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アジサイ

作者:ピノ
雨で濡れたアジサイは、なんだか泣いているように見えた。
そう見えるのは、僕が泣きたいような気持ちだからなのかそれとも……
軒下避難した僕の体を小さな水たまりが鏡となって映す。
白い猫
そこに写っているのは、十数年間見慣れた僕の体じゃなくて、赤い首輪をした野良猫だった

僕がどうしてこうなったのかわからない。
ただ、僕は幼なじみの響と学校から帰る途中、はしゃいで道路に飛び出した響をかばってトラックにひかれたことは覚えている。
あのとき聞こえた響の悲鳴の悲鳴と同時に全身がバラバラになりそうな痛みが走って僕は意識を失った。
そして、次に目を覚ましたとき、僕は猫になっていて響の家に庭に咲くアジサイの下にいた。
最初は驚いた。
なんせ、猫だ。
今まで、ずっと人間として生きてきたのにいきなり猫になったらどうしていいかわからない。
とりあえず、いろいろどうなっているのか知るため、自分の家に行ってみた。
自分の家は響の家の隣にあるからすぐに行けるだろうと思ったけど、なれない猫の足だと30分くらいかかった。
なんとかついた僕の家の庭にたどり着いて、リビングの窓から家の中を覗くと誰もいなかった。
どうやら今日は平日のようだ。
うちは共働きだから昼間は誰もいないし、妹も学校に行っているはず
どこか家の中に入れる場所がないかと探していると予想はしていたものの信じたくはない光景があった。
僕の写真が飾られた仏壇が、リビングの隣にある畳の部屋に置かれていた。
ああ……僕は本当に死んだんだ。
確かにあれが夢じゃないのなら死なないほうおかしい。
じゃあ、どうして僕は猫としてここにいるのだろう?
僕は、とりあえずいた響の庭に戻った。

空がどんより曇ってくる。
今に降りそうな天気だ。
そういえば、僕が死んだときも雨が降っていたな。
そんなことを思う。
雨が降ったら体が濡れるなと響の家の軒下に移動する。
さてこれからどうしよう。
そう思っていると、上からドアの開く音がする。
あれ?響のうちも共働きで、今は誰もいないはず。
そっと軒下から出てみるとそこには響が立っていた。
だけど、僕が知っている響ではない。
目には隈ができていて、顔は青白い。
響はバカだけど、元気がよくて、もっと活発的な感じの女の子だった。
「・・・・・・ねこ?」
響が僕に気づいた。
思わず僕も響と声をあげる。
だけど僕から出た声は、「にゃーお」という鳴き声だった。
響は弱々しい笑顔を浮かべると屈んで僕の頭を撫でた。
なんだか気持ちいい。
目を細めると今度は、顎の下を優しく撫でてくる。
何かくせになる感覚だ。
なんというかくすぐったいけど、暖かい感じもしてすっとこうして欲しい気がする。
響はしばらく僕の頭や顎の下体を触ると今度は手を伸ばして両手で僕をつかみ持ち上げ、僕を膝の上に載せた。
響の暖かい体温が僕にも伝わる。
そうして、また僕を撫でながら語りかける。
「ねえ、ねこちゃん。君はなんて言う名前?どこから来たの?」
俺だ。陽介だ。
そういいたかったけど、やっぱり「にゃーお」という猫の鳴き声しか出ない。
だけど、もしかしたら伝わるかもしれない。
だから僕は必死に鳴いた。
するとその努力が、通じたのか響が僕の頭を撫でて「君、陽介に似てるなぁ」
といった。
やった!通じた!!
だけど、次の瞬間暗い表情になり僕の頭から手を離す。
「そんなわけないよね。だって、陽介は・・・・・・ようすけは・・・・・・」
響の頬から涙が落ちる。
なんかいいたいけど言葉が見つからない。
すると、庭にも水の粒がぽつり、ぽつりと落ちてくる。
雨だ。
「あめ……あ…め……よう…すけ…」
響がいきなり立ち上がる。
膝に乗っていた僕は床に落ちる。
普通の猫ならうまく体をひねって床に着地できるだろけど、僕はまだ猫になって半日も立っていないため、床にそのまま落ちる。
全身に痛みが走る。
だけど、そんなことよりも響だ。
なんとか起きあがると響は震えていた。
目は大きく開いて遠くの方を見ていた。
これはもしかして、事故のフラッシュバックか!?
響は頭をかかえ、大声で泣き、走って家の中に入っていく。
階段を駆け上がりドアがおもいっきり閉められ音がする。
僕はひとりリビングに取り残された。
響は僕が死んだとき深い傷跡をおってしまった。
どうしようもない絶望感が僕を襲った。


僕は数日間を響の家の軒下で過ごした。
どうしたら、響の傷を癒せるのか。必死に考えた。
だけど、思い浮かばない。
時間が解決してくれるかもしれない。
そう思うも毎日会う響の顔は、いっこうによくなる傾向にない。
僕は軒下から雨を見つめる。
僕にとって、響はとても大切な存在だ。
小さいときから一緒で家族のような存在で、楽しいときもつらいときも一緒にいた親友で、そしてずっと好きだった。
それは猫になっても変わらない。
元気な響とともに今も一緒にいるよ。
そう伝えたい。
僕は、決めた。
軒下から出ると、僕は家に上がろうとジャンプする。
一度目は失敗。
ジャンプが足りなくて、べちんと落ちる。
やっぱり、猫になってまだなれていないのか。
うまくいかない。
立ち上がって、また挑戦。
失敗。
手は届いたけど、まだ足りない。
立ち上がる。
失敗。
何度も繰り返すうちに体は濡れ、泥だらけになる。
だけど、ここでくじけてなんてられない。
今度は助走をつけておもいっきり飛ぶ。
前より高く飛べた。
ベランダの板に前の両足がつく。
僕は必死にベランダにあがろうともがく。
なんとか、体をくねらせてベランダにあがる。
もう息も絶え絶えだ。
だけどまだ難関はある。
幸いベランダのドアは少し開いていた。
僕は前足をドアにつっこみ必死に幅を広げようとする。
なかなかうまくいかない。
だけど、少しずつドアをひらいっていってなんとか入れる隙間ができた。
体をつっこみなんとか部屋の中に入る。
部屋は電気がついてないから暗かったけど、もう何度も訪れたことがある家だ。
リビングを抜け、廊下に出て、階段を登る。
幸い階段はそんなに急勾配ではなかったから、なんとか登ることができた。
二階につき、響の部屋を目指す。
一番奥の部屋、壁のように閉じられたドアの前で僕は叫んだ。

響!聞いてくれ!
俺は、お前をすごく大切だと思っている。
事故で俺は、この世からいなくなって、人間じゃなくて、猫になってしまってけど、俺は、お前のそばにずっといたい。
だから響、出てきてくれ!!

しばらくするとドアがゆっくりと開いた。
響は、僕をゆっくりみて両手で優しく抱き上げ抱きしめた。
「ありがとう陽介・・・・・・」


それから響は学校に登校するようになった。
少しずつではあるけど、元の元気を取り戻しつつある。
で、僕は、響のうちの飼い猫になった。
まあ、響の両親も猫好きだったようで、あっさりと許可が出た。
「じゃあいってくるね。」
響が、僕に言う。
いつも学校に行く響を見送るのが僕の日課になっている。
いってらっしゃい!
というがもちろん出る声はにゃーおという鳴き声だ。
響は、僕の頭を軽く撫でると、学校に向かう。
季節は、梅雨がもうすぐ明け、夏がくる。
空は澄み渡り青空が広がる。
今日は、暑くなりそうだなぁ。
庭先をみると初夏の太陽を浴び、アジサイが綺麗に咲いていた。
読んでいただきましてありがとうございます。
ピノと申します。
梅雨ということでこんな話を書いてみました。
どうでしょうか?
願わくは、楽しんでいただければ幸いです。
ではでは……

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