決意
「・・・お姉ちゃん・・・」
「そっか、かっこいいなぁ。・・・かっこよすぎて・・・」
ハッとして私を見る冥に、気にしないでと言うつもりで微笑みかける。でも、言葉が詰まってしまう。
和幸達に悟られやしないかと内心ヒヤヒヤしているのに、目の奥が熱くなってくる。
「・・・かっこいいけどそんな死に方されたら、その大切な人っていうのはどう思うんだろうな。・・・俺はそんなのごめんだ」
和幸の言葉がそのまま私の言葉だった。
もっと父さんに一緒にいて欲しかった。残された母さんや私の気持ちはどうなるのだろう。そうは考えなかったのか・・・それとも、考えられるほどの余裕がなかったのか・・・。
「そうね。封磨様のことは尊敬しているけれど、そんな死に方をされるのは嫌だわ」
沙希さんも同意する。
「封磨伯父様は・・・何も言わずに閻魔界から消えて、そして何も言わずに死んだ。自分の言葉が何かを変えてしまうことを怯えているかのように」
冥が呟くように告げる。それは父さんが原因となった事件を示唆しているようだった。
「それって、封磨様が起こした事件っていうのに関係しているのか?」
私と同じことを考えたらしい和幸が訊ねる。すると冥は困ったように肩を竦めた。
「多分・・・私も簡単に聞いただけだからよくは知らないけど、300年前に起きた人間界だけでなく閻魔界までも巻き込んだ大きな事件。それは、封磨伯父様の一言から始まってしまったって」
冥が苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。口にすることすら憚られるような事件だったのだろうか?それとも―――。
「閻魔族最大の不名誉。・・・以前そんな言葉を聞いたことがあったな。封磨様の栄光が語られるときに必ずそんな陰口をたたくジジィどもがいた。つまりそういうことなんだな?」
和幸が確認すると冥は黙って頷く。最大の不名誉、そう言われるほどのことをしてしまった父さんはその時どう思っていたのだろう?
もう二度と、人間界の地を踏みたくはないと思わなかったのだろうか?人間を嫌いになったりしなかっただろうか。もしかして閻魔法王を生み出すために、我慢して母さんと結婚したのだろうか・・・。
ぐるぐると嫌な思考が頭の中をめぐっていく。不意にポン、と肩を叩かれる。
「!・・・和幸」
「大丈夫か?里乃。・・・お前、感情移入しすぎ」
「ああ、うん。そうだね・・・」
心配そうな和幸に笑顔を向ける。
うん。ちゃんと笑えている。―――大丈夫だ。ちゃんと笑えている間は、自分の感情を上手くコントロールできる。
昔から私は自分の感情を上手くコントロールできないことがあった。
その原因はわからなかったけど、きっと力を封印されていたから、その反動だったのだろう。力を取り戻せばすべてがうまくいく。きっとそうに違いない・・・。
「封磨様のことはわかったし封じられし地に行こう、冥」
「おい、里乃!!」
和幸が慌てる。
“死の荒野”は閻魔界の中でも最も危険な場所だ。私達だけでは行かせられないと彼が前にも言っていたのは覚えている。
でも、それでも行かなくてはいけない。私が力を取り戻さなければ始まらない。きっと今回のことを企んだ人達もそれを待っている。
閻魔法王の私が行けば、裁きの間の封印が解ける。その時こそ彼らにとっての好機であり、本性を曝す瞬間なのだ。
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