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紅き血に口づけを ~外れスキルからの逆転人生~ 作者:りょうと かえ

覚醒と帰還

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もう一歩の作戦

 謝られるようなことは、僕の記憶にはないけれども。

「アルマ様にスキルを教えたことです……ずっと、気になってました」

 ああ、そのことか。
 そういうと、アエリアはぺこりと頭を下げた。

「ごめんなさい……秘密にします、と言ったのに」

 相手があのアルマじゃ、仕方ないだろう。
 あの底知れない人にかかったら、アラムデッド人では逆らえない。

「……それは、わかってるよ。相手が相手だし」

「はい……今回、ついてきたのも埋め合わせがしたくて」

 アエリアが、そのまま足元を這ってきた。
 僕の膝のあたりに、彼女の顔が来る。

 柔らかそうな頬が、僕の膝にあたりそうになる。
 アエリアは僕の膝をつかむと、体を起こしてきた。

 一気に、僕の胸のあたりにアエリアが近づいてくる。
 濡れた髪のかすかなしずくが、僕を覆う布に落ちていく。

「話したかったのは……エルフの計画のことです」

 アエリアの声はかつてないほど真剣だ。

「もし、エルフが反乱しても勝てるわけないですよね? それどころか、ブラム王国と繋がってただけで厳罰を受けるはずです」

「それは、その通りだね……」

 悪いがエルフの全員が反乱に参加しても、勝ち目はほとんどない。
 わずかな間なら優位には立てるだろう。

 だが、王都外のアラムデッド軍が集結すればそれも終わりだ。
 せいぜい一ヶ月程度で鎮圧されるだろう。

 ブラム王国が大きく動けば、ディーン王国も応じて動く。
 どれほど長引くか決着がどうなるかは見通せないが、二ヵ国と戦い抜ける力はブラム王国にはないはずだ。

 最大限にうまくいっても領土の切り取り、多少の略奪、要人の暗殺程度だ。
 アラムデッド王国全土が、ブラム王国の支配下に置かれるわけがない。

 エルフはどこかで切り捨てられ、総攻撃を受けるだろう。
 残酷なヴァンパイアが、反抗したエルフに対して容赦するとは思えない。

「私の公爵家は、エルフとも交易しています。おこがましいかも知れませんが、見過ごせません」

 アエリアがため息をつく。
 ヴァンパイアらしからぬため息だ。

「……私の内にあるのは、やっぱり血を求める本性です。ジル様の血は美味しいですし……でもエルフ達にこんな生き方をさせるのは、間違っています」

 一段と、アエリアが顔を寄せる。
 アエリアはイライザとも仲がいい。

 多分に、アエリアがディーン人の気質に近いものを持っているからだ。
 それにアルマに対する反発心もなければ、案内役を買って出ることもないだろう。

「本当は嫌いなんです、自分のこともヴァンパイアのことも……。ほとんどのヴァンパイアは、西のエルフのことなんて気にしないでしょうけど。……私は、すごく嫌です」

 アエリアは、言葉を切った。
 気持ちは、痛いほどよくわかる。

 僕も契約魔術がなければ、シーラをすぐに解放した。
 この数日間を見れば、エルフが反乱しても仕方ないのはわかる。

 しかし、僕たちに出来ることは何もない。
 このまま、エルフの情報だけを持ってディーン王国に向かうしかーー。

 いや、違う。
 まだほんの少しだけ、僕に出来ることがある。

「もう一歩……踏み込めるのか」

 僕の脳裏に、危険な考えが浮かんだ。
 遠回りにもなる、成果はないかも知れない。

 乗りこむのだ、エルフの会合に。
 でもそのまま行っても駄目だろう。

 ブラム王国への手土産に殺されるだけだ。
 もう数手あれば、危険をかなり減らせるけれど。

 僕は頭のなかで、急いで計画を組み立てる。
 危険の意味、得られるものを天秤にかける。

「気がつかれましたか?」

 アエリアの瞳が、潤んでいる。
 そう、僕に出来ることはあった。

「……言いたいことは、わかった……」

 イライザの力を借りれば、僕はエルフに変装できる。
 シェルムの供として同席できれば、会合の発言権もあるだろう。

 うまくすれば情報を得るだけでなく、反乱を思い止まらせることができる。
 ただ、当然危険だ。

 ディーン王国と繋がりがあるとわかれば、この村の立場は悪くなる。
 最悪の場合は、シェルムともども殺される。

 しかし、情報だけでも利益は大きい。
 ディーン王国軍がアラムデッドへ行くなら、僕のこのルートを使いたいはずだ。

 エルフの村を通れるのか通れないのか。
 ブラム側の敵がいるのかいないのか。

 それが少しでもわかれば、はるかに動きやすくなる。
 その後の展開が、かなり違うものになる。

 もちろん、会合でブラム王国への接近を止められれば最上だ。
 完全にブラム王国の裏をかける。

 ディーン王国人として……申し分のない働きだ。
 爵位の昇格もあり得る大功だろう。

 シーラが湯気の中、僕に近づいてきた。
 肌が桃色に染まり目に力がこもっていた。

「……ご安心くださいです、ご主人様は私が守ります」

「その……僕はご主人様じゃないんだけど」

「いえ、そう呼ばせてくださいです」

 シーラが片膝を立てて、ひざまずいた。

「身勝手なお願いなのは、わかっています……。それでも母と、この村、そしてアラムデッドのエルフすべてのために……!」
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