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『CROWN plus』
作:是音



TURN24 VSオラクル左腕〜儡々魁座〜


 悪魔ディアボロス

影使いザックが発動したその悪魔の能力はついに姿を現した。

 黒い繭は二つに割れ、そのまま黒い球体となり〈それ〉の上を迂回しはじめた。さらに繭から現れた巨大な〈それ〉は、全身が浅黒く、黄色く輝く二つの眼が一層際立って見える。

そう。そこにいるザックは〈人〉ではなかった。
蹄のついた二本の脚、肩からさらに二本生えた合計四本の腕。やはり鋭い爪が備わっている。背中からは薄い皮膜を持った翼。裂けた口、鋭い牙、耳や鼻の形からして、もはや獣にしか見えない頭部からはねじれた角が二本生えている。身体全体は華奢に見えるが、筋骨は隆起している。猫背になって白い息を吐くその姿は凶々しさを感じさせる。

 ザックは顔を上げ、自分よりもさらに数倍大きなオラクルを見上げた。

『貴様……どこにそんなエネルギーが?』

「フン、影さえあればオレは無敵だ。光がありゃあ影もできるだろ?誰もオレには勝てねぇよ!」

 オラクルの疑問に、変身したザックはいつもどおりの口調で答えた。しかし声は低く、皺がれている。

「……オズマの仇はとらせてもらう。消えてもらおうか!」

 ザックの周囲を回っていた二つの球体がさらに六つに分裂し、背中に円を作った。

『おとなしく聞いていれば言いたい事を言いおって……。消えるのは貴様達だと……言っているだろうがぁぁぁぁ!!』

 目玉オラクルは瞳をザックに向け、全身に雷をほとばしらせた。

―――

「始まったみたいだな」

 陽斬のエネルギーフィールドの中でファムとレイモンドはザックの変わり果てた姿を見ていた。
 外ではジンとアンカーが動き回り、岩を弾いてぶつけるユノとライアを守っている。牙隠と邪混沌は四人を援護するように左腕に攻撃を加えていた。

 陽斬の隣で他の塊儡を操作していたサイが口を開いた。

「体力は回復したか?」

 ファムとレイモンドは頷く。

「じゃあエネルギーフィールドは外すよ」

 サイはザックの方を向きながら陽斬の背中を叩き、エネルギーフィールドを消した。

「ザックが全力を出すならここらが正念場だよな。オレ達も全開で行かないと。な?レイモンド」

「そうだな。やるか、サイ」

 サイは牙隠、邪混沌、陽斬を集めた。レイモンドも一緒に立つ。
 首を傾げているファムにレイモンドは

「ファム、しばらくの間護衛を頼んでも良いか?」

「は、はい」

 ファムは二人が何かをしようとしていることを理解し、頷いた。

 サイは三体の大塊儡を消した。手にはトランプが戻る。

 レイモンドも自分のトランプを出し、サイのトランプと重ね合わせながら言う。

「知ってるかサイ、大抵のゲームでは《JOKER》ってのは切り札か、何にでも使える便利なカードなんだぜ?」

「ははっ、知ってるよ。だから見せてやろうぜ、オレ達の切り札……」

「《能力の融合》を!」

 サイは地面を物質変換した装甲に包まれた。レイモンドは地面とサイの脚に手のひらを当て、精製を続ける。サイを覆う装甲は巨大化し、人型を形成していく。サイは自身が塊儡の中に入ったのだ。
 レイモンドによって牙隠達より遥かに大きな塊儡となったサイは体中に重火器を備え、背中からは無数の機械の触手を生やしている。

 ユノ、ライア、ジン、アンカーも気付いた。

「いよいよ本気ね」

「それでこそ今まで地道に攻撃を加えておいた甲斐があるってものよ」

 ユノとライアは岩を弾くのをやめて大戈を地面に突き刺した。

「イタタタタ……」

「さすがに何発も大岩くらったらちょっとは痛いぜ?」

 ジンとアンカーは首と肩を鳴らした。

「さぁ、決めようぜ!」

 ファムに守られているレイモンドが地面とサイに両手を当てながらユノとライアに向かって叫び、ユノとライアはそれに答えて地面に突き刺さった大戈を掴んだ。

「溜めに溜めた爆破エネルギー……」

「解放したらどんな大爆発かな?」

 左腕が飛ばしてくる岩石を鋼鉄の身体で弾くジンとアンカーはノンキな二人を睨み

「いいから早くやれよ!」

「守るのって結構大変なんだぞ!!」

 怒る二人を横目に見たユノとライアは片手でそれぞれの戈を握り締めた。無数の爆弾石を浴びた左腕はただただ岩をぶつけることだけに集中している。
ユノとライアはそれを見据えながら戈を握る力を強め、二人同時に指をパチンと鳴らした。

「《クリスタル・ブレイク》!!」

 左腕の手首から光が溢れだす。そして次の瞬間指の先から大爆発が起こった。宙に浮いていた岩と同じように手首から先を無くした銀色の巨大な腕は落下した。

「うわぁ、すごい……」

 ファムは爆風によって起こった砂埃を避けるために手で顔を覆いながら溜息を漏らした。ジンとアンカーもやれやれといった顔で力を抜く。

ユノとライアの姉妹は爆風でなびく髪を抑えながら得意げな表情をした。

「ま、ざっとこんなもんね」

「さぁ、後はあなたに任せたわサイ!」

 ライアは後ろを振り返り、すぐ後ろでそびえ立つ大きな機械人形を見上げて言った。

 サイの肩に乗ったレイモンドが飛び降りる。

「最高傑作だ」

 サイは機械的な声色で言い、自分の身体を眺めるように腕を上げたり背中の触手を動かしたりした。
 アンカーは興味深そうに見上げる。

「おー!サイすげー!」

 サイは笑い声をあげた。

「すげーだろ!?人形使いが最後は人形と同化しちまった。オレは今、牙隠・陽斬・邪混沌と一つになったんだぜ?
名付けて《儡々魁座{ライライカイザ}》!!
塊儡能力最終形態だ。さらにレイモンドの能力が合わさって攻撃・防御も完璧……ん?」

 サイの《儡々魁座》を中心に能力者達を囲むように地面から大量の触手が現れた。爆風による砂埃がおさまると、左腕の姿はなかった。

「地下に潜ったか」

 レイモンドが一瞬だけ足元を睨み、すぐさま目線を上に向け両腕に銃を構えて触手を打ち落とす。

「地面爆破しちゃう?ユノ」
「姉さん!私達も巻き込まれちゃうわよ!」

 襲いくる触手を爆砕しながらユノがライアを小突いた。

「早いトコ倒さないと……」
「ザックがもたねぇぞ」

 ジンはアンカーの隣で遠くを見た。目線の先では巨大な悪魔と目玉が睨み合っていた。

 儡々魁座は背中の触手を地面に突き刺した。伸縮自在のそれは背中からどんどん伸びて地面にめり込んでいく。

「出てこないなら炙り出すまで……。《バーンアウト》!」

 地響きと共に辺りから火柱が上がった。
同時に地面が盛り上がり、銀色の円柱が姿を見せた。手首が繋がっていた場所からも無数の触手が溢れだしており、もはや腕とは形容しがたい姿となっていた。

 腕にはもはやエネルギーがないらしく、宙に浮くこともできないし触手の動きも鈍い。

「オレがトドメ刺しても良いかな?」

 そう言いながら儡々魁座は腰から固定用の三脚を出して地面に突き刺す。
さらに胸部から先端の尖った棒を二本出した。高圧縮砲の強化版である。
 他の面々は急いでサイの後ろへ移動した。

 二本の棒が激しく振動し、先端の間に黒い球体が発生した。儡々魁座は振動に堪えながら巨大化する球体を銀色のオブジェへ向ける。

「エネルギー供給源・・・まずは片方撃破ぁぁぁぁ!」

 放たれた球体は腕に直撃し、結界に包まれた。無数の触手が吸い込まれ、ついに全体が結界の中に閉じ込められた。

「まだまだ滅ぶつもりはないんだよ。消えな」

 サイがそう言うのと同時に結界は圧縮され、オラクルの左腕は完全に消滅した。












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