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紅き血に口づけを ~外れスキルからの逆転人生~ 作者:りょうと かえ

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僕の妹

 とはいえ、イライザのことはかなり省いた。
 やっぱり恋愛ごとを家族に言うのは恥ずかしい。

 フィオナは話を聞きながら、時折心配そうな顔になった。
 特にーー死霊術関係では、表情が険しくなる。

 一連の流れをかいつまんで話終え、僕は一息ついた。
 侍女が持ってきた紅茶が、すっかり冷めていた。

 フィオナは口を真っ直ぐ引き結び、紅茶に目を落としている。
 目線を落として考え込むのは妹が、何か言いたいときの仕草だった。

「まずは……兄さんが無事で良かったです」

「う、うん……」

「あとはパラディン内定もおめでとうございます……父さんも喜んでいると思います」

 フィオナが、きちんと座り直す。僕もつられて、ちゃんと座り直した。

「でも、正直に言いますけれど……兄さんには華やかな貴族は向かないです」

「……それは、まぁ……」

「パラディンはとても、とても名誉なことです……だから、怖く感じます」

 それは僕も思っていたことだった。
 ホワイト家は、元は騎士階級だった。
 武功をあげて騎士から貴族へと成り上がったのだ。

 問題はその後だった。
 父もそうだったし多分に僕もそうだけれど、貴族らしく生きることが苦手なのだ。

 社交界や外交で遅れをとり、貴族の最下級である男爵にずっと甘んじていた。
 利殖や魔術の才もなく、狭い領土の経営と兵役にてんてこ舞いだったのだ。

 それが、今や一転して大陸の英雄だ。
 とりあえずフィオナの将来は安泰だろうーー僕がどうなったとしても。

「わかるよ、言いたいことは……。背伸びするな、でしょ」

 フィオナは14歳、僕とほとんど違わない。
 だけれどしっかりしているし、妹の判断を僕は尊重していた。

「でしゃばりかも知れませんけど……」

「いや、そう言ってくれるのはフィオナだけだ。気を付けるよ」

 これは本心からだ。
 アラムデッドに住んでから特にそうだけれど、僕を様付けで呼ぶ人ばかりだったのだ。
 正直なところ、肩がこる。

「……私もそろそろ結婚相手を探す年齢ですけれど……」

 ふう、とフィオナが視線を宙にさ迷わせた。

「しばらくは……難しいよね」

「パラディンの妹、ですから。……その辺りは兄さんの腕次第です」

 ホワイト家の当主は僕で、名目的に妹も共同当主にはなるけれど。
 しかし今から決める結婚相手は、自由にいかないだろう。

 イライザが泣いたように。
 フィオナもまた、パラディンという称号に揺られる一人にならざるを得ない。

「王国政府から連絡があって、私ももう領地ではなく王宮住まいのようですし……」

「それは……僕のせいか」

「敵の人質にならないよう、です。死霊術師にしてみれば、死んでもいいわけですし」

「怖いこと言わないでよ……」

「でも、事実そうです。私ならゆかりのある人をーー」

 そこで、フィオナがぱたりと口をつぐんだ。
 僕たちには、父の戦死という出来事が横たわったいる。

「……言い過ぎました、兄さん」

 フィオナが、頭を下げる。
 僕は身体と腕を伸ばして、フィオナの頭を軽く撫でた。

「フィオナは賢いよ……多分、そうなる」

「……兄さん」

「暗い先行きだけれど、頑張るさ……。僕はやれることをやるだけだ」

 死霊術がどこまで出来るのか、僕には到底わからない。
 過去に埋葬された人間を呼び戻せるのかーー可能なら、恐らくやってくるだろう。
 もしディーンや聖教会の人間を甦らせて喋らせるなら、軍事機密も容易く手に入れられる。
 僕の心に影が差すけれど、せっかくの妹との再会だった。
 心が沈む話題は、このへんにしておこう。

 僕は身体をひっこめて、紅茶をすすった。

「……フィオナは何かあったりしたの?」

「文通友達が出来ました……です。しばらく前からやり取りしてるんですけど、とても頭がいい人なんです」

 フィオナが、少しだけ得意そうになる。

「へぇ……何ていう人?」

 僕は何気なく、尋ねた。

「マールという人です。字や文からすると貴族の女の子ですね」

「なるほど……」

「兄さんがアラムデッドに行かれてから、宅配物が紛れ込む事件があって……その元の荷主だったのです。変な始まりじゃないですよ」

「……まぁ、文通相手にまで口を出したりはしないよ」

 なんとなく、嫌な予感はするけれど。
 それでも文通相手とはいえ、迂闊なことはフィオナはしないだろう。

 これから王宮住まいになるなら心休まる文通友達くらいはいないと、かわいそうでもある。
 妹も僕と似た性格だーー社交界向きじゃない。

「それで、他にもーー」

 フィオナが僕のいない間のことを、話始めてくれる。
 先のことはわからない……けれどもこの時間はかけがえのないものなのだ。
 それだけは、確かだった。
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