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『CROWN plus』
作:是音



TURN2 覚醒


ザックがCROWNへ出発してから二ヵ月が経過していた。



MA社社長室には黒髪の女性と秘書が立っている。女性は窓から外の景色を眺めながら言った。

「兄の行方は?」

「未だ掴めておりません。きっと社長なら無事ですよ。あの方は伝説の男です。」

秘書はそう言うと部屋を出ていった。

「伝説の男・・・か。十年前急に失踪したかと思ったら突然社長や伝説なんて肩書きで帰ってきて。それで今度もまた失踪・・・一体何考えてるのよ兄さん・・・!!」

すると突然扉が開き、青年が部屋に入ってきた。

「へぇ、君がザックの妹さん?」
「あなたは?」
「ザックがいない間代理で社長をしている者だよ。それより君に話さなければいけないことがある。」

シドはソファに座った。女性もそれを見て向かい側に座る。

「話さなければいけないこととは?」
「その前に自己紹介だ。僕の名前はシド。一度は君の兄さん達を殺そうとした男だ。今は違うけどね。」
「イリュージョン社非人道事件の関係者ね。私の名前はファムよ。」

「ファム、君のお兄さんは生きてるよ。」
「本当!?」
「先程CROWN監視施設でザックの能力発動パルスが確認された。特別担当員達も無事だ。が、能力を使ったということは戦闘が行われているということ。敵は未知だ。」

ファムは首を傾げた。
「兄が無事というのはわかったわ。でも能力って何?」

シドはテーブルのうえに一枚のカードを出した。
「戦闘用の特殊能力のことだよ。このカードは能力発動の鍵となるディメンションカードと呼ばれるものだ。」

「特殊能力・・・。もしかして兄もこれを?」

シドは頷き、そしてファムの目を見た。
「お兄さんを助けに行きたいかい?」

ファムは驚きの視線をシドに向けた。シドはカードをファムの手に渡す。

「このカードは君の為に作ったものだ。」
「私の・・・?私にも特殊能力が?」
「覚醒能力は滅多に確認されないが、兄弟の一人に覚醒能力が確認されたならば同じように別の兄弟にも覚醒能力が確認されることがわかったんだ。つまりザックの妹である君にも能力があるって事だ。」

ファムは手渡されたカードを見た。図柄は《ハートのジャック》。

「私が兄さんを助けに・・・。」
「行くかい?ただし、相当な危険が伴うよ。」

(兄さんは迷惑をかけすぎよ!私がどれだけ心配したと思ってるの!)

「行きます!!」
「・・・そうかい。じゃあ付いてきなよ。」

ファムは決心を固めた。
シドはそれを聞くと席を立ち、ファムを訓練施設に連れていった。



訓練施設に連れてこられたファムの前には三機の巨大ロボットが並んでいる。改良された龍怒{ロンド}だ。
『CROWNで死なれちゃザックに申し訳が立たないからね、戦闘訓練といこうか!オズマ、アザブル、頼んだよ。』
『クハハハハ、ザックの妹!?楽しませてくれよぉ!』
『オズマ、油断はするな。戦闘の初心者とはいえ調べでは彼女は剣道有段者だ。』

ファムはただ茫然と立っていた。
(カードをどうやって使うの?それにこんな大きな機械三体を相手にどうやって戦えというの!?)

『まずはカードの名前を呼んでみな。』
オズマが言う。

ファムは言われたとおりにした。
「ハ、ハートのジャック・・・。」
次の瞬間金属音と共にファムの腕にカギヅメがはめられた。

『次からはその武器をイメージしろ。能力が発動する。』
アザブルの龍怒が大刀を肩に乗せた。

「で、でもこんなカギヅメでどうやって?」
ファムは右手にはめられたカギヅメを不安げな眼差しで見た。

『大サービス!ザックの能力は《影完全支配能力》だよ!なら妹である君の能力も・・・』
シドはスラスターを起動させた。

(兄さんの能力・・・)
「影を支配・・・」
ファムが呟いた瞬間彼女の影がカギヅメを包んだ。それは右腕全体を包み込み、大きな槍を形成した。

(私が兄さんを助けるの!!)

突如手に持ったカードに異変が起こる。

『な・・・!カードの図柄が変わって・・・!!』
『い、いきなり《ACE》クラスだとぉぉ!!!?』
『ザックを越える逸材か・・・。』

ファムのカードはACEの絵柄になっていた。

「何だか使い方がわかる気がする・・・。これならイケる!!」
ファムは初めて笑みを浮かべた。

『オズマ、アザブル、行くよ!』
『オラァ!異世界を一人で制圧した実力を見せてやるぜ!』
『我らに勝てたなら戦力としては十分だ。行くぞ!!』

三機は同時にファムへ突撃した。

『クハハハハ!そら行くぞー!』

オズマがビームウィップをしならせる。
『オズマ!ビーム兵器は駄目だよ!』
『うるせぇ!こんなんで負けるならCROWNに行ってもやられちまうんだよ!何せ敵は未知数だからな!』
『オズマの言う通りだシド!彼女もそれを承知で決心を固めたはずだ!』

アザブルも驚異的なスピードで大刀を振り上げた。

本気になったファムは影槍となった右腕を上段に構えた。
「上段の構えは炎のごとき闘争心をあらわす構え・・・」

『・・・!!オズマ避けろ!!』
アザブルが気付いたときには既に遅く、ファムは回転しながらオズマの機体の両脚を切断した。

『ぐぁぁぁぁ!こ、これはザックの《白影回羅》!?油断した!!』

オズマの龍怒は転がりながら壁に激突した。

次にアザブルが大刀を振り下ろす。その速さの前にファムは避けることもできず、アザブルはファムを一刀両断した。
が、振りぬいた大刀は柄の部分から切り落とされていた。

『・・・とんでもない切れ味だな。見事!』
次の瞬間、アザブルの龍怒はバラバラになった。

予想以上のファムの実力にシドは冷や汗を流す。
『信じられない。この機体は龍怒なんだぞ?油断したとはいえあのオズマとアザブルが一瞬で倒されるなんて!』

シドは龍怒の装甲を全て破棄した。極限まで軽量化して速さに集中するつもりだ。

『行くよ!』

シドは瞬間移動してファムの後ろに移動した。
(速い!)

ファムは思いっきり蹴り飛ばされ、床に転がった。
「ぐっ・・・。強い」

(兄さんはこんな敵と戦ってきたの!?)

『ザックにとって動きの速いだけの敵は相手にもならなかったらしいよ!君はどうなのかな!?』

シドの機体は見えない。ファムは昔ザックがいつも読んでいた忍者漫画を思い出した。
(フフ、兄さんならやりそうね。)

ファムは影槍を地面に突き刺した。

『!!』

突然龍怒の動きが止められた。

「やっぱりできた《影縛り》!」

シドはスラスターを止めた。諦めたのかと思ったら各所のレンズをむき出しにした。
『こんなのはどう?』
動きを止められた龍怒から無数のレーザーが発射される。

『おいチビ!お前こそヤバいじゃねえか!』
オズマが焦る。

ファムはレーザーを避けながら接近した。
『君は才能あるよ。』
シドはレーザーの連射を止めた。その刹那、ファムの斬撃が龍怒の首をはねた。



戦闘訓練で圧倒的な実力を示したファムはCROWNへ向かうべくワープゲートの前にいた。シド、オズマ、アザブルが見送る。

「みなさん、必ず兄達を助け戻します。」
『おぅ、お前ならできる気がするぜ?クハハハハ』
『確かに君は強い。だがザック達が苦戦する相手だ、気を付けろよ。』
『僕達に勝ったんだから自身持ってイイよ!』
「ありがとうございます!」
ファムは三人が極力手加減してくれていた事を知っていた。三人が格の違う相手だとは最初からわかっていたのだ。

『みんなを頼んだよファム!』

ファムはワープゲートの中へ入っていった。












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