誓いの言葉は『手をつなごう』縦書き表示RDF


短編は初挑戦だったのでまとめるのに苦労しました(-_-;)テーマ色を急遽変更したんですが……ある意味丁度良かったかも?
誓いの言葉は『手をつなごう』
作:壱琉


太鼓の音や人々が話す声が辺りをうめつくす。長い長い階段を上がった先には大きな神社がありその御利益は有名だ。

でも新年の挨拶にお参りではなく別の目的で来る人もいるんだ――。

僕には関係ない話しなんだけどね。

「お兄ちゃん! あまざけっておいしいの〜?」

辺りが薄暗い中、そこだけ輝いているような笑顔で僕の手を引く小さな女の子は僕の妹だ。

「楓、はぐれちゃダメよ!!」

「ほら、お母さんも呼んでるし。行こう?」

するとクリっとした目にいっぱい涙をためて首をふった。

「あずさ、飲んでみたいよぉ〜」

「でも甘酒ってお酒だよ? 梓はお酒嫌いだったよね?」

梓は眉を潜め、んべっと舌を出した。

「お酒はきらいだよぉ〜」

「くすっ、じゃあ行こっか?」

「うんっ」

僕は梓の手を引いてお父さん達の後をついて行く。僕より4歳下、まだ幼稚園生の梓には人ごみの中を歩くのはさぞ辛いだろう。

「楓、梓っ! 年越し蕎麦食べましょうか?」

「おそば? うん〜、食べるぅ」

長い階段のすぐ横にあるお店の中に家族で入った。中は木のテーブルや、竹で出来たランプなど良い雰囲気らしい。

僕には良くわからないけど。

「楓は何食べる?」

「僕はざるそば、梓は?」

「あずさ、お兄ちゃんと同じのがいい!」

梓が笑うと僕らにも笑顔が生まれる。梓が泣くと僕らも悲しくなる。うちの家族は梓次第なんだ。

しばらく四人で話していると店の奥から四人分のおそばを持ったお店の人がテーブルに運んで来た。

「うわぁ、おいしそうだね!」

梓は割りばしをうんしょ、と割りそばを食べようとした。

「あれ? たべないの〜?」

「ううん、食べるよ」

僕も割りばしを手に取り、パシッと割る。うん、今日はキレイに割れたな。

「あっふぃ〜」

危なっかしい手つきでそばをちゅるちゅるとすすっていく梓。

お母さん達もそれを見て微笑んでいる。

僕は梓の食べる姿をぼーっと見てから食べ始めた。




「次は何処に行きたい?」

お父さんが屈んで梓に問い掛ける。

「あずさはねぇ……」

頬に指を当てて真剣に悩んでる姿は本当に可愛らしい。

今でこそ梓は僕に懐いていて、僕もそれが嬉しかった。でも前は違ったんだ。

僕の手を掴んでお兄ちゃんと言ってくれる梓は本当の家族じゃない。梓は捨て子だったんだ。

お母さん達は元々女の子が欲しかったらしく、僕が男だと知った瞬間ガックリしたらしい。

その事を知ったのは結構前だけど、僕がいない所で『楓が女の子だったら……』なんてぼやいていたのも知ってる。楓とゆう名前も女の子用につけた名前だったそうだ。

そして四年前……梓がまだ一歳の頃に僕らの家にやってきた。孤児院に居た梓をお母さん達が引き取ったんだ。

当然、お母さん達を取られちゃうような気がして僕は嫌だった。梓が来てから梓にべったりなお母さん達が嫌いだった。

でも何か僕が言う度に『お兄ちゃんでしょ?』と言う。だから僕はとことん我慢してやろうと思ったんだ。

でも、我慢の限界はすぐに訪れた。一年前、いつものように僕に甘えようとする梓を、これまたいつものように無視していた時の事。

手を繋いでほしがってる梓を振りほどいて泣きそうになっているのを放っておいたんだ。

「お兄ちゃんはあずさの事、きらいなの〜?」

わかってた。僕はまだまだ子供だけど梓は悪くないって事くらい。

でも思わずカッとして言ってしまったんだ。

『僕はお前のお兄ちゃんなんかじゃない』って……。

まだ幼い梓は当然のように大泣きしたさ。でも僕はうるさいなぁくらいにしか思ってなくて……。

「お兄ちゃん……あずさ、いやな所直すからきらいにならないで……」

梓が突然苦しみだしたんだ。始めはウソかと思ってたけど尋常じゃない苦しみかたに僕は混乱していた。

もしかしたら僕が酷い事言ったから梓が……!! なんて思ったんだ。

丁度買い物から帰って来たお母さんが救急車を呼んで大事には至らなかったけど……。

「お兄ちゃんなんだからもっと梓を見てあげなさいッ!!」

お母さん達に怒られてる間、ずっと僕のせいじゃない僕のせいじゃないって思ってた。

でも、それは間違いで――。

お医者さんから原因を聞いた時、お母さん達は真っ先に僕を見たんだ。

原因はストレスや精神的疲労からくるものだったと……。

ストレスの意味を看護婦さんに聞いた時、世界が止まった気がしたんだ。

お母さん達も僕と梓の仲が悪いのは知っている。それをお医者さんに話したらおそらくストレスは僕のせい、だと。

僕が梓と仲良くしてないからストレスがたまっていったんだと――。

ウソだと思った。そしてウソだと言った。

梓が寝てる病室で僕は病院とゆうのも忘れて泣き叫んだ。

『僕のせいじゃない! 梓が悪いんだ!!』

沢山たくさん怒鳴られた。止めようとするお父さんを無視してお母さんにほっぺまで叩かれた。

僕は泣いていたけど、お母さんも涙を流してた。ほっぺがヒリヒリした。でも叩かれた痛みより叩かれたとゆう事実の方が痛かったんだ。

「おかあさん……」

梓が目を覚ますとお母さん達は飛び付くように駆け寄り心配していた。

でも、僕はその場に立ち尽くして呆然としてたんだ。

「僕は悪くない……僕は悪くない……」

僕が悪い。そんなのわかってたよ。だって梓は悪くないんだから。そしたら僕が悪いに決まってる。

それでも、そう言わずにはいられなかったんだ。

――でも梓は違った。

「お兄ちゃん、ごめんなさい。あずさ、お兄ちゃんの嫌いなところなおすから……。きらわないで……」

その言葉が何処までも深く深く胸に突き刺さる。

『どうして梓はこんな僕を――』

喉から出かかった言葉を梓の声がかき消す。

「あずさ、お兄ちゃんが笑ってる顔がだいすきなんだぁ。あずさが怒らせてばっかりのせいであんまり笑ってくれないけど……」

『違う……梓が悪いんじゃない! 僕が笑おうとしなかった。僕が梓に歩み寄ろうとしなかっただけなんだ!!』

心はもうそう告げてた。僕が悪いんだって――。

「でも、お兄ちゃんが泣いてるとあずさもかなしいよぉ。おかあさん、お兄ちゃんを叱らないで? あずさが悪いんだから。あずさが弱いせいだから……」

頬を叩かれた時とは比べ物にならないほど胸が痛んだ。つぶれちゃうんじゃないかと思った。

「梓……」

「お兄ちゃん、手、つないでもいい?」

苦しそうに笑った梓は小さな手をベッドから出して僕の手を求めた。可愛がってくれるお母さんではなく、僕の手を。

いつも梓は手を繋ぎたがった。僕はその度に無視してきたけど……。

でも僕は、僕は――。

「うん、いいよ」

梓は目を見開いたけど満面の笑みで手をふった。まるで急かすように。

まるでおいでおいで、と呼んでいるかのように。

少し震える手で冷たい手を握る。それが最後で……。

僕は梓のベッドに顔を埋めると大声で泣いた。何度も何度も謝った。

でも、梓はただ子供をあやすかのように僕の頭をただ撫でていたんだ。

それが始まりで――。




「あずさ、じんじゃに行きたい!」

「じゃあ行こっか」

今、僕の世界は梓を中心に回っている。

「梓?」

「うんっ」

僕が手を差し出すと梓はしっかりと握りかえしてくれる。それが何よりも嬉しい。

店を出ると遠くからお御輿の声が聞こえる。

「すごい人だね〜」

「うん、はぐれないようにしないと」

僕が梓の手を引いてお母さん達の後を追おうとした時だった――。

「うわっ!!」

なだれ込むように来た人ごみに飲まれ、何処が何処だかわからなくなる。

「梓ッ!!」

はぐれないように力いっぱい梓を抱き締める。

僕が梓を守るんだ――ッ!!

まけないくらい僕にしがみつく梓を必死で抱き締めた。

しばらくして辺りが静かになると僕らは二人だけになっていたんだ。

出店の人もお御輿を見に入口の方まで戻ってしまったんだろう。

「梓、怪我はない?」

「うん、こわかったけど……だいじょうぶだよ〜」

目をうっすら涙をためて気丈を振る舞う梓を思わず抱き締めてしまう。

「お兄ちゃん、だいじょうぶだってばぁ〜」

「あっ、ごめんッ!」

さっと離れるが、手は繋がれたままだ。

「あれ? おかあさんは?」

キョロキョロと辺りを見回す梓に合わせるように僕も辺りを確認する。

あぁ、完全にはぐれちゃった……。

「お兄ちゃん、おかあさん達は?」

「うん、はぐれちゃったみたいだね」

その瞬間、手の力がグッと増したんだ。

「あ、梓?」

「おかあさん達、いなくなっちゃったの? 何処かにいっちゃったの?」

不安そうな梓を慰めるべく、僕は手を握りかえす。

「大丈夫、探せば見つかるよ」

「おかあさん、何処にいるの?」

「それはわかんないけど、探せばきっと――」

「ウソだよッ!!」

え? 梓――?

右手にあった柔らかな感触が一瞬で消えた。初めて、梓に手を振りほどかれたんだ。

「あずさ知ってるもん! あずさの本当のおかあさんとおとうさんはあずさを捨てたんだって!!」

「えッ!?」

どうして梓がそれを知ってるんだ? なんで――。

「本当だもん、あずさ聞いたんだもんッ!」

涙を流しながら僕を睨み付ける。きっとお母さん達が話しているのをたまたま聞いてしまったんだろう。

「おかあさんもきっとあずさはいらない子だって思ったんだもん!! お兄ちゃんだってあずさの前からいなくなっちゃうんだッ!!」

梓は涙をいっぱい溜めた目をギュッと閉じて叫んだ。

いつも元気に見えてこんなにも不安を感じていたのか、梓は……。

どうして毎日見てながら僕は気付けなかったんだろう?

僕が守るって決めたのに。

『………』

僕の頭の中に一つの言葉が思い浮かんだんだ。それは僕を救ってくれた言葉で、梓と僕を繋ぐ言葉。

「梓……」

僕は泣きじゃくる梓に手をさしのべる。

「手、つないでも良い?」

「………」

梓は無言で頷くと服で手をふいてから僕の手を握った。

僕は屈むと俯く梓を下から覗きこむ。

「僕は居なくなったりしないよ?」

「……ウソだよぉ」

消えそうなほど小さな声で呟くように梓が言った。

「じゃあ誓おうか?」

「……ちかう?」

「うん、約束よりもっと大切な事」

梓は少しだけ顔をあげると首を傾げた。

「それをしたらお兄ちゃんはいなくなったりしない?」

「うん、絶対に――」

梓はコクンと頷くと顔をあげて僕の腕を抱き締めた。

「行こっか?」

いつもの言葉を投げ掛けると梓は頷く。

僕は梓と一緒に長い階段を上って行く。途中で梓が転びそうになったからおんぶしようか? と聞いても頑張ると言っていた。

僕は梓の手を引き、必死で階段を登った。

「梓、もうちょっとだよ?」

行き絶え絶えの梓と最後の段差を跨ぐと目の前に神社があったんだ。

「ここでするの?」

「ううん、もう少し先」

僕は神社をぐるっと一周して裏に回った。そこは崖になっていて、町が一望できる。

その中央には古びた黄金色の鐘がぽつんとあった。

「あの鐘を一緒に鳴らすと絶対離れ離れにならないんだよ」

「あずさとお兄ちゃんも?」

僕が頷くとあずさぱぁっと輝くように笑い、駆け出していった。僕と手を繋いでいるから僕も走る事になるんだけど。

鐘の前に立つと紐を二人で握る。

「いい?」

「……うん」

緊張した面持ちの梓が頷くのを見ると、僕は紐を引いた。

それは神秘的な音だった。満点の星空に黄金色の音が鳴り響き、僕らは目をつむって聞き惚れていたんだ。

やがて、鐘が鳴り終わると手の力が増す。

「これでお兄ちゃんとあずさはずっといっしょ?」

「うん、ずっと一緒だよ」

鐘の音がまだ耳に残る満点の星空の下で僕と梓は笑い合った。

――そして、僕が梓に恋していたと気付くのはそう遠くはない。

『梓、手繋ごうか?』

『うんっ』


小説のテーマは兄妹ではなく、家族・親子です。

書いててこっ恥ずかしかったですが書きたかった事は書けたので良かったです。物語に文章力が追いつかないのが悔しいですがこれを読んで少しでも何か感じられたらうれしく思いますm(_ _)m













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