これからが始まり
こうして1つの事件が終わった。
閻魔法王の誕生に閻魔族達は大喜びだった。なかでも父さんと血筋を同じくする閻魔族のおじ様やおば様達はこれでもかというくらいに私を褒め称え自慢した。
閻魔族によるお祭り騒ぎは死神や調査チームの面々まで巻き込んで、閻魔界中大騒ぎになっている。
「お姉ちゃん」
喧騒を避けて外で空を眺めていた私のところに冥がやって来る。
「冥、良かったの?抜け出して」
「それはこっちのセリフ」
「だって、もう誰が主役かなんて関係ない状況じゃない。しかもいつまで続くの?この大騒ぎ」
「ふふっ、みんな嬉しいのよ。・・・やっと閻魔界が正常に動くようになるのだもの」
「正常に、か」
「うん」
きっと、これからが本当の私の戦いになるのだろう。
閻魔法王なんて大層な役割を受けてしまった以上、それはしょうがないことなのだが。
「まぁ、いいかー」
「頑張れ~、お姉ちゃん」
「ん~」
クスクスと笑いながら、冥は私にエールを送ってくれる。
「ねぇねぇ、達真達の穴埋めに新しい死神長を決めたでしょ?」
「うん」
「それを機に、他の死神長と調査チーム主任を総入れ替えして法王府っていうの作ったんだって!」
「知ってるわ。志貴から聞いたもの・・・確か、志貴直属の部下達と引退した死神長と調査チーム主任をまとめて1つの内部調査組織にしたんでしょ?」
「そうそう!それでね、そのトップは誰だと思う~?」
「冥」
「・・・えー・・・知ってるの~?」
即答すれば、冥は心底がっかりしたような声をあげた。
「だから言ったでしょ?志貴から聞いたって」
「・・・じゃあ、和幸が今まで通り単独を許される死神であることを望んだのは?」
「知ってる。・・・和幸の場合は復讐が目的だから」
「・・・あー、そっちの理由も知ってるんだ」
「まぁね。和幸から直接聞いたし」
「え~ッ!?いつの間に?」
「・・・内緒」
お互いに弱い部分を曝け出したあの晩のことは、2人だけの秘密だ。
「・・・怪しい」
キラン、と冥の藍の瞳が輝く。要らん所にスイッチが入ったようだ。
「お姉ちゃんってああいうタイプが好みだったんだ?」
「人間も閻魔族も同じね~、そういう話題好きなんだ?」
「あ!質問を質問で返さないでよ~!!」
「ハイハイ」
「お姉ちゃん!!」
尚も喰い下がる冥をのらりくらりとかわして私は北庁舎へと戻った。
お祭り騒ぎをしているからといって、仕事が無いわけではない。ちゃんと死神達は死者をお迎えに行って、調査チームはその人の一生の評価を下している。
元々は閻魔の仕事だが効率よく捌くためにこうなったと志貴が教えてくれた。
そういえばお祭り騒ぎが好きそうな彼も、今日は仕事だとぼやいていた気がする。
「和幸っていえば今日の仕事って・・・京都の方よね?」
和幸と聞いて冥は質問の答えかと目を輝かせたが、仕事のコトかぁ~とぼやいて頷く。
「そーだったと思ったけど?」
「京都か~・・・修学旅行行きそびれちゃったな~。あと3週間後だったのに・・・」
今更だが惜しい事をした。しかし“秋波里乃”は死んじゃったから修学旅行には行けないのだ。
そう言えば、冥は困ったように笑う。
「行き先は京都?・・・霊体のままならあたし達に人混みとか入館料とか入ったらダメなトコとか関係ないし、裏側楽しみ放題だよ?・・・もちろん、実体化して楽しむっていう手もあるけど、お姉ちゃんの場合は知ってる人に会わないようにしないと」
「そっかーそうだよねー・・・“下”に行けることは行けるのよね~」
そのまま考え込み、一つの名案が浮かぶ。
思わず口元が歪んだ。冥も同じ事を考えていたようで、楽しそうに目を輝かせている。
「冥ちゃ~ん?・・・“新人の死神”である私のサポートって和幸だったよね~?」
「・・・お土産は京都名物八つ橋でいいよ~?向こうで実体化すれば、お土産屋さんで味見くらい出来るでしょ?」
すかさずお土産を請求する冥に、私はにっこりと笑顔を向けた。
チートだと言うことなかれ。閻魔族は死人ではないのだから別に実体化したってイイのだ。盗むわけでもないし、イメージを持ち帰るだけなのだから。(イメージを持ち帰ったら実体化し放題(笑))
「ではでは、閻魔代行?」
「はいは~い」
「ちょ~っと、和幸君のところに行って来ますね~」
「いってらっしゃ~い」
ひらひら~と手を振る冥に見送られ、私は北庁舎を飛び出す。
「法王様!?どちらに!?」
報告に来たらしい志貴が、すれ違う私に驚きの声をあげる。
「ちょっと、京都まで~」
「・・・お待ちください!ご報告が・・・ッ!」
「代行に任せる~」
追いすがる志貴にヒラヒラと手を振り、私は“下”に行くための転送装置がある場所まで転移した。
――――――――
「・・・見つからねェ・・・くそ~、里乃並の逃げ足だぜ・・・こういう時は、もう1人いて欲しいんだけどなぁ」
ぼやく和幸の上に転送の光が降り注ぐ。
「・・・は!?」
目を丸くして天を仰ぐ和幸に影が差し―――次の瞬間、和幸は降ってきた私に押しつぶされてぐぇ、と呻いた。
「あ、ごめん、和幸」
「・・・って、なんでここに里乃がいんだよ!」
「なんでって・・・修学旅行?」
必殺、笑ってごまかせ。
「・・・修学旅行って・・・おまえなァ・・・」
呆れた様子で溜息をつく和幸。
「いいじゃない。和幸の相方はいないんだから。それに私のサポートは和幸でしょ?」
「おいおい、志貴に後で嫌味を言われるのは俺なんだぞ~・・・っていうか、サポートいらねぇだろ、お前」
「大丈夫!閻魔法王様の命令!!」
私が胸を張ってそう言うとぼそっと和幸が呟く。聞き取れなかったので私は聞き返す。
「何て言ったの?」
「職権乱用って言ったんだよっ!!・・・はぁああああ・・・」
ヤケで怒鳴った和幸は、盛大に溜息をついた。
「・・・あ」
「なんだよッ」
機嫌がよろしくないので2割増しで目つきが悪い。
私は少しばかり怯んで―――でもやはり言った方がいいと思ったので、和幸の後ろを指さした。
「いや、その、お迎えのターゲット」
「~ッ!・・・おまえそれ、早く言えよッ!!」
叫びながら和幸はターゲットを追いかける。私はそんな必死な様子の和幸を見て、クスクスと笑いながら和幸を追った。
きっと、これからも色々なことがあるだろう。でも私はそれでも何とかなると信じている。
私には頼もしい仲間がいる。もう“秋波里乃”だった頃には戻れないけれど、それでもきっと・・・。
★おしまい★
最後までお付き合いいただきましてありがとうございます^^
これにて「死神と私」大団円でございます。
続編を企画中で~す♪
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