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雪合戦
作:菜央


ゆきやこんこん
あられやこんこん
ふってはふっては
ゆきはつもる


少女は彼の隣でこの歌を歌っていた。
その声を聞きながら彼はストーブの暖かさで曇った窓の外を見ていた。
「なぁ!もうかなり雪積もってんじゃねーか!?」
少女,歩美と一緒に阿笠邸へ来ていた元太が言った。
「まだですよ。さっき降り始めたばかりじゃないですか。」
同じくして一緒に来ていた光彦が,元太を諭すように話した。

冬休みに入ってからほぼ毎日のようにこの3人は阿笠邸へ訪れていた。
今日も予定を立てるわけでもなく,ただ遊びに来たようだ。

彼は毎日毎日,よく飽きもせず,と呆れながらも平和だなと微笑んでいた。

そんな彼も最近はよく阿笠邸へ来ていた。

「ねぇ,コナン君。今日は何をしよっか?」

そう,彼はただこの3人,自称少年探偵団に付き合わされていただけだった。
見てくれは小学1年生。周りから見れば仲の良い子供たちね,と感じる。
しかし彼自身,違和感を感じずにはいられない。なぜなら中身は今より10才上の17才だからだ。

「ねぇコナン君聞いてる?」
「ぁあ,悪い。なんだっけ?」

別のことを考えていた彼は,全く少女の話が頭に入っていなかった。

「ったくよー,ちゃんと聞いてろよな。」
「そうですよ。最近きみはぼーっとしすぎですよ。」
そうかもしれない,と思った。
この少女のことになると,必死になる彼らに呆れながらようやく彼は話し合いに参加することを決めた。

「悪かったって。あれだろ?どうせ今日は何して遊ぶかって話だろ。」

聞いていないながらも,だいたい話の内容を把握していたところは,いかにも彼らしかった。

「おい灰原も考えようぜ。」
同じく話し合いに参加していない彼女へ元太が言う。彼女も,中身と外見が違う。そして彼女も彼らと同じ探偵団に入っていた。

「あたしはパス。昨日から風邪気味で少しだるいの。」
「えー,そうなんだ。残念。」
「灰原さん大丈夫ですか?」
残念がる歩美と,彼女を少なからず意識している光彦が心配する。

「ええ,大丈夫よ。雪が降っているなら外で雪合戦でもしてきたら?」

遊びに参加しない代わりに予定の案を上げた。

「おい,風邪ってホントなんだろうな。」

思いっきり子供の遊びに参加しないことを,まさか抜け駆けではないかと,彼が問うてきた。実際彼はまだ子供の部類に入るが,小学生に交じって遊ぶなど,なんとなくプライドが許さないのだ。

「あら,疑ってるの?風邪気味なのは本当よ。」

まだ疑う彼をたしなめるように笑いながら言った。

「煮詰まっててもしかたないでしょう。その内彼らの情報が入るわよ。ほら,もうみんな外にでてるわよ。一緒に遊んできなさいよ。」
どうせ暇なんでしょ,とニヒルな笑いを浮かべながら続けて言った。
あのなぁ,といいながら彼はしぶしぶ,先に行った彼らのあとを追った。



雪をこんなふうに遊びで触るのはかなり久しぶりだった。
雪合戦をやり始めた3人を横目に,彼はそっと雪を握った。
思わずつめてー,と声が漏れた。

平和なのはいいことだ。このまま平穏に暮らせたら,とふと思うこともある。しかしそうはいかないし,そうしているわけにもいかない。こうしている間にも,と焦りを感じていることもある。
今の彼にとって平穏であり続けることはない。また平和であり続けることもない。
自ら壊しにいくか,壊されるか。その二つ。
また生きるか,殺されるかの二つ。

だから彼にとって平和は,悩みの時間でもあった。


そんなことを真剣に考えていたとき,少女に名前を呼ばれた。
ん?と,顔を上げたとたんに顔面に切れるような冷たさを感じた。

雪,玉,だ。そう思うのに時間はかからなかった。

「おい,コナン!!何ぼーっとしてんだよ。」
「逃げないと,当たっちゃいますよ。」

そういいながら雪玉を彼にむかって投げる二人をよそに,笑っている少女。

「あははは!コナン君,雪いっぱいついてるよ。」

何か吹っ切れたような気がした。
雪のせいか,彼らの楽しそうな雰囲気のせいかはわからないが。
平和なら,そんな今を堪能してやろーじゃねーか,そんなことを思い,彼は雪をまるめはじめた。



「あらあら。随分と楽しんでるのね。」
うらやましいかぎりだわ,彼女はそう言いながら曇った窓を指でなぞった。
「よかったわぃ。最近,心なしか新一君は元気がないようじゃったからのう。」
この家の主人が言った。

事件があった方が,彼らしく生きられるのかもね,そう思いながら彼女は,そろそろ帰ってくるであろう彼らを思い,お湯を沸かしはじめた。



外をもう一度見れば,さっきのプライドはどこへいったのやら,いかにも楽しそうな彼の姿があった。


まだまだ彼は子供なのだと改めて思う彼女だった。


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