芋虫と巨人
0時に投稿するつもりが遅れてしまいました。
急に気持ち悪くなって寝込んだのが悪い。そしてその原因を作ったじゃがバター売りのおっさんが悪い。もっというと執筆をすっぽかして一緒に行く人も居ないのに祭りに行った俺が悪い。
つまり悪いの俺じゃん。
砂漠の真ん中に1mほどの奇妙な形をしたネズミが獲物を襲って走る。
追いかけられているのは人型の何か。驚くほどの速さで逃げて行くがそれでも少しずつネズミに距離を詰められていく。
やがて逃げられなくなった人影はネズミに跳びかかられて頭を食いちぎられてしまう。
ネズミが獲物をしとめて満足したような仕草を見せた瞬間、周りの土が落とし穴にでもなったかのように下に落ちる。
ネズミも慌てて逃げようとするが逃れられずに落下していく。逃れられないと分かってネズミはすぐに着地姿勢に入ろうと下を見る。すると穴の下にいたのは……先程の人型の何かと同じくらいの大きさの青年――つまり俺が立っていた。
俺に脅威を感じたのかネズミはすぐに離脱しようとするがそんな隙を逃すわけもなくネズミは様々な角度から現れた10本の槍に脳を貫かれて絶命した。
あれから二週間がたった気がする。
気がするというのもダンジョンの中は常に真っ暗か常に日が出ているかの二択で全く時間の感覚がなくなるからだ。なので下に落ちてから寝た回数を数えて今日で16日目だ。
あの部屋でレベルアップしてからはステータスが上がったおかげもあってかサクサクと攻略が進み落ちた場所から数えて40層まで下に来る事が出来た。
そんなわけで今は砂漠に居る。水は魔法で出せるのでそれ程困らないがとにかく太陽が輝いていて辛い。更に気を付けていないと足元から芋虫が飛び出てくるので常に【索敵】を使っている必要がある。とにかくこのエリアから抜け出したい。
実を言うとこの前の階層も砂漠のエリアでやっとの思いで見つけたと思った階段を抜けたらまた砂漠。軽いトラウマになりそうだった。
先程から何回か使っている【魔力感知】と『劣化索敵』をもう一度発動させる。すると感知範囲に特殊な魔力反応があるのを見つけた。階段だ。
俺は満面の笑顔になる。距離は此処から500m、今の俺なら全力で走れば1分もかからずに到達できる距離だ。
俺は救いを求めて階段へ走る。が、完全に油断していた。半分ほど進んだ瞬間に足元に大きな穴が開いた。
「うおっ!? やっべぇ! 大いなる砂よ 我の橋となれ 『サンドアーチ』!」
穴に落ちる寸前で魔法を唱えると遠く穴のそばにあった砂が固まって橋を作る。そのまま全力で跳躍して下を見ると巨大な芋虫の姿があった。
[サンドワーム lv150
生命力 2800/2800
魔力 900/900
◆スキル
[土魔法 lv6]
[溶解液 lv5]
]
これが先程話した芋虫だ。別に出てきてほしくはなかった。この程度ならさほど苦戦することもなく倒せるのだがこいつを切るとびっくりするぐらい大量の汁が飛び散るし魔法で倒すにはこいつの魔法への耐性が高すぎてめんどくさい。正直戦いたくない相手だ。
どうせ魔物は階段の移動を出来ないのでそのまま全力で階段に飛び込む。そのまま階段を下りると今度は真っ暗な洞窟が見えてきた。
降りたらまた砂漠、なんてことにならずにひとまずほっとする。【索敵】にも反応が無い事を確認して穴を掘って一息着く。どっと疲れと眠気が襲ってきた事からしておそらく上二層の攻略で丸一日消費してしまっていたのだろう。本当に時間の感覚が分からなくなってしまう。
俺はアイテムポーチから食料を取り出して夕食の準備をする。ついでに俺のステータスを見せておこう、じゃん。
【名前】 セイイチ・キサラギ 17歳
【性別】男
【種族】人族
【レベル】5 (4↑)
【生命力】1700
【魔力】 1800
【筋力】 1800
【防御】2000
【持久力】1400
【敏捷】 1500
【魔攻撃】1750
【魔防御】1500
【運】300
◆スキル
※鑑定系スキル
[鑑定 lv9](2↑)
[看破 lv6]
※隠蔽系スキル
[偽装 lv7]
[隠密 lv4](NEW!)
※戦闘系スキル
[剣術 lv8]
[短剣術 lv8](1↑)
[剛腕 lv8](2↑)
[豪脚 lv7](1↑)
[跳躍 lv4](NEW!)
[威圧 lv7](2↑)
[咆哮 lv3]
[溶解液 lv6](NEW!)
※魔法スキル
[魔力操作 lv8]
[水魔法 lv9](1↑)
[土魔法 lv8](2↑)
[無魔法 lv8](2↑)
[風魔法 lv7](1↑)
[火魔法 lv7](2↑)
[光魔法 lv6]
[闇魔法 lv6](NEW!)
[結界魔法 lv3](NEW!)
[回復魔法 lv8](1↑)
※索敵系スキル
[夜目lv7](1↑)
[遠見 lv6](NEW!)
[索敵 lv8](2↑)
[魔力感知 lv6](3↑)
※生産系スキル
[魔石加工 lv7](2↑)
[料理 lv4](NEW!)
[裁縫 lv3](NEW!)
[錬金 lv2](NEW!)
※その他
[使役 lv6](2↑)
[思考分割 lv6](4↑)
◆エクストラスキル
[強欲の芽レベル2]
◆固有スキル
[異種族間交尾]
[再生lv6](4↑)
[火炎耐性lv3](1↑)
◆称号
[異世界を渡りし者]
[前人未踏]
[強くてニューゲーム]
[下剋上]
まずはレベル。これがとにかく上がらない。本当に上がらない。【強くてニューゲーム】の効果がこれほどだとは思わなかった。その代わりにレベルアップの恩恵は本当に大きくなっているが。
それと鑑定のレベルが上がったおかげでステータス表示が若干見やすくなった。何でも前回【鑑定】した時の結果と比べて新しいスキルや上がった項目等が分かるようになった。ステータスの数値の方はまだ分かりにくいが所詮数値は目安であって知能や技術に大きく左右されるためステータスはそこまで重要視する必要はないと思う。
順番の方はスキルが多くなったので見やすくならないかと思ったら勝手に並べ替えられた。他にもレベル昇順とかいろいろ変えられるのだがこれが一番見やすいのでこれにして置く。
次に新しく手に入れたスキルだ。量が多いので簡単な説明だけしておこう。
[隠密] 隠れる事が出来る。レベルが高いほど索敵や魔力感知に引っかかりにくい。
[闇魔法] 影とか精神とかが主な魔法。フロアボスを倒したときに手に入れた。
[結界魔法] そのまま結界を張る魔法。無魔法の『マジックシールド』みたいなものから断熱結界みたいな特殊な物まで使える。が、余り使う機会が来ない。
[跳躍] もの凄いジャンプが出来る。巨大なウサギから奪い取ったもの。
[溶解液] サンドワームから手に入れたもの。一度使ってみた事があるが人間が使うとゲロとして出てくる。普通の胃液より酸が強いせいで喉に多大なダメージを受けた。今後一切使わないと誓う。
[遠見] 遠くが見える。一つ目のゴブリンみたいな魔物から奪ったところ思った以上に使えたので奪いまくってレベルを上げた。そのおかげでその階層にはスキルを持たないモンスターがたいりょうに徘徊していたりするのだが俺は決して関係ない。
[料理] 料理をしてたら取得できた。以上
[裁縫] アイテムポーチに入らない物で服を作ったりしてたら手に入れた。以上
[錬金] 木材を加工するために試行錯誤してたら手に入った。以上
大体こんな感じだ。物凄く雑な気もするが気にしたら負けなのだろう。なんたっていつもの【鑑定】さんの説明じゃなくて俺の説明なんだし。
俺は【料理】スキルの補正が入った肉を食べると毛皮を敷いて眠りに就いた。さっきまでは殺意が湧くくらいに暑かったのにこの洞窟はうすら寒い。こんなの続けてよく体を壊さなかったと感心出来るほどだ。
翌日、迷宮の探索を再開しようと【索敵】を発動させると俺の寝ている穴の周りを複数の魔力反応に囲まれている事に気付いた。
慌てて外を確認すると視界に入ったのは大量の岩だった。
「あれ? これって妖岩か? 何でこんな所に?」
少なくとも昨日まではここに無かったはずだ。こいつらがひとりでに動くとは思えないのだが……何があった?
すると遠くの方で咆哮が上がった。どうやら魔物が何者かと交戦しているようだ。
「さすがに俺以外の人間がここにいるとは思えないしダンジョン内での魔物同士の戦いか? 珍しいな」
珍しい、というのもダンジョン中の魔物は基本的に魔素から生まれるため兄弟のようなものだ。更にダンジョン生まれの動物達はダンジョン内の魔力を吸収することで生きるので自然淘汰といったものがほとんどない。そのため魔物同士の争いは基本的に起きないのだ。
例外としてダンジョン内で魔物同士の子どもが生まれた場合その魔物はダンジョン内の魔力を吸収する事が出来ないようで他の魔物を襲う事がある。しかしそれではわざわざ吠える必要が無い。ならば魔物同士の間で争いが起きたのだろう。
俺は【索敵】と【魔力感知】を使いながら先程咆哮を上げた魔物に接近する。
その場所へは5分ほどで到着した。尤も今の俺のステータスなら5分で20kmは移動できるのだが。
すると黄色い肌をした一つ目の巨人が壁に向かって激突しているのが見えた。はじめてみる魔物だったので俺はすぐに【鑑定】を発動させる。
[イエローサイクロプス lv570
生命力 47,000/75,000
魔力 23,000/30,000
◆スキル
[雷魔法 lv8]
[遠見 lv7]
[透視 lv4]
[剛腕 lv8]
[咆哮 lv7]
◆固有スキル
[魔眼]
[雷耐性 lv8]
]
[魔眼] 魔力の流れを完璧に知覚する事が出来る。
……どうやらめちゃくちゃ強いようだ。レベルだけならあの時のキメラよりも強い。今の俺ならキメラから逃げ切るくらいの自信はあるがこいつを倒せと言われたら不可能だろう。
「幸い壁の方に気を取られているようでこちらには全く気付いていないみたいだが……ん? なんかおかしくないか?」
イエローサイクロプスはかなり傷を負っている。それでもなお一心不乱に壁に体当たりを繰り返している。まるで壁が敵なのかと思うほどに攻撃を仕掛けるサイクロプスを見て疑問に思う。
「グオオオオオオオオオオオッ!」
俺が考えている間も戦闘は続いていきサイクロプスが咆哮を上げると一本の角の先端からスパークが生まれた。雷魔法だ。
「っ! 魔を防げ 『マジックシールド』!」
咄嗟に魔法を発動させて防御姿勢を取る。あのレベルの魔法を使われたら余波でふっ飛ばされるかもしれない。
サイクロプスが壁に向かって角を突き出すとそこから超高速でスパークが放たれた。
ここからでもまだ30mほど離れているというのにとてつもない風が俺を襲う。少しよろめいた。
「よく考えたら魔法の余波の風とかマジックシールドじゃ防げないよな……」
これは失敗だ。これで岩が飛んできたりしたらやばかったな。まあ普通の大きさだったら避けられるからいいんだけど、でかいのが飛んできたらハンバーグにされるところだった。
土煙も収まらないうちにサイクロプスが再び壁に向かって体当たりをしようとする。しかし壁に触れる直前。サイクロプスが吹き飛ばされた。……こちらの方向に向かって。
「はぁ!?……ってやべっ!」
俺は咄嗟に【豪脚】と【跳躍】を同時に使用してその場から離れる。【跳躍】はともかく本来物を蹴るための【豪脚】としては使い方が違うような気もするが気にしない。
すると先ほどまで俺がいた場所にサイクロプスの巨体が落ちてくる。油断してると本当に戦いの余波だけで殺されてしまいそうだ。
「それにしても何でいきなりサイクロプスが吹っ飛ばされたんだ?」
俺が【遠見】を発動させながら壁の方を観察すると壁がゆっくりと動くのが見えた。
「なっ!?」
俺が驚いているとその壁だと思われていたものが土煙の中から出てくる。そこにいたのは……
人型をした巨大な岩石の塊だった。
最近どんどん更新頻度が下がってきてつらい。
まあ、エタらなければ大丈夫でしょ!