そして朝が来る縦書き表示RDF


そして朝が来る
作:並盛りライス


「おはよう」
 声が裏返った。もう朝が来ないかもしれないと思っても、星は徐々に消えてしまう。
 体育座りをしていたら、足がもつれて立てなかった。
 昔はよく何もない所で転んだものだけど、今日ほど泣きそうになったことはなかったように思う。

「変なヤツ」
「あんたも相当変わってる」
「冗談。あたしは平凡で普通の女子高生よ」
「だって、あんたが話す物語には、二人以上の人間が出てこない」
「へぇ、ちゃんと聞いてたんだぁ。寝てるのかと思ってた」
「あんたは怖くないの?」
「何が?」
「夜が明けたら、消えてしまうんじゃないかって……僕はいつも思ってる」
「バカね、君はソコにいるじゃない」
「本当に?あんたがそう思ってるだけかもしれない。僕なんていうものは無くて、これはあんたが想像しているに過ぎないんじゃないの?」
「だって、あたしは君に触れることができる」 「あんたが、触れたと思ってるだけかもしれない」
「だってちゃんと、体温も感触も……」
「指先が嘘をついてるのかも?」
「うるさいなぁ、君は存在している。それで良いじゃない」
「まぁいいや、そういうことにしといてあげる」
 そよ風が、顔を撫でた。春の匂いがした。小鳥の鳴く声が聞こえる。ちゃんと、ここに存在しているという実感はない。
「君、小学校で自分だけ浮いてるクチでしょ」「得意満面に言われても嬉しくないよ。まぁ間違ってないけど」
「皮肉屋なんだぁ」
「あんたは、どうなの?」
「ん〜普通……かな」
「分かりやすいな」
「ガキの癖に生意気」
「女の癖に生意気」
「うるさい、消えちゃえ」
 女の影が叫んだ。僕は、ここに居た。
 朝が訪れた。女の影は消えていた。全ては僕の想像だったのかもしれない。
 背中のコンクリートの壁から冷気が伝わってくる。
 朝焼けがビルの背後から昇ってくる。
 体育座りをしていた膝が、ガクガクした。喉が乾いていて、酷く痛い。
 立ちが上がろうとしてみたが、足がもつれて上手くいかない。
 周りを見渡すが、もちろん誰も居ない。 おはようと叫んだつもりだったが、裏返った声がヒューと鳴って反響しただけだった。
 ここには誰もいない。確に僕が存在していると実感した。
 そして……今日ほど泣きそうになった日はなかったように思う。














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう