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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
魔導の祭典〜マジックバトルカーニバル〜
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第二十一話 赤髪兄妹

「はい、ご苦労様でした」


そう言ってにっこり笑う受付嬢から報酬を受け取り、俺はシオン達が座っているテーブルに向かった。


嫉妬の魔神レヴィアタンが王都を襲撃してから3日。

流石魔法が使える異世界、壊れた建物の修復は早かった。現在既に王都は前のように賑わっている。


「はい、これエステリーナの分な」

「ああ、ありがとう」


俺は金貨が入った袋をエステリーナに渡した。


「いやー、最近仕事がはかどるなぁ」

「ですね」


隣に座っているシオンが頷く。

はかどる理由は、それなりにみんなレベルが高くなったので高難易度のクエストに行けるようになったからである。

それと、魔神の一人であるレヴィアタンが自分の領土に帰ったというのも大きい。

あいつがいたら厄介ごとしか起こらんしな。俺の不幸スキルと合わさったらとんでもないことになる。

・・・去り際に可愛らしい一面を見れてかなり照れたんだけどな。


「ご主人様、そろそろ日が暮れます。本日の夕食用の食材を買いに行ってもよろしいですか?」

「あ、そうだったな。俺も行くよ」

「え、しかし・・・」

「女の子にいっぱい荷物持たせるわけにはいかないだろ」


俺がそう言うとシルフィは嬉しそうに頷いた。

まったく、いちいち反応が可愛いやつだ。・・・ロリコンじゃないからな?


「じゃあ、そろそろ行くよ」

「うん、お疲れ様」


俺はエステリーナに手を振って立ち上がり、振り返った・・・のだが。


「・・・?」


何故か俺の背後には見たことのない男が立っていた。

誰だこの人、なんで俺の背後に・・・。


「おい、貴様」

「ん、俺っすか?」

「お前以外に誰がいる。貴様、そこにいる麗しい女性とどういう関係だ?」

「はい?」


麗しい女性?

とりあえず振り返ってみると、エステリーナが座っていた。


「エステリーナのこと?」

「そうだ」

「別に、ただの仕事仲間ですけど・・・」

「嘘をつけええええい!!!」


そう言って叫ぶ男に突然殴られた。

痛くはなかったけど俺は隣の机に突っ込んだ。初対面の人に殴られるなんて、ついてない。


「な、ジーク!貴様、何を──────」


倒れた俺に駆け寄ろうとしたエステリーナが男を睨みつけた。そして硬直する。


「え、え?」

「おお、ようやく気付いてくれたか!久し振りだな、会いたかったぞっ!!」


そして、ものすごい笑顔で男はエステリーナに抱き着いた。


「な、な、何をしているんだ兄上!!」

「兄上?」


エステリーナが必死に男を引き離そうとしながら口にした単語。

・・・よく見たら、似てる気がするようなしないような。

いや、髪の色一緒じゃん。


「・・・エステリーナのお兄さん?」

「その通り!我こそは世界一美しい妹、エステリーナ・ロンドの兄!イツキ・ロンドだ!!」

「ぐっ、いい加減離れろッ!!」

「ぐべっ!?」


高らかに兄宣言をした男・・・イツキは、妹であるエステリーナに思いっきり殴られて吹っ飛んだ。


・・・全然状況が理解出来ないんですけど。












◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇









「・・・ふむ、悪くは無い味だ」

「・・・」

「なんだ?文句でもあるのか?」


当たり前だろが。

なんで俺の事殴っておいて普通に人んちで飯食ってんだよこの人。


「本当にすまない。兄上はいつもこんな感じで・・・」

「ははは、これも兄妹の愛が成す─────」

「うるさいっ!」


顔が赤いエステリーナに殴られても嬉しそうなイツキ。

なるほど、ドMか。


「それで、いつ戻ってきたんだ?」

「ついさっきだ。一刻も早く我が最愛の妹に会いたくてギルドを訪れたんだが・・・」

「はぁ・・・」


エステリーナがため息をつく。


「イツキさんって依頼に行ってたんですか?」

「いや、依頼ではない。帝国の方に少し用事があってな」


帝国・・・?

どうやらこの世界にはこの王国以外にも帝国などの国もあるようだ。


「実に三ヶ月ぶりに帰ってきたら、貴様のようなひっつき虫がエステリーナと仲良さげに話していたものだから思わず剣を抜きかけたぞ」

「・・・抜かなくて良かったですね」


イツキさんに殴られた時、シルフィが無表情で魔力の糸を周囲に創り出し、ダガーに手をかけていたのを俺は見ている。


「それで、兄上はこれからどうするのだ?」

「もちろん自宅に戻る。しかしまた二週間後にはここを出なくてはならんからな。とりあえずゆっくりさせてもらうとする」

「・・・あれには出るのか?」

「ふふ、当たり前だろう。一週間後だったな」


・・・何の会話だ?

あれってなんだろう。


「あれってなんなんだ?」


気になったので俺はエステリーナに聞いてみた。イツキさんが俺を睨んでいるけど無視しよう。


「む、ジーク達は知らないのか?この王都では毎年この季節になるとある大会が開催されるんだ」

「大会?」

「ああ、王国中から強者達が集まり、王国の頂点に立つために戦う、祭り・・・とでも言うべきか」


おお、何かすげえ。


「《ローレリア魔闘祭》。優勝すれば金貨100枚にその年の王国最強の称号が得られるんだ」

「おおおお!」


それは是非とも参加したい。

金貨100枚とかおいしすぎる。


「で、それにエステリーナとイツキさんは出場するのか」

「ああ、毎年出ているからな。ちなみに兄上は魔闘祭の三年連続優勝者だぞ」

「へぇ、そりゃすご・・・」


そこで言葉を切り、俺は不敵に笑うイツキさんを見た。

・・・こんな、ドM兄が、三年連続、王国最強?


「貴様も出場するのか?ならば完膚なきまでに叩き潰してくれる」

「まじか」


どうやらその祭、盛り上がりそうだ。

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