探しモノ
「和幸お兄ちゃん、その人達の名前は解る?」
冥が和幸の隣にちょこんと座り、首を傾げつつ、和幸を見上げた。
「ん、いや・・・特定するまではいってない。だが、怪しいのは・・・幹部連中かな」
和幸は少し考え込んでから、そう答えた。
「幹部って、死神長13人と調査チーム主任13人の内の誰かってコト?」
「ああ、よく知ってんな、冥」
「だって、あたしは閻魔様の遠縁だよ?それなりにこの機関の仕事のことは理解しているつもり」
冥はそう言ってニッコリと笑った。そして、ついっと入り口の方を見る。
「・・・誰か、来た」
ピーンポーン・・・
「里乃さーん、沙希です。いらっしゃいます?」
「あ・・・ハーイ、今開けまーす」
私は急いでドアを開けると、沙希さんを引き入れる。
「あら、和幸もいたの?・・・それと・・・その子は?」
「あたしは冥。閻魔様の遠縁なの」
冥はさっき和幸にしたように自己紹介をする。沙希さんは少し目を瞠って私を見た。
「冥の護衛が私の初仕事なんです」
「そうなんですか・・・。それで、里乃さんの所属はどちらになるんです?」
沙希さんは納得したように頷くと、そう問うてきた。
「死神、だと思います。・・・はっきりと言われたワケじゃないんですけど、呪殺だったそうですから」
「そうでしたか・・・。では引き続き和幸が面倒を見るのね。調査チームなら私がと思ったのだけど」
「・・・だな」
和幸と沙希さんが話している脇で冥が私を見やり、ソファーから立ち上がって私の袖を引っ張る。
藍色の目が何かを訴えていた。
「どうしたの?冥」
「お姉ちゃん、ちょっと・・・」
ぐいぐいと引っぱり、不審そうにしている和幸と沙希さんを後目に、冥は私を奥の部屋に連れていく。
「和幸と沙希は信用できると思う?」
「・・・思う、よ?・・・だって、志貴さんも信用して内部調査をお願いしてたんだから」
戸惑いながら答える私に冥は頷いて見せた。確認をしたかっただけらしい。
「そうよね?・・・なら、聞いてみたいことがあるの。・・・父がね、いつか来る閻魔法王に渡すべきモノがある。そう言って場所のヒントだけ教えてくれたの。・・・前々から不穏な動きはあったし、今回のことを企んだ連中に知られることを恐れたのかもしれないわ。・・・昔からここにいる和幸や沙希だったらそこにあるモノのことは知らなくても場所なら知ってると思わない?」
「うん・・・そう思う」
「じゃあ、善は急げよね!」
私は、早速和幸達に聞こうとリビングに戻ろうとした冥の腕を掴んで引きとめた。
「ちょっと待って・・・そのヒントを聞かれても私や冥の関係はバレたりしない?バレるのはマズイんでしょう?」
「うん。・・・でも大丈夫!誰に渡すものかっていうのは伏せるから。そうしたら、いくら和幸や沙希でもわからないでしょ?・・・犯人でない限り」
冥の言葉に少しどきりとしたが、私は納得して頷いた。
「ええ、そうね。」
私達は部屋に戻ると、和幸と沙希さんに、冥が閻魔でその従姉の私が閻魔法王になるという事情を伏せて、探しモノの説明をした。
「それでね、私が父から聞いたヒントはこうよ・・・“囲われし谷間の奥・光の元・望むもの・忘却の赤き炎に己の心を示し表せ”」
「囲われし谷間の奥?・・・なんか聞いたことあるな」
「忘却の赤き炎・・・赤い炎って・・・見たことがあったような・・・」
二人はそう呟きながら考え込む。
私達だけでは思い浮かぶどころか、どこから調べたらいいかわからない状態になりかねなかっただけに、二人に思い当たることがあったということはありがたかった。
「そうか、裁きの間だ!」
和幸が立ち上がる。
「そうよ!裁きの間で見たんだわ!」
沙希さんもポンと手を打って声をあげた。
「裁きの間?」
聞いたことがないのだろう。冥が反芻して首を傾げる。
「閻魔族でも知る者は少なくなってるのか・・・大昔に使われていた照査室みたいなもんだな」
「今は封じられた“死の荒野”にあったハズよね?」
沙希さんの問いに和幸は頷く。
「ああ。“死の荒野”のさらに奥に裁きの間があって、そこに忘却の赤き炎と回想の蒼き炎ってのがある。ずっと昔には使ってたが、照査室が出来た今は使われてねぇな」
「転送装置は死神長か調査チームの主任じゃないと使えないようになっているし・・・それじゃなくても、危険過ぎて二人では行かせられないわね。・・・かといって、私達がついて行くこともできないし」
沙希さんは考え込む風にして言うと和幸を見上げる。判断をしかねるような表情だ。
「死神長の誰かに頼む、とか?」
ちらり、と和幸が冥を見ると冥は激しく首を横に振った。
「ダメっ!お兄ちゃん達は信用してるから教えたの!他の人は今の状態じゃ、信用するなんて無理よ!・・・それに死神や調査チームにあんまり広めたくないの。閻魔族のことだし・・・」
「・・・だろうな」
和幸は頷き、私を見る。
「ともかくだ、危ない所にあるってコトがわかった以上は、二人で行こうなんて考えないこと。俺たちの手が空くまで待ってろ。良いな?」
そんな時間はない。と冥が騒ぎ出すと思ったが、意外にも殊勝に冥は和幸の言葉に頷いた。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。