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勇者と噂

 更新が遅れて申し訳ありませんでした。代わりと言う訳では無いですが、二話同時更新となっております、こちらは二話目なので話数に注意。尤も、どちらから読んでもあまり変わりませんが。


 こちらはイケメン勇者こと浅野亮くん視点

「アレが勇者様か! やっぱかっけー!」

「あのお方が勇者様……ああ、ありがたやありがたや……」


 街の人々の色々な視線を浴びながら俺達は街の門をくぐる。どうにもこの感覚にはなれないな……


 ノスティア王国を出発して今日で五日目。俺達は南を目指しながら色々な地域を訪れ、人々の心を安心させる為にこうして姿を見せたり、魔王の影響で活性化している魔物の討伐に手を貸したりしている。


 王国からもらった立派な剣に、王国の紋章が入った勇者の存在を示す豪華なマント。一見すると国の騎士のようにも見えるが、それにしては統一性に欠けた馬車に乗った男女が17人。そんな姿を見れば大抵の人が気付くだろう。


 ――彼らが勇者である、と。


 俺達勇者は最強の人間であって、唯一魔王に太刀打ちできる存在だ。その効果は大きい。


 特に、教会に行くと俺達全員の食事と寝床を提供してくれたりもする。そんなにされては逆に悪い気もするが、「神より選ばれし勇者様には当然のことでございます」なんて毎回言われてしまう。その上、下手な宿よりもずっと安全で快適な教会は魅力的で、特に女子からの賛成が多い事もあり、結局お世話になっていた。


 そんなこんなでこの五日間。流石に王城の生活には劣るものの、十分すぎるくらい快適な旅をしていた。


「なあ浅野。次の街は後どれくらいだ?」


 御者台に乗っているクラスメイト、三笠(みかさ)智哉(ともや)が俺に向かって聞いてきた。


「えっと……さっきの街を出てからもう二時間経ったから……あと二時間くらいだな」


 俺は王国にもらった地図を見ながら言う。さすがに日本の地図ほど正確なわけではないが、商人等も利用しているこの地図は、街や村どうしの距離は結構正確に書かれている。


「まだまだだな……っと、そろそろ交代の時間か。浅野、頼む」

 三笠はそう言うと御者台を空けて器用に俺に手綱を渡してくる。俺はそれ受け取り御者台に座った。


 王国からもらった馬車は三つ。六人、六人、六人に分かれ、それぞれ馬車の運転をできる人が二人ずつ乗って交代で御者を務めている。基本的には御者一人、警戒と護衛が二人、残りの人が休憩と言うサイクルで回している。


「最初は三人しか御者がいなくてどうなる事かと思ったけど、なんとかなって良かったよ」


 王国からも御者を出すと言ってくれたのだが、それは悪いと辞退したため、皆で馬車の練習をしていたのだ。その代わりに、何か困った事があれば聞けるようにと、ベテランの騎士を一人付けてもらったのだが。


 時々戦闘音も聞こえてくるが、街道沿いではせいぜいスライムかゴブリン程度しか出てこない。今回選んだ17人は戦闘がメインでない人を含め、全員がオーク程度なら一対一で倒せるステータスを持っているし、何かあれば俺が出るので問題ないだろう。


「ステータスと言えば、称号を手にいれてからやたら上がったよな……」


 俺がある日【勇者】という称号を手に入れてから、ステータスがすごい勢いで跳ねあがったのだ。俺は称号の効果を思い出す。


[勇者] 勇者としての素質を持つ者に贈られる称号。

 取得時に運を含めた全ステータスが最大五割上昇する。上昇幅は所有者のいままでのステータスによって上下する。

 レベルが上がりやすくなり、レベルアップ時のステータスに大幅な補正がかかる。また、スキルのレベルが上がりやすくなる。

 また、【勇者】スキルが獲得可能になる。


 要するに、他の人と同じように訓練をしていても、俺だけステータスの伸びが異常なまでに大きいと言う事だ。


 もちろん、人には分野によって得手不得手や才能と言った物があるので熟練度に多少の差は出てくるのだが、この称号がある限りは俺が余程訓練を怠らない限り誰かに成長の面で負けると言う事はあり得ない。


 この称号を手に入れてからは王国やクラスの皆には持て囃されるようになったが、俺としてはなんだかずるをしている気分になってしまう。


 特に、スキルの面では俺にも勝っていて、互角に戦えそうだった野本には悪い事をした。このスキルを手に入れてから大きく差がついてしまった為、あいつに少なからず罪悪感があるのも事実だ。


「まあ、その力のお蔭で皆を守れるってのも事実なんだけどな」


 むしろ、皆を守る為にはまだ力が足りないとも感じているし、罪悪感があるからと言って訓練に手を抜く理由にはならない。もう二度とダンジョンで起こったような事は――如月と同じような目に遭う人は出したくない。そのためにはもっと強くならないと……


 俺が気持ちを切り替えようとしていると、馬車の中から声が聞こえた。


「アサノ様。前方にゴブリンが数体ほど確認できます。このままですと接触しますが、いかがなされますか?」


 御者台に顔を出しつつ、俺に問いかけてくる綺麗な金髪を伸ばした女性。彼女が王国が付けてくれた騎士、アリスさんだ。


「そうですね……結構近いみたいですし、お願いします」


 眼を凝らせば肉眼でもゴブリンの姿が確認できる程近くに来ていたので、


「かしこまりました」


 アリスさんはそれだけ言うと馬車を飛び出してゴブリンの下に走っていく。いきなり走ってきたアリスさんにゴブリンは慌てて構えようとするも、アリスさんは腰の剣を抜くと一瞬で二体を倒す。続けてもう一体を倒し、後ろから棍棒で殴ろうとしたゴブリンに蹴りを放つと止めに剣を差し込む。


 ほんの十秒もない程の出来事だったが、見事な手際だ。クラスメイト達より実戦の経験が豊富だし、多分この18人の中では俺の次か、その次くらいには強いだろう。


剣につた血糊を払った彼女は腰に剣を戻し、馬車に戻ってくる。


「流石アリスさん、見事な手際です」


 戻ってきた彼女に俺が声をかける。


「いえ、このくらいの事は……それにアサノ様に比べれば私なんてまだまだです」


 彼女は照れ気味に謙遜するが、一つ一つの技がまだまだ荒削りな俺では、あそこまで手際よくは片づけられなかった。みた所返り血も身体には全くついていないし、同じステータスで戦えば俺は彼女には絶対にかなわないだろう。


 俺が思った事をそのまま伝えると、彼女は褒められ慣れていないのか顔を逸らしてしまった。

 ――そう言えば、神田さんに真正面からアリスさんをお手つきにするな、何て事を言われてしまったが、別に俺はそんな事をする気は一切ないぞ。


「べ、別にステータスを同じにする、と言うハンデがある以上は私が勝ったからと言って私が強いと言う訳ではありませんし……それはさておき、話に聞いていたスライムと言うのは全く見当たりませんね」


 彼女は話題を変えるようにスライムの話をしてきた。


 街に行くたびに、魔物に関して異常に数が増えていないか等を門番や教会に訪れた人に訊いたりしていたのだが、行く先々でとあるスライムの話を聞く事になった。


 スライムとは知ってのとおり、ラオスティア一弱い魔物として知られている。スライムの弱点である核は緑色の粘液におおわれていて、粘液が核を一応は守っているのだが……核に攻撃――いや、むしろ異物が掠っただけで即死する程の弱さを誇っている。粘液もそれほど粘り強い訳でもないため、体当たりなど以ての外だ。


 その死に易さ故に研究がしにくい上、わざわざ研究するまでも無いと言うことでほとんど生態は知られていないが、野生のスライムが移動中、木の根に核をぶつけて死亡。たまたま動物の死骸にありついたものの、生肉を吸収できずにそのまま死亡など、どこぞのマンボウよりも死に易い魔物だ。


 しかし、最近。異常な強さを持ったスライムが目撃されているとの事。


 その中の話には、たまたま遭遇した悪ガキに蹴飛ばされた際に、普通のスライムではあり得ない弾力で以て攻撃を受け、飛ばされた勢いでそのままどこかに逃げていった。


 ゴブリンの攻撃を華麗に回避し、体当たりでゴブリンを仕留める姿を冒険者が目撃した。


 自分の身体を回転させ、馬車よりも速く走る事ができた。


 その他にも、オークを生きたまま丸呑みにした等、にわかには信じられないような話が飛び交っていた。


 勿論俺も、最初に話を聞いた時は何かの冗談だろうとは思った。しかし、どの街に行ってもそんなスライムの話を聞く上に、冒険者や神官、さらには門番の人の中にもそのスライムを見かけた事があると言う。


 流石に無視できなくなった俺達は、そのスライムは魔王の復活の予兆の一つで、異常な強さを持った魔物が生まれて来てしまったのかもしれないと考え、旅をしながらそのスライムの姿も追っていた。


「まあ噂を時系列順に整理すると、どうやらかなりのスピードで南――つまり俺達と進行方向は同じようだし、もしかするとこのまま会わないかもしれないけどな。何か目的地があって、そこで止まるのならともかく」

「そうですね。街で聞いた噂通りなら、私達が五日かけて進んだ道をわずか三日で進んでいるようですし、寄り道が多いとは言え、それだけのために他の街を放り出す訳にもいきませんからね。……目的地があるとしたら、やはり主人の所ですかね? 流石に野生のスライムがそこまで強くなれるとは思いませんし」


 俺はアリスさんの話を聞きながら、ぼんやりとスライムと、その主人の事を考えてみる。


 噂どおりオークを丸呑みにできるスライムを使役するような人だったら、多分今の俺よりは強い人なんだろう。もしかしたら偵察にきた魔族かもしれないしな。もし魔族だったら、この先その人と戦う可能性も出てくるわけで、もっと強くならなきゃいけない。できれば野本達と合流するまでに【勇者】のスキルも手に入れておきたいな。


 俺は馬車に揺られながら、自分に気合を入れ直すのだった。


 浅野君のステータス。こちらも上昇値は忍者と勇者(77話)と比較。


【名前】 リョウ・アサノ  17歳


【性別】男


【種族】人族


【レベル】40 (20↑)


【生命力】1300(400↑)


【魔力】 1260(420↑)


【筋力】 1350(450↑)


【防御】1210(380↑)


【持久力】1200(420↑)


【敏捷】1070(400↑)


【魔攻撃】1240(400↑)


【魔防御】1220(380↑)


【運】140


 ◆スキル


※鑑定系スキル

[鑑定lv6](2↑)

[看破 lv2](NEW!)


※隠蔽系スキル

[隠密 lv3](1↑)

[隠蔽 lv1](NEW!)


※戦闘系スキル

[剣術 lv8](1↑)

[威圧lv6](2↑)

[見切り lv5](NEW!)


※魔法スキル

[魔力操作lv7](2↑)

[水魔法lv5](1↑)

[土魔法lv5](2↑)

[無魔法lv4]

[風魔法 lv5](2↑)

[火魔法 lv6](2↑)

[光魔法 lv8](1↑)

[回復魔法lv5](2↑)

[結界魔法 lv2](NEW!)



※索敵系スキル

[索敵 lv4](2↑)

[魔力感知 lv5](2↑)

[害意感知 lv1]


◆称号


[異世界を渡りし者]

[勇者]



 ちなみに、二話同時更新と言いつつ二話目の予約投稿が23時59分ギリギリになってしまったのはご愛敬

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