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手紙 作者:Pー龍
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だいたい4年前

 私が学校に行かないと決めた理由はなんだったんでしょう? 
 たまに聞かれるんですけど、よくは覚えていません。
 中学の入学式にはママと一緒に行きました。おめかししたママが真っ赤な薔薇の花の形をしたブローチをつけていたのが、なんとなく印象に残っています。
 入学式ではわけもわからず引き回され、人の列に付いて歩いていたことだけ覚えています。ペンギンになった気分でした。
 帰宅してからは、ママとゲームをしたり、ホラー映画を見たり、一緒に掃除したり、料理をしたりして、週末を楽しく過ごしました。

 ママは写真家です。あちこち出掛けて行って風景写真を撮るのがママのお仕事。でも、あの頃は体調を崩していて家にいることが多かったので、少し嬉しかったのをなんとなく覚えています。

 月曜日が来てお腹が痛くなりました。
 ママは私を病院に連れて行ってくれました。学校にはママが電話を入れて、お休みすることにしました。
 痛がる私を見て盲腸とか腸捻転じゃないかって、そんなふうに思ってたみたいです。
 そんな心配をされるとだんだんと私もその気になってしまって、痛みがどんどん増していきました。とうとう手術デビューなのかなぁ、なんてうっすらと不安と期待を抱えつつ。
 精密検査を受けている間もお腹の痛みは止まりませんでした。長い時間掛けた精密検査も終わり、ようやく診察室に案内されたのはお昼過ぎ。ちょっとだけお腹すいたなぁなんて思いましたけど、痛くてそれどころじゃなかった。
 かわいいナースさんに連れられて入った診察室。そこで出会ったお医者様はカッコいい感じの女性でした。優しそうな先生だなって、そんな印象を受けました。
 先生とは、たくさんお話をしました。学校のこと、友達のこと、家庭のこと、生活のこと、趣味のこと、楽しかったこと、男の子のこと、音楽のこと、マンガのこと。

 残念なことに私に病名は付きませんでした。お医者様いわく、心因性の痛みなんだって。
 病院を出るころにはお腹もすっかり痛くなくなり、我ながら『なるほど、心因性なのか』と納得したものです。

 病院からの帰り道に見つけた、おしゃれなイタリアンレストラン。ママと一緒に昼食をとりました。私はアンチョビピザを頼んで、ママはカルボナーラ。とても美味しかったから写真を撮って、ママとお皿を交換して、ママはワインが飲みたいようだったけど車で来ていたので諦めてくれました。


 それがママと2人で外食をした最後のランチになってしまいました。
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