陽夏、竪くんと家族喧嘩をしてみてくれないかな。ママの最後のお願いだよ。よろしくね。


・・・・・・

 ママったら最後に無茶ぶりしてくれやがって。
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