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紅き血に口づけを ~外れスキルからの逆転人生~ 作者:りょうと かえ

覚醒と帰還

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調べるイライザ、洗われるシーラ

 ジルが滞在する館の浴場で、シーラとイライザが向き合っている。
 二人とも、全裸である。
 メイドも側に控えているが、イライザは椅子に座ったシーラの身体を水洗いしていた。

 ジルと合流し経緯を聞いたイライザは、契約魔術の書類を確認するや、即座にシーラを連れ出したのだ。

 いわゆる身体検査だ。
 イライザは、全裸になったシーラをまじまじと余すところなく確認した。

 ほっそりとした白い肌、ほどよく成長を感じさせる胸、透明感のある金髪、驚くほどの美少女だった。

 軽く見て触れる限りでは、契約魔術以外は感じられなかった。
 焼き印も刺青どころか、傷ひとつついていない。

 まさに、非の打ち所のない外見の女の子だ。
 早くもジルは、同情心を抱きつつある。
 彼の良いところでもあり、悪いところでもあった。

「それは……?」

「石鹸よ、ちょっと魔術がかかってますけれど」

 メイドから渡された乳白色の石鹸を手に取り、イライザは水と自分の魔力を混ぜ合わせていく。

 これを使えば、表面的でなくもっと深くまで調べることができるのだ。

 ゆっくりと、イライザがシーラの指先から腕へと泡を立てていく。
 もちろん、鑑定魔術を浸透させるのも忘れない。

 たとえどんな罠が仕掛けれていたとしても、これでわかるはずだ。
 それとは別に、水を弾くようなみずみずしくて決め細やかな肌だ。

「……くすぐったいです」

 脇腹からお腹を泡立てると、シーラが身をよじる。
 声も反応も可愛らしく、不自然な感じは受けなかった。

 そのままイライザは、へそから胸へと手を動かしていく。

「……あっ……」

 色っぽい声を、シーラが出した。
 イライザも赤面しそうになる。
 胸はまだ大きくはないけれど、全体のバランスは目を見張るほどだ。

 貴族の妾の娘であるイライザは、奴隷を持ったことがない。
 ここまで美形、しかも高位のエルフの奴隷はディーン王宮にも数人しかいないだろう。

 むにゅむにゅと胸まで調べ終わり、今度は足の先に移る。

「……っ」

 やはりくすぐったいのか逃げようとする足を、しっかりとイライザは捕まえる。
 足の指先も爪もきれいに整っている。

 ほんのり羨ましいと、イライザは思った。
 宮廷魔術師として、イライザも身なりはおろそかにはしていない。

 それでも仕事柄、ディーン王国では深夜まで書き物や会議をしていたのだ。
 軽い肌荒れや目のくまがないと言えば、嘘になる。

「足を、開いて……」

「……はいです」

 ついイライザも、小声になってしまう。
 ふとももは、ほっそりとしている。
 顔を見上げると、眉を寄せて頬が赤くなっている

 同じ女性としては、恥ずかしがらせるつもりはない。
 脚のつけねも調べて、背に周る。

 シーラの魔力の強さも、段々と把握しつつある。
 素晴らしい能力、と認めなければならない。

 流れる魔力がよどみなく、無駄なく全身に伝わっている。
 宮廷魔術師に匹敵するほど、魔力を使いこなしている。

 元々魔術が得意なエルフにしても、年齢を考えれば抜きん出た才能なのは間違いない。
 浴場に来るまでのやり取りで、シーラには計算能力もあるとわかっていた。
 真面目に働き口を探せば、公爵に仕官や宮廷魔術師になってもおかしくない逸材だった。

 イライザは後ろからシーラの背中を眺め、髪に手をやる。
 ジルは、女性の髪が好きだ。

 妹との話を聞くと、よく撫でていたらしい。
 多分そのせいだろう。

 気合いをいれて整えたり、普段と違う髪型の時は必ずジルは褒めてくれるのだ。
 その時は飛び上がりたいくらいに、嬉しい。

 あともう少しで、検査も終わる。
 艶とした髪の毛も一緒に、泡立てる。

「……イライザ様は、ジル様がお好きなのですか?」

 イライザの手が、ぴたりととまる。
 思ってもみなかった、シーラからの問いかけだった。

「……わかりますか?」

 本当は、否定したかった。
 でも嘘にすれば、立場の間に消えてしまいそうだった。
 イライザは、やむなく認める。

「最初に、ジル様と一緒にいる時……一瞬、怖い目をしてましたです。勘ですけれども……」

「そんなに、でしたか……」

 シーラが、こくこくと頷く。
 わしゃわしゃと、髪から顔まで揉みつづける。

 イライザは薄くため息をつく。
 これは、自分のせいだった。

 シーラに、おかしいところは何もない。
 桶からぬるま湯を、ゆっくりとかけていく。

 シーラの推測は、分かりやすいものだった。
 ちゃんと言葉にしたのは、私との関係を明確にするためだろう。
 ある意味、ありがたくもあり……情けないところもあった。

「……とらないで、くださいね」

 牽制じみた、嫌な言い方だった。
 自己嫌悪がぶり返してきそうになる。

 気持ちを読み取り、世渡りするのもうまそうだ。
 言葉は静かだけれども、シーラは侮れない。
 イライザはアルマ宰相の影と力を、確かに感じ取ったのだった。
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