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『CROWN plus』
作:是音



TURN19 VS破壊神 〜スティングの秘密〜


『貴様は一体・・・』

破壊神は手のひらから光球を連射した。高速で飛んでいく多数の光球をスティングは更に速いスピードで横に走り、躱す。
避けきれない一個がスティングに当たる直前にまたもや屈折し、上に弾かれた。

『またか。エネルギー攻撃が効かない。』



と、下から破壊神へ向けて影の刄が三本飛んできた。破壊神は軽い動きでそれを躱したが、何かを感じたのか、それを放った娘に顔を向けた。
スティングも驚いた顔でファムを見る。

「ファム!何故残った!?」

「スティングさんだけじゃ苦戦するのは目に見えてますよ!手伝います!」

「ここにきてザックと同じ行動派の血が目覚めたか。」

破壊神がファムへ向けて光球を放つ。
スティングは素早くファムの前に立つと光球を弾いた。

『影使い・・・妹の方か。本来なら取るに足らない貴様も何故か早めに消さねばならん気がする。そこの男といい、一体何なのだ!!』

破壊神は光球を放ちながら猛スピードで二人に接近し、両腕を鋭い刀に変化させて切り掛かった。
ファムはスティングの前に影の壁を作り出す。

『無駄だ』

スティングは壁を切り裂いた破壊神を避けるためにファムを抱えて横へ飛んだ。しかしその時スティングは左腕に傷を負ってしまった。
再び宙に浮き上がった破壊神はスティングの傷に意識が集中した。

『そうか貴様・・・。人間ではないな?』

その発言に耳を疑ったファムは同じくスティングの傷口を見た。
服が破れ、肉が裂けている。だが血が流れていないのだ。代わりに鉄骨がむき出しになっていた。

「スティングさん・・・その腕・・・っ!」

スティングは笑いながら頭を掻いている。

「バレちゃったか。神様のくせに気付くの遅すぎだな。」

破壊神は兜の奥で唸り声をあげた。



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オレがこの身体を手に入れたのはZ・E隊配属の前だった。

力が必要だったのだ。

オレとアウス、メーヴェは幼少の頃より厳しい訓練を受けてきた。最初の頃は三人の力は同じくらいだった。だが、日を重ね、月を重ね、年を重ねていくうちにオレは焦りを感じるようになっていた。二人はどんどん能力を強化していくのに、オレの能力は高速移動でとどまっていたからだ。

Z・E隊幹部選抜があると知った頃、オレは既に二人にはついていけないと悟り、一人悩んでいた。このままでは三人いつまでも一緒にいることなどとてもできない。と。

そんな時、私の前に一人の男が現れたのだ。
金色の髪を後ろで束ね、眼鏡をかけた白衣の男。
そう、マテリアル・イリュージョン社科学技術研究所所長《ミシェル・B・クラウン》である。

『人間を辞めてみませんか?』

彼はオレにそう言った。ようするにそれは《能力者生体強化計画》というミシェルの新企画の実験台になれという事であった。
人間を辞めて強大な力を手に入れることができるのならと、当時のオレはすぐにその悪魔の誘いに食い付いたのだった。

数日後、地下手術室

冷えきった部屋。オレの周りでは黄色い防護服に身を包んだ研究員達がおよそ手術道具とは思えない異形な形の道具を並べていた。が、全員が一斉に手を止めて入り口へ向き直った。他の研究員達と同じ黄色い防護服に身を包んだ男が入ってくる。それがミシェルだとすぐにわかった。
彼は手術台に縛り付けられたオレに歩み寄り、耳元に顔を近付けた。

『スティング。申し訳ありませんが神経系統の関係で麻酔は無しです。フフフ、せいぜいショック死しないように注意してください。あなたは私の大切なモルモットなのですから。フフフフフ・・・』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「オレは悪魔の身体を手に入れたのさ。エネルギー偏向装置は異世界大戦の後に埋め込んだのだが、これほど役に立つとはな」

スティングは笑いながら袖を捲った。手首から刄が飛び出す。暗器《鬼爪》である。二、三回手を開き閉じして回線が正常だと確認すると袖をおろす。
ファムは目を丸くしてそれを見ていた。

「スティングさん・・・その身体は」

「驚いたかせちゃったな。恐いか?」

ファムは大きく首を振る。

「この身体はオレにとってメリットばかりだ。能力は研ぎ澄まされ、人間離れした身体能力も手に入れた。さらに・・・」

スティングは一瞬で破壊神の背後に移動し、パンチを放った。破壊神はそれを片腕で防御する。が、その攻撃の重さに身体が揺らぐ。

『・・・っ!重力か』

ふわりと着地したスティングは少し手を挙げて見せた。手の周りの空間がぐにゃりと歪んでいる。

「重力制御装置さ。メーヴェ程莫大なエネルギーには到底及ばないけどオレにはこれだけで十分。さて、話が長くなったな。ファム、お前はザックを越す逸材だ。」

「私が?」

「そうだ。ザックの技や能力の使い方を全て真似ろ。真似て真似て、その中で自分のオリジナルを生み出せ。」

「はいっ!」

(ファムか・・・。この娘、シドの話では発動した瞬間からクラスが《ACE》だったらしいな。・・・フッ、本人は気付いていないようだが、確かに天才だな。能力に恵まれなかったオレとは正反対だ。)

スティングは足に重力場を作った。

「オレの援護するつもりなら実力を見せろ!いくぞ!!」

「はい!」

スティングは砂埃と共に高速で破壊神へ突撃した。
その横を影の刄が無数に追い越していく。

(上手い援護だ。)

破壊神は空中でひらひらと刄を躱すが、避けた瞬間に刄が広がり破壊神を包んで動きを止めたのだ。スティングは右手で破壊神の左腕を掴むと、手のひらからゼロ距離で高出力のエネルギーを放出して破壊神の左腕を引きちぎった。破壊神は予想外の現象に、失った左腕を見つめたまま呆気にとられた。

『・・・は?』

破壊神が驚くのも無理はなかった。幾度の進化でその装甲はあらゆる攻撃を受け付けない程に強固なものになっていたのだ。ただ、メサイアの攻撃を全て回避し、かすり傷程度にしかダメージを受けていなかったことが命取りになった。

「ミシェルって男は頭が切れるし、抜け目のない奴でよ。初代イリュージョン社社長が隠したはずの新資源を、そのデータだけは密かに持ち帰っていやがったんだ。んで、人工の新資源まで作っちまった。」

『なに?人工の新資源だと?』

破壊神の左腕の切断面からは黒い光が溢れている。

「しかもそれは今ココにある。」

スティングは自分の胸に親指を当てた。
そう。スティングの放つエネルギーは新資源並なのである。新資源のエネルギーの膨大さを甘く見ていた破壊神は見事に左腕を無くしてしまったのだった。

『油断した。だが貴様等を消した後、さらなる進化を遂げれば良いだけの話。腕の一本など・・・』

「《白影回羅》!!」

飛び上がったファムが回転して黒い軌跡を描きながら破壊神の右脚を切断した。再び不意を突かれた破壊神は距離を取った。

「良いぞファム!」

ファムはスティングの隣に着地した。
破壊神から憎悪の念と殺気が溢れだす。

『こ、の、小娘がぁ・・・。調子に乗るな!!!』

破壊神の切断された手足から新たな手足が飛び出す。それは煌びやかな装甲を持った手足ではなく、気味の悪い液体がついた生々しい緑の手足だった。
さらに全身の装甲にヒビが走り、中から同じく緑の身体が姿を現わした。

「それがお前の本当の姿か?醜いな。」

『黙れ。本来貴様等などには指を触れることもできない存在の我を、よくもここまで愚弄してくれた。』

破壊神は突然目の前から消え、ファムの目の前に現われて首を掴んだ。

「ぐぅ・・・っ」

『所詮貴様等は無知で非力な、我々が相手にもしない存在・・・。窮極の門からの使者は貴様等のような存在を作り出した地球を不必要だと判断した・・・。宇宙を消すとは神々の怒りに触れる暴挙なのだ!』

スティングは眉をしかめる。

「窮極の門?使者?何の話だ?」

『貴様等は永遠に知ることの無い世界の話だ。』

破壊神はファムを掴んだ手に更に力を加える。そして電流を流した。

「うぁぁぁぁ・・・!」

「やめろ!」

スティングは破壊神へエネルギーを纏った腕で打撃を加えた。避けた破壊神はファムを放すと空中へ飛び上がり、雷を落としてくる。倒れたファムを抱えあげたスティングは雷撃を避けながら走った。

「ファム!大丈夫か!?ファム!!・・・くそっ、気を失ったか?」

「だ、大丈夫です・・・。足手纏いにだけはなりたくないですから!」



上を見上げると全身に電気を走らせた破壊神が浮いている。
二人は突攻した。

「今のオレ達ならこいつを倒せる!オラァ!!」

しかしスティングは破壊神の背後から具現化した巨大な雷の右腕に殴り飛ばされた。
ファムも雷の左腕に掴まれて全身に電撃が走る。

「ああぁぁぁぁぁ!」
「ファム!」

スティングが胸の前でエネルギーを溜める。

「その娘を離せ・・・貴様は神などではない。ただの外道だ!」

光が大きくなり、銀色の輝きを放つ。

「時空をも切り裂く神速の突撃・・・」

体内に埋め込まれた人工新資源のエネルギーを全身に集め、スティングは銀の光に包まれた。
片足を一歩下げ、上体を低くして構える。
周囲の地面はエネルギーの衝撃でスティングを中心として円状にひび割れた。
破壊神が異常な気を感じてスティングの方へ向く。

「《インフィニティ・エクスカリヴァー》!!!」

刹那、銀光の一本線が破壊神を貫通して引かれ、輝くスティングは既に破壊神の背後にいた。瞬きをする間もない出来事であった。
次の瞬間、銀色の軌跡から亀裂が生じ、空間が割れた。
ファムを雷の手から放した破壊神も、銀色の輝きを放ち続けるスティングも固まって動かない。
先に口を開いたのは破壊神だった。

『今のは危なかったな。意識しなければ見切れなかった。』

「ぐ・・・」

スティングの両腕が肘から落ちた。さらに口から真っ白な液体を吐き出し、両腕と同じく身体も落下して地面に激突した。
エネルギーはまだ身体全体を包んでいる。

地面に倒れていたファムは這いずりながらスティングに近づいた。

「スティングさん・・・無事ですか?」
「ファムか・・・。無事ではないな」

「スティングさん、私はどうすれば・・・」

「どうしようか。オレの最強の突攻技インフィニティ・エクスカリヴァーが避けられるとは想定していなかったな。どんな反射能力だよ。」

さらなる進化で真の姿になった破壊神の強さはスティングの予想を遥かに上回っていた。

スティングは再び白い液体を吐く。男がもはや普通の人間ではないことを生々しく感じさせた。

(私が・・・スティングさんを守らないと!)

ファムは立ち上がった。影を全身に纏い、鎧姿に影の槍を携えた。その姿は西洋騎士のようである。
ファムの周囲にはまだまだ影が集まってきている。それはファムが完全に影を支配した証拠であり、クラスが《JOKER》となったことを示していた。

『娘。抗わねば楽に死ねたものを。』

破壊神がファムへ雷を放つ。

が、その雷撃はねじ曲げられ、破壊神自身へ直撃した。さらに破壊神は身動きできないほど身体が重くなり、制御できずに地面に激突した。

『な、にぃ!?』


ファムも、そしてスティングも、目の前の光景に目と口を開いて驚いていた。
破壊神が落下したことにではない。

目の前に

漆黒の衣を纏った仮面の男と、深紅の衣を纏った金髪の女が立っているのだ。

「フン、スティング。何だその様は?」

「私たちが助太刀するわ。」












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