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試験と魔法陣

 お ま た せ


 え? 待ってない?そんな悲しい事言わないでおくれよ。


 今回、書きながら大きく間が開いてしまったので物語におかしな点があるかもしれません。


 後、気付いたら1,000,000PV達成していました! 今後とも強欲の花と作者をよろしくおねがいします。

「お願いします。俺を強くしてください!」

「駄目だ」


 俺はダンさんに頭を下げるが被せるようにして即答された。


「理由を伺っても?」

「お前らはダンジョンでいろいろあった。とにかく今週はずっと休みだ」


 理由を尋ねるが短く返されこの話は終わりとばかりに素振りを始めた。だが俺もここで引き下がるわけにはいかない。


「つまりこの一週間が過ぎたら訓練をしてくれるということですか? 他の人とは別に、という意味ですが」

「来週からは普通に訓練を再開する。だがお前個人と訓練する時間は設けない。一人だけを特別扱いするわけにはいかないからな」

「でも誠一は貴方に個人的な指導を受けていたんですよね?」


 個人を相手に指導はしないと言い張るダンさんに誠一の話をする。すると素振りをしていた手を止めて再びこちらを見てきた。


「あいつは誰にも話してないと言っていたはずだが……セイイチから聞いたのか?」

「はい」


 その後、俺が誠一に聞いた事を簡単に話した。スキルの事など一部を隠して、だが。

 それを聞いたダンさんはしばらく考え込むような仕草をして、


「でも何でそれを俺に話した? お前の話を聞く限りでは俺の事はあまり詳しく話していなかったみたいだが?」


 と言ってきた。拗ねてんのか? いや違うか。


「確かに余り言ってはいませんでしたけどあなたが誠一の実力を知っている事はなんとなくわかりましたしね」

「それはやっぱり模擬戦であいつを指名した時か?」

「確かにそれもありますが一番はキメラと戦った時ですね。ダンさんはあいつの言葉を聞いてすぐに周りに避難するように伝えましたし、なんのためらいもなく誠一と共闘してましたしね」


 誠一の実力を把握していないとあんな連携は取れないでしょうしね。というとダンさんは感心したように俺を見る。


「どうやらセイイチからも話を聞いているみたいだしな……よし、特別に個人的な訓練を付けてやってもいいぞ。ただし条件がある」

「条件?」

「ここで俺と模擬戦をする。それで俺が納得いく強さだったら訓練を受けることを認めてやろう。だが俺を満足させられなかったら訓練はダメだぞ?」


 ガチムチのおっさんが満足させるとか言わないでほしい玉がキュッとなった。玉だけに(キュッ)ってか、つまらん。

 ……最近誠一に感化されてきた気がする。あいつだったら絶対に同じことを思ったはずだ。


 冗談はさておき模擬戦か……この人を納得させられる強さってどのくらいならいいんだ? 少なくとも俺が全力で行かないとOKは出ないだろう。


「はい、それで構いません。それで模擬戦をするのは今ですか?」

「いや、明日だ。時間は朝の6時、いつも誠一と訓練をするのと同じくらいの時間だ」


 ダンさんが試合の日時を指定してくる。というか誠一の奴そんなに早起きしてたのか……俺もがんばらないとな。


「分かりました。それでは今日のところはこれで失礼します」


 俺はダンさんに向かってもう一度お辞儀をすると部屋に戻る。剣の腕では到底かなわないだろうしあの人の対策を練らなくては。



「とは言ってもなんも思い浮かばねえよなぁ……」


 それから数十分ほどベッドに寝転んで考えていたが全く勝てるビジョンが思い浮かばない。勝つ必要はないんだろうがなかなかダンさんに通用しそうな技が考えつかないのだ。さすがは騎士団長、と言ったところか。


「魔法を使おうにも詠唱してる間に距離を詰められそうだしなぁ……俺は誠一と違って詠唱短縮もほとんどできないし……詠唱?」


 俺は一つの方法を思いついた。とはいっても俺は一度もやった事が無い方法だ。一晩で習得できるかどうか分からない。それでもやるしかないのだ。俺はどうしても強くなりたい。


 もしかするとそれはただの自己満足かもしれない。でも俺はこれ以上仲間を失いたくない。そのためには俺が強くなる必要がある。


「そしてもし生きてれば誠一を……いや、そもそも生きてれば助けるまでもないかもな」


 ははっ、と笑って気分を変える。あいつなら生きてればいつの間にか強くなっているはずだ。俺は強くなってあいつを助けるんじゃなくてあいつと再会するんだ。あいつなら一人で魔王を倒しに行ったりもするかもしれない。それならあいつに会うために強くなる必要があるだろう。


 柄にもなくシリアスな事を考えてしまった俺は自分の頬を叩いて気合いを入れ直すと図書館に向かった。


 図書館に着いてさっそく目当ての本を探そうとするとそこには神田さんがいた。


「あれ? 神田さん? もう鎌倉さんの方は大丈夫なの?」

「ええ、大分落ち着いたから取りあえずは大丈夫ね。あなたはこんな時間に何で図書室に?」


 俺が問いかけると神田さんが答える。ダンジョンを出てからしばらく鎌倉さんは目を覚まさず神田さんはずっとつきっきりで鎌倉さんを見ていたそうだ。

 鎌倉さんはダンジョンの事件の影響が一番大きかったのか二日も目を覚まさなかったのでかなり心配したが取りあえずは大丈夫なようだ。


「そうなんだ、良かった。俺はちょっと……ダンジョンについて調べに来たんだ」


 俺は少し迷った後に嘘をついた。正直に話して余り心配を掛けたくない。それでも誠一がいない今では神田さんはクラスの中でも信頼できる部類に入る。誠一が俺に話してくれたようにきっと俺一人ではできない事に直面するだろう。その時は相談する相手として考えておこうと思う。


 俺の答えを聞いた神田さんは「そう」と答えると手元の本に視線を戻した。俺は神田さんに探している本がばれないように離れた本棚に向かい本を探す。


(それにしても……ちょっと前までは赤点ぎりぎりで馬鹿やってた俺がこんな事してるなんて意外だよなぁ。こういうのは浅野とか誠一とかのポジションなのに)


 思わず笑いが零れる。もしかしたらこっちに来てから頭も良くなってんのかもな。いや、それは無いか。


「お、あったあった。これだ」


 目当ての本を見つけると机の上に置いて必死で読む。その後も訓練場と図書館を何度も往復して練習とシミュレーションを繰り返す。


 その日、俺は徹夜でダンさんの攻略方法を考えた。決してヒロイン的な意味では無い。決して。



 翌日、俺は朝早くから訓練場でダンさんと対峙をする。


「戦う覚悟は出来たか?」


 俺に向かってダンさんが問いかける。俺はそれに向かって笑顔で剣を構えながら、


「ええ、出来ましたよ。あなたの訓練を受ける覚悟がね」


 と返した。もしかしなくても後で黒歴史となり悶える羽目になる気もするが俺も寝不足でテンションがおかしくなってたりするのでしょうがないだろう。


「それでは両者開始位置についてください…………準備はいいですか?」


 同じ時間に訓練をしていた兵士が審判を務めてくれる事になった。俺達は開始の位置について剣を構えると睨みあう。ちなみに二人とも訓練用に使う同じ木剣だ、さすがに真剣を使う訳にもいかないからな。


「それでは用意……始め!」


 開始を宣言するとともに兵士が後ろに下がる。それとほぼ同時にダンさんが一気に距離を詰めて剣をふるってきた。


 俺はダンさんの剣を防ぐとその勢いを殺すために後ろに跳ぶ。それでもなお手がしびれる重い一撃だった。

 だが向こうも本気では無いらしく今度はお前の番だというように剣を構えて俺の様子を見てきた。


「ふっ!」


 俺はダンさんに一気に切りかかる。だがそれも簡単にさばかれて太い腕で殴られる。

 俺はぎりぎりで受け身を取るとそのまま後ろに下がり魔法の詠唱をする。


「我が魔力よ 水の波動を――」

「長々と詠唱をしている時間は無いぞ!」


 だが俺の詠唱は間合いを一瞬で詰めてきたダンさんによって妨害される。俺もそれは予想していたのでぎりぎり対応できた。


「ほう、まあまあだな。だがその程度じゃ及第点はやれんぞ?」

「分かってます……よっ!」


 一気に力を入れ木刀を弾くが一歩下がるのが限界だった。その後はダンさんが連続で攻撃を仕掛けてくる。手加減をしているのかぎりぎりでさばけているがこのままだと負けてしまうだろう。俺は剣を防ぎながら詠唱を始める。


「我が魔力よ 火の威を用いて――」

「この距離で詠唱をしたら剣の方がおろそかに――っ!」


 俺が詠唱を始めると攻撃を重くしてきたがすぐに後ろに下がった。すると次の瞬間先程までダンさんが居た所に火の玉が数個生成されて後ろに下がったダンさんを追いかける。ダンさんが全て剣で撃ち落とすと同時に審判から声がかかった。


「そこまで! 両者引き分けです」


 その言葉を聞いて俺達は同時に構えをとく。俺はそのまま力が抜けて地面にへたり込んでしまった。というか何でこのタイミングで引き分け? 時間制限でも合ったのなら俺は聞いていないぞ?


「良くやったダイチ。最後のは魔法陣魔法か? あれは普通の兵士だったら二、三発は食らっていたな、合格だ」


 ダンさんは俺に称賛の言葉を送る。どうやら合格したようだ。


「合格条件は俺の強さにある程度耐えられるか審判を納得させられるような一撃を放つ事だったんだが……最後の魔法を使うのがもっと遅かったらお前は不合格になってたかもな!」


 ガッハッハと笑うダンさん。それは笑いごとじゃないと思う。


 俺が最後に使った魔法は魔法陣魔法、その名の通り魔法陣を使用して発動させる魔法だ。


 この魔法は使いきりの上に詠唱で普通に魔法を使う時の3倍近くの魔力を消費する。その代わりに事前に紙に魔法陣を書いておけば詠唱をせずに魔法を発動させる事が出来る優れ物だ。


 残念ながら強力な魔法になるほど魔法陣の模様が複雑になるために上級以上の魔法陣はほとんど存在せず。1ミリでもずれると効力が失われてしまうため主流な方法では無いのだが。


「まあ何はともあれ合格だ! さっそく訓練を始めるぞ! まずは素振り! その後 訓練場を10周したらまた俺と模擬戦だ!」

「え!? ちょ、俺徹夜の上に戦ったばっかりで疲れてるんですけど!?」

「つべこべ言うな! 素振り、走りこみの後に模擬戦なんて普通だろう! 素振りの手を止めたら襲い掛かるから覚悟しとけ!」

「ええええええええええええええええええええ!?」


 その後は死ぬ気で素振りをして死ぬ気で走ってダンさんにボコボコにされてようやく訓練が終わった。


「これって俺が誠一に追いつく前に死ぬんじゃねえの?」


 肩で息をしながら訓練場のど真ん中で呟いた俺の言葉は風に乗ってどこかへ飛んで行った。


 今回で大地編は終了です。次回からは誠一視点に戻ります。

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