第六話 シンジの過去
イーストシティー 宿屋
シンジは一人、ベッドの上に寝っ転がって本を読んでいる。
エドとアルは図書館、メリッサはリサと一緒にショッピングに出かけている。
つまり、シンジは留守番という訳だ。
「・・・・・・暇だな」
本をパタンと閉じて、枕元に置いて天井を見上げる。
そして、ふぅーっと息を吐く。
(あれから、12年経ったな。あの『事件』以来、碌に帰ってないな)
目を瞑って、あのころの記憶を辿る。
1902年 シンジ6歳
「・・・・・・ちゃん、シンちゃん、お願いがあるんだけど」
「お願いですか?」
椅子に座っている、銀色の長い髪に右目に眼帯をしている、小さな少年にその女性はお願いをしている。
女性は、壊れてしまった皿を見せる。
「さっき、手を滑らせてお皿を割っちゃったの、だから」
「分かりました、錬金術で直せば良いんですね」
少年は頷くと、その女性から真っ二つに割れた皿を下に置いて、両手を合わせる。
パン!バシィ!!
合わせた両手を割れた皿に添えて錬成する。
そして、光が収まった後、そこには割れていたはずの皿が元に戻っていた。
それを手にとってお礼を言う。そう、彼こそ、小さい時のシンジなのだ。
「ありがとうシンちゃん、やっぱりシンちゃんの錬金術は凄いわね」
「でも、錬金術は万能じゃないんですよ、前にも言いましたけど」
すると、シンジは壁に掛けていた刀を手に持って、玄関に行く。
「それじゃあ、ちょっと遊んできます」
「はい、いってらしゃい」
その言葉を聞いて、シンジは駆け出していった。
見送った後、その女性は、いつの間にか椅子に座っている黒一色の格好をしている、エンヴィーに話している。
「・・・元気になってくれて良かったわ」
「ほんとほんと、シンジは笑顔が一番、それじゃあ、僕も見回りに行って来るよ」
「ええ、行ってらっしゃいエンヴィー」
エンヴィーは、玄関とは違う、窓から外へ出た。
「あはははは!!面白かった!!」
「俺も俺も!!」
「そろそろ、帰っていった方が良いんじゃない?シンジ」
街の友達と遊んでいるシンジに一言声を掛ける、友人A。
「うわ!もうそんなに経ってたんだ、それじゃあ、またね!!」
「「バイバイ!!」」
「また来いよ!!シンジ!!」
友人に手を振って、大急ぎで家に帰るシンジ。
この後待っている悲劇がある事も知らないで。
「おばさん、エンヴィー!ただいま!」
いつものようにただいまを言ったら、お帰りという返事が返ってくるはずなのだが。
何も返ってこない、しかも、不思議な事に明かりがついていない。
不審に思ったシンジが、刀を鞘から抜いて右手に持ち靴を脱いで、二人を捜すシンジ。
「おばさん?エンヴィー?どこ?」
他の部屋を探しても居なかったので、キッチンに行く。
そしたら、
「・・・・・・・・・え?・・・・・・・・・おば・・・さん?・・・エンヴィー?」
そこには、腹部から血を流して倒れているおばと全身ズタズタに切られているエンヴィーが倒れていた。
「おばさん!!エンヴィー!!しっかりして!!」
シンジが慌てて駆け寄り、おばの体を起こす。
「おばさん!!おばさん!!!」
それから、二日後出血多量でおばが死亡した。
エンヴィーは、致命傷には至らなかった為、その翌日に退院できた。
シンジはおばの墓石のまえに胡座をかいて座っている。
そこに
「・・・・・・シンジ」
「・・・退院できたんだ」
エンヴィーの声に静かに言うシンジ。
「・・・・・・おばさんがね、『シンちゃんは、いろんな人を守る為に産まれてきたのかも知れないわね』ってね、その時にそうかも知れないって、思った事があったんだ」
「シンジ・・・」
「・・・今はおばさんは居ない。けど、いつまでも引きずる訳には行かない。だから、僕は、国家錬金術師になりたい」
その言葉に、目を見開きビックリするエンヴィー。
シンジは、立ち上がり、傍にある黒いコートを着る。
刀を、鞘から引き抜き、墓石の隣に突き刺す。
そして、離れる。
「・・・ここを離れて、リゼンブールに住居を変えるよ」
「・・・・・・分かった、シンジの決めた事には口を出さないよ」
そして、この日を境にシンジとエンヴィーは引っ越した。
リゼンブールに引っ越して5ヶ月。
「シンジ、客だよ」
エンヴィーがキッチンに戻って来て、後ろを親指でさす。
そこには、
「・・・キ、キング・ブラッドレイ大総統?」
「固くしなくても良い、ただ、君に話がしたくてね」
と、近くにある椅子に座る、シンジはエンヴィーを見る。
彼は、黙って頷く。
「・・・話とは?」
「何故、君のような子供が国家資格を受けたいのか理由を聞きたくてね」
その目は鋭かった。
「・・・誓ったんですよ、おばさんの墓前で」
「・・・確か、殺されたんだったね」
「・・・・・・はい。僕は、復讐なんて考えませんよ、例え、復讐を果たしても、その後に残るのはむなしい感情だけですよ。だから・・・」
「それ以上は言わなくて良い、分かった。一年後。中央にエンヴィーと共に来るんだ。良いね」
その大総統の言葉に目を向けるシンジ。
「よろしいのですか?」
「勿論だとも。それでは、期待しているよ、眼帯の錬金術師君」
そう言って、シンジの家を後にした。
「・・・・・・良かったね、シンジ」
「うん!」
二人はニッコリと笑った。
1年後 シンジ7歳
「お世話になりました」
「御免なさい、僕らの勝手な我が侭で」
「良いんだよ、偶にはこっちに手紙を寄越しておくれよ」
「はい、かならず」
ピナコだけが、シンジとエンヴィーを見送りに来ていた。
「でも、良いのかい?他のみんなには話さないで」
「いいんです。これ以上は・・・行って来ます」
「行ってらっしゃい」
シンジ達を乗せた汽車が中央に向けて出発した。
中央軍部試験会場
「―――と、言う訳でサバイバル戦闘試験を始める。ルールは、最後の一人になるまで戦う事、以上」
あっさりとした説明、大総統の言葉にぽかんとするシンジ他60名。
だが、すぐに戦闘準備をしている。
シンジは、右目に付いている眼帯を外してポケットに入れる。
「始め!」
パン!バシィ!!カキィィィン!!
・・・・・・あっさりと終わらせやがった、シンジの奴。(マジ?
シンジが、錬金術を使って、一気に他の錬金術師全員を氷付けにしたのだ。
その時、右目は髪の毛に隠れていたが、赤色だった。
それを遠目で見ていた、エンヴィーは
「ヒュ〜♪シンジってば、やる〜♪」
と、弟を見るような優しい目で褒めていた。
「うむ、見事な錬金術だ。彼から聞いていたが、これほどとはな」
「・・・お褒めの言葉ありがとう御座います、キング・ブラッドレイ大総統閣下」
・・・・・・絶対に7歳には見えない(汗 つうか、礼儀正しく接する7歳児なんて。
「うむ、合格だ。それと、国家錬金術師には二つ名を貰う事になっているが」
「・・・大総統のお許しが有れば」
「うむ、なら、『開眼の錬金術師』と名乗るが良い」
「はっ、それから、一つお願いが」
思わぬシンジのお願いに耳を傾ける大総統。
「何かね」
「俺が、国家錬金術師になったって言うのは、絶対に世間には知らさせないでください、たかが7歳児の少年が国家錬金術師の試験に合格したなんて、知られたら、大パニックに陥りますよ」
「・・・ふむ、確かに。この事は、上層部の秘密裏にしまって置こう」
「感謝します」
そう言って、シンジはピシッと敬礼をしてエンヴィーの所へ戻っていった。
ご丁寧に他の錬金術師達を元に戻して。
翌日、シンジのポケットには鎖で繋がれた六茫星の銀時計があった。
その月から2年が経ち、ネルフ国一掃戦が、開始される。 |