サーチオーロラ
私達は調査するための施設“照査室”というところに来ていた。和幸が腕のエンブレムを見せると扉が開く。
バリアーのような光の幕をくぐると次の瞬間には、まるで病室のような白を基調とした広い部屋の真ん中に私達は立っていた。
「秋波里乃さん、前に進んでください」
「あ、はい」
目の前にある大きな机に座っている、女の人に手招かれる。
「里乃さん、あなたの健康状況は非常に良好でした。まず間違いなく、鬼籍に載るのはもっと先だったはずです」
「え、あ、そうなんですか・・・」
間抜けな答えを返してから、私は和幸に視線を向ける。
「調査するんじゃなかったの?」
「さっき、光の幕をくぐったろ?あれで全部調査できるんだ。え~と、なんつったっけか?」
「サーチオーロラです」
和幸が聞くともう何回も聞かれているようで、ウンザリといったように女の人は溜め息混じりに答える。
和幸はそう、それそれ。と言いながら私の方に向き直る。
「そのサーキンなんとかってのが、ぜーんぶ調べてくれるわけさ」
「サーチオーロラ!」
ガタン、と立ち上がった女の人は堪忍袋の緒が切れたという顔をしながら叫んだ。
「解ってるって、サーモンチキンだろ?」
「・・・かぁ~ずぅ~ゆぅ~きぃいいい・・・」
「そんなに怒んなよ、沙希。サーチオーロラだろ?冗談も通じねえヤツは嫌われッぞ」
和幸はけろりとした顔で言うと、沙希さんの方に私を押しやる。
「で、こいつはどっちよ?」
「決定権は上官の志貴様にあるわ」
「でも、大体の所は解るんだろ?」
ずいっと和幸が身を寄せると、沙希さんはたじろぐ。
「・・・規律違反だよ、和幸。調査チームから死神が情報を聞き出してはいけない」
「志貴!」
なおも和幸が沙希さんに聞き出そうとしたとき、私の後ろから声がかかる。ビックリしたのは私だけではないようで、和幸も沙希さんも驚いた様子でこちらを見ている。
私の真横に来ると、志貴と呼ばれた男の人は私に笑いかけた。
「里乃さんには後ほど個別にお知らせします。まずはこれから使う部屋の方に案内させましょう」
「あ、はい、ありがとうございます」
「志貴!なんで、おまえが最前線の照査室までくんだよ?」
和幸は掴みかかりそうな勢いで志貴さんにくってかかる。
「・・・里乃さん、和幸は何か失礼なことをしませんでしたか?」
「おい!志貴!無視すんな!」
「いえ、別に。・・・あの・・・?」
かみつく勢いで真横で叫ぶ和幸と、それを平気な顔で無視している志貴さんに目をやる。志貴さんは戸惑う私を見てクスリと笑う。
「ああ、僕と和幸は上官と部下という関係以前に兄弟なんですよ。ちなみに僕が兄で和幸が弟です。詳しい話はあとで和幸に聞くといいですよ。しばらくは和幸があなたのサポートにつきますから」
「あ、はい」
私は和幸を見る。和幸はじっと志貴さんを睨むように見つめている。
「そうそう、僕がどうして本来いるべきはずの閻魔様の元を離れて、ここに来たかっていうとね、しばらくの間、照査室を閉じることになったからだよ」
笑顔のまま、志貴さんは先ほどの和幸の質問に、やっと答えを返す。
「照査室を閉じる!?どういうことです?志貴様」
沙希さんが驚きの声をあげると、志貴さんは表情を曇らせる。
「うん、閻魔様がおっしゃるには、ちょっと問題が起こったみたいでね。今日は里乃さんが最後だったようだからここを一番最後に閉じることにしたんだよ。他の所はもうみんな閉じてある。・・・それで、君達を信頼して、頼むんだけど・・・」
「内部調査か?」
志貴さんの科白を和幸が引き継ぐ。志貴さんはじっと和幸を見つめ、頷く。
「頼めるかい?和幸」
「これやったら・・・」
「・・・許可が下りる可能性は高くなるね」
「じゃ、やる。沙希も里乃も勘定に入ってんのか?」
「・・・沙希だけ。里乃さんには他の仕事を頼むことになりそうなんだ。それも後で里乃さんに直接お知らせしますから。・・・取り敢えずここは閉じる。沙希は本部に戻ってくれ。和幸は里乃さんを部屋に案内して」
志貴さんの指示に二人は大人しく従い、私は和幸に連れられ照査室から宿舎に移動することになった。
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