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ライトノベル小説で学ぶ宅建士(宅地建物取引士、旧:宅地建物取引主任者)試験 過去問版 作者:大滝七夕

権利関係ステージ2

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宅建士試験過去問 権利関係 債務不履行 2-21 平成22年 解説


建太郎「1は……。ええっと、こんな規定あったっけ?」
胡桃「次の条文をチェックしてみて」

(損害賠償の範囲)
第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

胡桃「債務不履行によって、債権者に損害が発生した場合、債務者はどこまで賠償すべきかが問題になるのよ。どう考えるべきか分かるかしら?」
建太郎「債務不履行と因果関係のある損害を賠償しなければならないということだよな」
胡桃「例えば、建太郎の会社――宅本・オーガナイゼーションでは、賃貸マンションを扱っているよね」
建太郎「ああ。扱っているな」
胡桃「私が宅本・オーガナイゼーションと賃貸借契約を結んだとするわ。契約当日になって、私は引っ越し業者と一緒に、賃貸マンションに赴いた。だけど、建太郎の手違いで、部屋がまだ空いていなかったとするわ。当然、私としては、以前に住んでいた部屋に引き返さなければならないし、引っ越し業者にもいったん戻ってもらわなければならないことになるわ」
建太郎「うん。そんなときは、俺の部屋に引っ越してくれば、いいじゃん」
胡桃「そんなわけないでしょ。以前の部屋を借り直さなければならないし、引っ越し業者へのキャンセル料金とかも発生するわね。つまり、損害が発生しているわけよ。当然、その損害は通常損害として、建太郎に対して賠償請求できるということになるわね」
建太郎「うん。そうだな」
胡桃「もしも、両当事者がその損害発生を予見していたものに限るとすれば、建太郎が、そんな損害が発生するとは思わなかったよと白を切って、賠償に応じないこともあり得るでしょ」
建太郎「うん。そう言い逃れできてしまうことになるよな。そりゃおかしい」
胡桃「そこで、第四百十六条の1項よ」
建太郎「これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。特に条件を付けることなく。つまり、予見可能性を問題にすることなく、損害賠償をしなければならないということだな」
胡桃「そうよ。それが理解出来れば、1がおかしいと分かるわね。次、2にいくわよ。私がいったん、以前の部屋に引き返した後で、もらい火による火災に巻き込まれて、家財の一切を失ってしまったとするわ。そんな時、私としては、『さっさと引っ越ししていれば、火災に巻き込まれずすんだのよ!火災に巻き込まれた分も賠償請求させていただくわ』と言いたくなるわ。分かるかしら?」
建太郎「気持ちは分かるけどさ。そんな要求に応じていたら、なんでもありになっちゃうじゃん」
胡桃「そう思うでしょ。つまり、特別の損害に関しては、一定の歯止めをかけるべきなのよね。そこで、2項よ」
建太郎「『特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。』とされているわけだね」
胡桃「ただ、条文をそのまま読んではだめよ」
建太郎「えっ?そうなの?」
胡桃「判例では、当事者というのは、債務者のことと解しているのよ。債務者が債務不履行をしようという時に、債権者に特別の損害が生じるだろうと予見していたならば、それによって生じた損害を債務者が賠償すべきだということなのよ」
建太郎「なるほど、当事者というのは、債務者のみなのか」
胡桃「もっとも、この条文に関しては、保護範囲説と言って、当事者とは文字通り、債権者と債務者のことだと解釈する学説もあるけど、判例は相当因果関係説と言って、当時者とは債務者のことを指すとしているわ。この問題では、判例の立場を問うているわけだから、2の選択肢は誤りということになるわ」
建太郎「うーん。難しいな。今、胡桃の話したことって、宅建レベルを超えているよね?」
胡桃「超えているわ。でも、正解を見つけるためだけならば、私が話したことを理解していなくても大丈夫よ。3はどうかしら?」
建太郎「履行不能による損害賠償請求権の消滅時効はいつから進行するか?だよな。まず、消滅時効の条文によると」

(消滅時効の進行等)
第百六十六条  消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2  前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

建太郎「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。履行不能による損害賠償請求権を行使できるのは、本来の債務の履行を請求できる時だよな?」
胡桃「正解。4はどうかしら?」
建太郎「過失相殺は、債務者が主張するかどうかに関わりなく、裁判所が考慮できるんじゃなかったっけ?」

(過失相殺)
第四百十八条  債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

建太郎「この条文に、但書とか、債務者が主張した時はというような制限はない」
胡桃「そうね。条文そのままだわ。一応判例だから、押さえておいてね。というわけで答えは?」
建太郎「3だね」

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