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原作35巻のニューヨークの事件の前の話です
※イベリスは登場しません
まだまだ文章は未熟ですけど読んでいただけると嬉しいです
ゴールデンアップル
作:璃


かつて大女優だったシャロン・ヴィンヤードは、“ゴールデンアップル”という舞台で脚光を浴びていた。
ゴールデンアップル(金の林檎)といわれたその林檎は、ギリシャ神話に基づいたもの。
ちょうど一年前、アメリカのニューヨークにて“ゴールデンアップル”という大舞台でギリシャ神話を引っかけた舞踏会が繰り広げられた。

舞踏会が始まる3日前、劇団あてに小箱に包まれた奇妙すぎる贈り物が楽屋に届いてきた。

それは、『For the Fairest』{最も美しい女性(ひと)}へと動物の真っ赤な血だけで残酷に書き殴られた奇妙な金色の林檎…。
着飾りの金色のスプレーでコーディングされた摩訶不思議な林檎が一つ小箱の中に隠されていた。

届けられた金の林檎はまるでギリシャ神話の(争いの女神:エリス)が宴に招いてくれなかった3人の女神に贈った『金色(こんじき)の林檎』と全く一緒だった。おそらくギリシャ神話の林檎を真似て作られたのものだと想定できる。

林檎に血塗れた文字が書かれていることから劇団に恨みでもある誰かの姦詐(かんさ)で贈りつけられたのだろうということもだいたい予想される。


劇団員みんなに嫌というほど眼に凍みさせる褐色の文字。
一つ一つに怨念でも込められたかのように深く彫り込まれている。
ーーー自分たちの舞踏会のギリシャ神話になぞられた『金の林檎』に類似している贈り物に何か妙な違和感を感じる。

言葉では何もいえないほどの深みある形に変わった林檎に視線を向ける。
みんな金色の林檎にとりつかれたかのようにくぎつけられる。
見せかけは、ゴールデンアップル(金の林檎)に見えるものの中身に詰まったものはもうラットゥンアップル(腐った林檎)と同じ。

彼女たち(女優たち)は呑み込まれそうな息を殺して一直線に林檎を眺めていた。
まばたきもせず“金色”と化した林檎に一直線に凝視していた。
物の配置は動いていなくてもついつい視線は林檎に向けられる。
彼女たちの沈黙な空気が楽屋全体に集まった。



「気にすることないさ……。
こんな小細工なんか所詮誰かの悪戯(いたずら)にすぎないさ。」
暗い雰囲気漂わせる女優たちに突然ヒースが慰めの言葉をかけた。

ヒースの一言で彼女たちに漂わせる沈黙の世界は一気に崩れた。劇団が誰かに狙われているっていうこの状況で彼は涼しそうな顔で微笑みを交わした。

みんながおくっていた視線を“金色の林檎”から自信満々なヒースへと視線を移し変える。


ーーーなぜ、彼はこの血塗れた文字に違和感を感じないんだろう・・・。
どうして彼は誰かが狙われているこんな危険な状況で“笑み”を交わせるのだろうか・・・。
みんなはそれについて疑問を抱いた。


そして再び微笑ましく笑う彼に注目をした。


「でもヒース・・・
今日、劇団宛てに血塗れた金色の林檎が贈りつけられたのよ…。
3日後は舞踏会なのよ…
3日後に向けて林檎を贈りつけた誰かが舞踏会に訪れるかもしれないっていうのに気にならないわけないじゃない。
それだけじゃないわ…。
この劇団の中で事件が頻繁にあるのよ。どうしても見過ごせないわよ…。」
アカネはヒースに対して少々怒り狂った。
その間にローズが仲介に入りアカネを止めに入った。

「ちょっと、アカネ落ち着いて..
今は、怒鳴りつけて場合じゃないのよ…。劇団の中で起きている事件について警察にいった方がいいのか考えてる方が先でしょ?」

「それにしても警察に奇妙な贈り物について話した方がいいのかしら………
ローズはどう思うの?」
「私は、奇妙な贈り物についてや今までの事件全部警察に話した方がいいけど…リラは?」





「私は、警察に通報することを反対するわ。」
高飛車に乗ったような麗女が突然口を開いた。
遠くからわざとらしく足音を響かせて凄艶な双眸を視界に入れようとする。

「シャロン・・・・・・・・」
みんなが足音を鳴らしている麗しき女性(ひと)のことを“シャロン”とかすれた声でつぶやく。
シャロンは女王様気分で一歩ずつ行進する。

一斉にシャロンに方へ注目する。
シャロンの姿はみんなの瞳の中には貴い人物を拝んでいるように見えた。

「シャロン・・・
劇団の中で起きた事件について警察に通報したらダメなの?」
必死になってシャロンに向かってつぶやくアカネ。
シャロンはまた女王様気分を表示するかのように微かに笑った。

「警察に通報なんてしたら事件を犯したその“誰か”に余計に狙われる危険性があるわよ
犯人は今も盗聴器で私たちの会話を聞いているのかもしれないわ
ここは大人しくして外部の人間には何もいわない方がいいわ。
この劇団に関係する者以外のね…。
2日間犯人の様子を見ていた方がいいみたいね…
それが一番安全な策よ…。」
シャロンは長々しい説明を詳しく述べた。みんなが何もいえないぐらい説得力のある口調で…。


楽屋の窓ガラスがギシギシとした鈍い音を鳴らして揺れる。
ただの吹きわたる風の仕業だが揺れが激しい。
ハリケーンのような突風が窓ガラスにまで迫ってきている感じだ。

気候もやや曇り気味。
これから嵐のような風雨が降り注ぐような気がする。
それと同時に事件の前兆を告げているのかもしれない。

シャロンは嵐のような事件の予感に軽く笑った。室内の騒ぎは鎮まった。
そして、出てきそうな次の言葉を抑えるために一旦深呼吸した。



「そういえばヒースって映画の話が来て明後日の舞台が最後になるんだよね……」
深呼吸し終えたリラから抑えきれなかった言葉が発した。
その言葉を聞いて痛いほどの視線が辺りに散らばる。

痛々しい言葉より辺り一面に広がる視線を浴びている方が怖さを感じる。
“禁句”でもいったのだろうか?リラは唖然とした様子で辺りを見据える。

四方八方発される視線はまるで“誰かに追いつめられた”ときと同じ。
凛とした空気が張ってくる。



「まあ、映画の話が来ているのは事実なんだ…。
明後日の舞台で幕をおろすつもりんだ」
彼は何とも思っていないような口調で清々しくつぶやいた。

「まあそろそろ舞台裏にでも行こうじゃないか…………」
彼は何かに感づいたかどうかわからないがその場を立ち去ろうと逃げ足で楽屋を出た。

楽屋から出たヒースに引き続き女優たちは速やかにドアを開けた。
ギシギシときしむ鈍いドアの音は気にも留めずに前へと一歩行進した。
後ろから聞こえるバタンとかすったような音も無視して舞台裏へ向かった。


紛れてローズは、楽屋に潜み、鏡に貼ってある写真とにらみ合った。
ローズがまだ楽屋に潜んでいることなど誰も気付かなかった……。

―――そう、気づいていたのはシャロンだけだった。
冷たい眼を微かに光らせて視線を楽屋の方へ向けなおす。
曇った眼鏡を瞬時に取り外し仄かな痕跡を拭いとる。
そして、眼鏡を無動作に掛け直す。
掛け直したと同時に一瞬眼鏡に灯りをおびる。

涙溜まったローズの眼にはミカエル(大天使)に扮したヒースの写真しか見えていなかった。の雫が幾度なく頬に零れ出すのをおさえる。

狂おしいほど愛していたヒースのミカエルが彼自身の手で絶たれてしまったことが言葉では表せないほど悲しい。

嫌でも彼女(ローズ)の中で“ヒースに裏切られた”感触が心底で回転している。


「ヒース…………」
泣き崩れそうな彼女の声。
もう耐えきれないほどの辛さが外にまで表れてしまう。
シャロンは心の境界線に悩まされるローズを廊下から黙って見ることしかできなかった。自分の眼鏡を光らせて“何かわかった”という様子で楽屋の前から去った。

わかったこと、それはローズがヒースに対して苦悩していること。
抑えきれない感情が遠距離からでも伝わってくる。

ローズはヒースに何か犯しそうな予感がする。
ただ第六感が私の頭の中でぐるぐると回り続ける。

“ローズはヒースを殺す”。
この直感がずっと働き続けた。





―――嵐のような雨がニューヨークに降り注ぐの3日後シャロンの予感は見事に的中してローズは犯罪たる行為を犯した。
ヒースを自分の愛するミカエルのまま封印した。


これでヒースの最後のステージ(舞踏会)は血塗れた舞台と化して幕を閉じた。








これが殺人劇が始まる3日前の事実だった……。












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