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ゴーレムと従魔

 サイクロプスの巨体をいとも簡単に吹き飛ばしたそれはゆっくりと動き出した。

 俺はすぐに【鑑定】を発動させ相手を調べる。



[ゴーレム lv2400


生命力 890,000/890,000

魔力 100,000/100,000


 ◆ユニークスキル


[金剛化lv10]


 ◆エクストラスキル


[鉱物操作 lv10]

[状態異常無効]

[精神攻撃無効]


 ◆固有スキル


[岩石化]

[再生 lv7]

]



「なっ……」


 俺は思わず驚きの声を上げてしまう。それもそうだろう。こいつはいままで戦ってきた相手の中で一番強い。今の俺の力じゃイエローサイクロプスさえ倒せないのだ。そんなサイクロプス傷一つ付けられない相手を俺が倒せる道理が無い。


(どうする?このまま逃げるか? あっちに注意が向いているうちに全力で逃げればもしかすると逃げられるんじゃ……)


 俺は一秒にも満たない間で思考をまとめると全力でここから離れようとする。

 それとほぼ同時にイエローサイクロプスが連続で雷を打ち込む。先程までは分からなかったが、その姿はどこか怯えているようにも見える。


 しかし虚しくもゴーレムには傷一つ付かない。ゴーレムは魔法をその体で受け止めつつサイクロプスに近づいていく。


「ガアアアアアアアアアアアアアッ!」


 最後は自身に雷を纏わせた捨て身の攻撃をするが、どこからともなく生えてきた一本の腕で簡単に受け止められ、その体に押しつぶされて絶命した。


「………………」


 俺はあまりにショッキングな光景に立ち止まって呆然としていた。


 今の俺はゴーレム達から600mは離れている。その上で【遠見】スキルで見ていたのだ。だから【遠見】スキルを持たないゴーレムからは簡単には見えないはずだ。


 ――それのはずなのに、ゴーレムはこちらに目と思われる窪みを向けてきた。


「っ!? 気付かれたか!」


 俺はすぐに離れようとしたがゴーレムはこちらを一瞥するとすぐに別の方向に視線を向けて全く違う方向に歩いて行った。


 俺はゴーレムが去って行ったのをみると近くにあった岩――妖岩だったが――にへたり込んでしまった。


「くっそ……なんだあのチートは? 正直俺もかなりのチートだという自覚はあったけどあいつはそれを余裕で上回ってるぞ」


 あいつを一言で表現するならまさしく「チート」の一言だろう。それほどまでに圧倒的だった。ソードオーガの変異種の時のようにこの作戦がうまくいかなかったらやられる。みたいな次元では無い。何をしてもどうあがいても確実に殺されると思わされるような力量差。


 俺はそんな理不尽の塊を思い出すと溜息をついた。それにしても前の層と比べて難易度が高くなりすぎてないか? もっとゲームバランスというものを考えてほしい。


 俺は居るのかも分からない迷宮の製作者に心の中で文句を言うと【索敵】で辺りを確認する。


「あれ? あのゴーレムをのぞいたら妖岩しかいねえぞ? どうなってんだ?」


【索敵】のレベルが上がったおかげかなんとなくなら魔物の種類も判別できるようになった。しかし周りは俺の下に居る魔力反応と同じ、つまりは妖岩しか存在しない。


 まあ分からない事を考えてもしょうがないので次への階段を探すように気持ちを切り替える。

すると階段は先程ゴーレムが向かっていった方向にある事が分かった。しかも少しずつゴーレムが階段の方に近づいて行っているせいで迂闊に近づく事が出来ない。


 仕方がないのでゴーレムがどくまで周りを探索する。するとここからかなり離れたところに妖岩とは別の魔力反応が存在する事に気付いた。


「この層の魔物の強さもちゃんと把握できてないしそっちに行った方がいいか」


 さすがにあのイエローサイクロプスレベルの魔物が徘徊しているような難易度が続くようなら対策を考えなくてはならないだろう。


 俺は念のためにもう一度ゴーレムがこちらに向かってきていないかを確認するとその魔力反応の方に向かった。



 魔力反応があった所にいたのは先ほどと同じような巨人5体。しかし肌の色は違う上に大きさも先ほどのサイクロプスと比べるとふた回りほど小さい。


[レッドサイクロプス lv200

生命力 30,000/30,000

魔力 15,000/15,000


 ◆スキル

[火魔法 lv6]

[遠見 lv3]

[剛腕 lv5]

[夜目 lv4]


 ◆固有スキル

[火炎耐性 lv6]


]


 確かに強いが先ほどのイエローサイクロプスと比べると見劣りする。他のサイクロプスも全員レッドサイクロプスで同じような強さだった。

 相手の強さが分かると気付かれないうちに魔法を唱える。


「『水刃(ウォーターカッター)』」


 この世界に来てから何度もお世話になっている水刃をはじめとした初級魔法まではほとんど詠唱破棄で発動させるまでに至った。


 俺が放った無数の刃がレッドサイクロプスの内の一体を捉えて集中攻撃をする。


 サイクロプスは少しよろめいたがすぐに体勢を立て直すとこちらを睨みつけてくる。

 さらに俺に気付いた周りのサイクロプスが俺を襲おうとするが俺は『土壁(アースウォール)』で行く手を阻む。


 そのまま俺は後ろに下がり次の魔法を詠唱する。


「地に眠りし炎よ 全てを灰燼と化せ 『大爆炎(メガエクスプローション)』」


 五体の中心から出てきた魔法はサイクロプスを巻き込み爆発する。


「まだだ。 全てをなぎ払え 『竜巻(トルネード)』!」


 詠唱が完了した途端に現れた竜巻は炎を巻き込みながらどんどん巨大化していく。威力が予想以上に強かったので俺まで巻き込まれそうになったが何とか回避して逃げる。


 数十秒後、風が収まるとそこには瀕死状態のサイクロプスが一体とドロップ品と思われる角と魔石が散乱していた。


 俺は近くまで行ってサイクロプスにとどめを刺そうとして――やめた。


「もしかしてこいつって使役できたりするのか?」


 完全に思いつきたがこれから先、イエローサイクロプスのような化け物が出てきたら一人ではきついだろう。ゴーレムの方に至っては何人いてもかなわないだろうからひとまず考えないとして、これから先一人では厳しい時が来るだろう。そのためにもここで仲間を確保しておきたい。


「でもよく考えたら【使役】スキルって今までに使ったことないよな……スライムの時は核をゼリーに放り込んだだけだし」


 そう言えばスライムは今頃どうしてるのだろう。意識を向ければ従魔との絆がなんとなくだが感じられるのでおそらく未だに使役状態なのだろう。言いつけどおり小屋にずっといて飢え死してなければいいのだが……


 それはともかく問題は【使役】を使った事が無いということだ。つまりどうやればいいのかがよくわからない。

 取りあえずサイクロプスに触れてスキルが発動するイメージをしてみる。


「とりゃっ! 【使役】!」


 何とも間の抜けた掛け声だったが言った瞬間に自分の腕からサイクロプスに向かって何かが流れて行くのが感じ取れた。


 成功したのかと思うと今度はサイクロプスから自分の方に何かが流れ込んでくる感覚がした。その後自分とサイクロプスの間の「何か」がつながって一本の線のようになるのが分かった。


 俺はすぐに【鑑定】を発動させる。


[レッドサイクロプス lv200 (使役)

生命力 85/30,000

魔力 9,000/15,000


 ◆スキル

[火魔法 lv6]

[遠見 lv3]

[剛腕 lv5]

[夜目 lv4]


 ◆固有スキル

[火炎耐性 lv6]


]


 どうやら成功したようだ。俺は鑑定結果をすぐに消すと回復魔法をかける。


「命の鼓動よ 汝に再び生を与えん 『メガヒール』」


 俺が唱えたのは『ハイヒール』の上位魔法の『メガヒール』。確か聖霊級の回復魔法だったはずだ。

 俺が魔法を唱えると傷が良くなったのかサイクロプスが起き上がり俺に首を垂れる。どうやらしっかりと俺の事を主だと分かっているらしい。


 もう一度『メガヒール』を唱えて体力を回復させてやると【索敵】で階段の方角に集中して様子を探る。

どうやらゴーレムはそのままどこかに行ってしまったようだ。使役されてない魔物はダンジョンの階段を行き来する事は出来ないので階段を下ったというのも考えにくい。


 俺は安全が確保された事を確認するとサイクロプスを連れて階段がある方に歩いて行った。



「そう言えば【強欲の芽】の効果って触っても発動できるんだっけ?」


 俺は歩きながらふと思い出した。確か【強欲の芽レベル2】の効果には倒すだけでなく目を合わせるかボディータッチをするかでもスキルを奪えると書いてあったはずだ。


 俺は早速試そうと辺りを見回す。が、魔物は横に連れているサイクロプスだけだ。

 俺もさすがに味方からスキルを奪うような鬼畜では無いので自重したが代わりに丁度いいものを見つけた。


[妖岩 lv98

【生命力】30,000/30,000

【魔力】300/300


 ◆エクストラスキル


[金剛化lv9]


 ◆固有スキル


[岩石化]


]



この辺りにはなぜか妖岩がごろごろとしている。こいつを実験台にすればいいだろう。


 俺は早速妖岩に手を置いて意識を集中させる。すると妖岩の中にエネルギーの塊のようなものが漂っているのが分かる。

 それを吸い上げるイメージで自分の体に持っていく。するとゆっくりと自分の中に何かが入ってくるのが分かる。


 暫く吸い続けて20分ほど経っただろうか。妖岩の中にあったエネルギーが全て自分の中に行こうしたのが感じられるとすぐに自分のステータスを確認する。

 ◆スキル


[火魔法 lv8](1↑)


 ◆エクストラスキル


[金剛化lv9](NEW!)


 ◆固有スキル


[岩石化](NEW!)



 どうやら取得できたようだ。ついでに変動した部分のみ表示されるようにする事も出来た。【鑑定】さんマジ便利。


「でも20分は長いな……まあ20分でレベル9のスキルを手に入れられるってだけでも十分すごいか」


 チートを持つと随分と贅沢な悩みが出来てしまうな。余り調子に乗らないように気をつけよう。


 俺はステータスを確認し終わると最後に【剛腕】【金剛化】『身体強化』の三段重ねを施したパンチを食らわせる。昔は傷一つ付かなかったが今の俺はあの時とは比べ物にならないくらい強くなっているし相手の【金剛化】も奪っている。おかげで妖岩は一撃で砕け散った。


 砕け散った後光の粒子になっていく妖岩を満足げに見る俺。後に残ったのは丸い石だけ。魔石かと思ったが違うようだ。俺は【鑑定】を発動させる。


[石

 妖岩からドロップする唯一の品。モース硬度5]


「ただの石かいっ!」


 思わず突っ込んでしまった。これじゃあドロップする前の妖岩のが硬いじゃねか。


 俺は手に持った石を思いっきり投げる。この時トンデモステータスのせいで時速400kmは出ているのだが俺は気付かない。

 石はそのまま近くの妖岩にぶつかって砕けた。その様子を見届けると俺は階段の方に向かって再び足を進める。


 その間このサイクロプスはずっと俺を見ていた。これがあのスライムだったら暇に耐えきれず俺の頭にでも乗ってきたのだろう。


 俺は階段を見つけるとそんな事を思いながら階段を下って行った。


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