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冬休みにあった それだけの話
作:滾



一日目 祖父の入院


祖父が入院した。
祖父、というのは母方の祖父の事で、父方の祖父は僕が中学生の時に亡くなっている。
基本祖父は病気をするような人ではなかったために、僕等は少し心配していたのだが、祖母の話を聞く限りさほど大変な事では無いらしい。
なので僕等は祖父の家に泊まりがてらのお見舞い、基、お見舞いがてらのお泊りに行くことにした。
ついでにお年玉も貰ってしまおうという魂胆である。
しかし、祖父の家は敷地こそ広いものの相当古い。というかぼろい。
未だにトイレ、というか便所は外にあるし、お風呂も外にあってしかもそこの電灯が点かない。
畑があって、そこで野菜を作ったりしている。
そんな家で、祖父と祖母は叔父と一緒に暮らしているのである。

祖父の家について、新年の挨拶をしてから早速祖父の入院している病院に向かう。
祖父の入院している病院はそれほど大きくなく、三箇日さんがにちという事もあって患者さんはほぼ居なかった。
二階にあるという祖父の部屋に、道順を覚えるようにして母と祖母と妹と僕で向かう。
途中で見かける患者さんは恐らくほぼ入院患者さんで、更にその殆どがお年を召した方ばかりだった。まぁ、中には小さい子も数人見受けられたけれど。
そんなこんなで、祖母について歩いているうちに祖父のネームプレートが出ている大部屋を見つけた。
シャッターで区切られている祖父のスペースに、シャッターを無造作に開けて入っていく。
久しぶりに見た祖父はそれほど狼狽しているようでもなく、僕は少し安心した。
何だ、来たのか。とぶっきらぼうに言ったつもりだろうが、祖父の顔は綻んでいた。
祖父が入院した理由は熱病で、今の所熱は引いているが何故熱が出ているのかという原因が解らないらしかった。
まぁ、それでも元気がないわけではなく、会話も全然できるようだった。
僕は妹に、「久しぶりの親子水入らずをさせてやろう」と言い、二人でそっと席を外した。
と、言っても特にする事もないため、僕と妹は連れ合って病院内をふらついた。
さっき来た廊下を、逆回しで歩いていく。
院内は暖気があまり聞いてなく、建物の中なのに息が白かった。
「ん?」
回り角を曲がって少しのところに、一人の女の子の姿が見えた。
小学校高学年か、それとももう中学校に入っているのか。それくらいの歳の頃の少女。
壁に手をついて、苦しそうにしている。
大丈夫だろうか・・・。
そんな事を思っていると、
「あ」
その子が急に吐いた。
そのまま蹲って、苦しそうにしている。
わ、どうしよ・・・・。
何て思っている内に、突然僕の隣から妹がその子に向かって駆け寄っていった。
その子の体を支えるようにして、背中をさすっている。
僕も遅れて駆け寄って、なにが出来るでもなく「大丈夫?」と言う。と、
「看護婦さん!」と妹が僕を見上げて叫んだ。
つれて来い、という意味だろうという事はすぐに解った。
「あ、おう!」
僕は頷くと、近くのナースステーションに居た看護婦さんを急いで連れてきた。
「大丈夫!?」と看護婦さんがその子を抱き起こして、病室まで連れて行く。
僕と妹は半ば取り残される形で役目を終えた。そのまま、しばらくそこでぼう、っとしていた。
何か、僕は情けなかった。

帰り際、妹がポツリと、
「あの子、血も吐いてた」
と言った。
「そうか・・・」
僕は呟いた。別に、なにが出来るでも無いし。
でも、と、吐く白い息を見て思う。
あの子は、こんなお正月を何回もここで過ごしてきたのだろうか・・・。と。
僕は「そうか・・・」ともう一回呟いて、
妹と一緒に母達が待つ病室へと戻っていった。


遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。
今年も去年より増して頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。











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