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箒型乗用車
作:郎



「いでッ!!」
いきなり頭部に鈍い痛みを感じて、つい情けない声をあげてしまった。
何だってんだよオイ、だとか (大体予想はついているのに)ぼやきながら目線をあげると、そこには想像通りの光景があった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、すみません!!僕、この箒買ってもらったばっかりでまだ慣れてなくて、ついコントロール狂って、その・・・・・・」
「・・・あー、ハイハイ。事情はわかったから。怒ってないから。」だから早くどっかいきなさい。
そういってみると、どうやら元から謝罪に気持ちはこもっていなかった様で、少年はすぐにどこかへと飛んでいった。

  箒に跨り、空を飛んでどこかに飛んでいった。

「あー・・・うん、本日もいい天気ですね。」
空飛ぶ少年の事とはまるで何の関係も無い事にしか、感想が浮かんで来ない自分が何故かちょっと嫌だ。
まあその程度の事、どこにだって溢れかえっていたりする訳だから、感想なんか浮かんでくる訳が無いっていうのもかなりあるが。 
今じゃ箒で空を飛ぶのは自転車よりずっと気軽な移動手段で、40キロくらいならば出せるそうだし、高性能ナビとかもついてる。
交通手段としては優れてるのは、それだけ聞けばまあ認めない訳にはいかないだろう。
そういう所の性能だけは超ハイテクなのに、詐欺かと思うくらいに安いし、免許とかも何もいらない。
だから流行ってる。うん、あくまで 機 能 性 が い い か ら 流行ってる。
国民達がトチ狂って、メルヘン世界に逃避気味だったりする訳では決してないのだ。 と信じたい。
箒の形をしているのはあくまで効率よく動ける形を追求した結果そうなった物であって、別に魔女とかそういう発想とはまるっきしに関係がない。
さすがにオッサンオバサンが箒に乗ってんのは目にイタイとか思ったりしたりするけれど、それはオッサン方とて仕方なーくやってる事な訳で、そんな事考えちゃ可愛そうだ。
箒にまたがる時、子供だけでなくいい年した中年サラリーマンや主婦や未来を背負う若人達の顔までがやけに無邪気な喜びに満ち溢れているのも目の錯覚だ。絶対にそうだ。
・・・やばい、このまま考えてると、余計な考えにいき付きそうだ。このさい、余計な事考えるのやめて帰るか。
・・・ていうか元々帰り途中だったってのに、何で突っ立ってるんだよあたしは。
薄暗くなってきている事に気付いて、何かわかるわけでもないのに、ついつい上を見上げてしまった。
大勢の有象無象どもが一面をとびかっているだけで、空なんて物は微塵も見えやしない。それがあたりまえになってきてるから、今更嫌悪感も抱けない。
本日の天気は、誰も傘を差してない事からして晴れのようだ。視力には自信があるから、多分間違いじゃあないと思う。
そのままマヌケヅラして上を見ながら歩いていると、ふいに グシャリ という嫌な音が、どこか遠くから聞こえてきた。
あぁ多分、何処かで人間スプラッタでもできたんだろうなと、気にとめもたりしなかったけれど。
  さて、家に帰ろう。


テレビをつけると、いつものニュースがはいっていた。今日もまた、箒型乗用車での被害が大きいらしい。
アナウンサーがいう事には、本日の被害者は死者390名に、重軽症者2495名だそうだ。あぁ、でもいつもより少なめ。
こんな状況が、もう早いことで三年ばかり続いている。
そういえばこないだ社会科で、日本の人口が急速に減っていて、たった5年で1割くらい減少しただとかってのを聞いた気がする。
多分、いや絶対、箒型乗用車が原因だろう。多分、その「5年で1割」の5年を3年に変えた所で、結果はまるでかわらないはずだ。
このまんまの調子でいくと、あと30年かそこらで日本国民はほぼ全滅になるらしい。親の電卓で計算してみた。
何てこった。あんなくだらないおもちゃみたいなモンのせいで、あたしのいま住んでる国は滅びるらしい。
今のうちに、どっか外国にでも移住しようか。
さて、どこの国がいいかなんて考え始めた所で、急に眠気が襲ってきた。あたしは本能の促すままに、一つどでかいあくびをする。
時計をみるとなんとまぁ、もう既に日付が変わっていた。あたしは実感を伴わないニュースを見るのをやめにして、
  大人しくすごすごと、ガキらしく寝床に入っていった。


ずいぶん前に書いて放置していたもの。
雰囲気だけでお楽しみを













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