太陽の畑とチョコレート
いつものようにヒマワリが咲き乱れる畑を抜け、僕はいつもの場所へ行く。
まわり一面綺麗な花が咲き誇っているのに対して、あまりに質素な小さな家。
「風見」と書かれたネームプレートが下げられている以外は何の飾り気もない木製のドアを軽くノックすると、コンコンと心地のいい音が響く。
「おはようございます、幽香さん!」
いつものようにドアを開け、いつものように挨拶をする。
「あら、今日は早いわね?」
そして、いつものように僕を迎えてくれる人。いつものようなドSな笑顔で迎えられて、いつものように僕は癒される。
今日もいつものような綺麗な植物のような緑髪がとてもキューティー。
いつもと違うのは、今日は2月14日だということ。外界ではバレンタイン・デーといって、女の人が想っている男にチョコレートをあげる日だとか。
なんでも外界の男性はこの日、チョコレートを貰えるかどうか、そんな期待に一日中胸を躍らせているらしい。
「べ、別にチョコレートがほしいから早く来たわけではないですよ!?」
そんな知識を聞き入れるから、当然僕も男の子。幽香さんからのチョコレートというものを期待しているのだ。
「何を言っているのかしら……。まぁ、それはともかくいいタイミングで来たわね」
と言ってキッチンに向かうので、僕はやっぱりチョコレート作っててくれたんだ!1ヶ月前から外界の風習、主にバレンタイン・デーというやつについて教えてよかった!と内心大喜びだったが、幽香さんの言葉は無慈悲にも「台所、最近汚れているから掃除しておいてくれるかしら?」なんて救いのないものだった。
「ひどい……チョコレート……」
「早く片付けて置いてね? そうしないとやりたいことができないから」
無慈悲だ。あまりにも救いがなさすぎる。
僕が泣きそうな顔をしていると、幽香さんはそんな僕を見てニコニコと微笑んでいる。
僕がこういう顔をすると、いつも必ず幽香さんは言っている。「あなたのそういう顔が大好きなの」
だが台所を片づけないわけにもいかなく、そもそも普段から幽香さんにはコキ使われているので慣れている。そんな自分も悲しい。けど、いつもご褒美をくれるから、それがうれしくて逆らえない。
「幽香さーん、だいたい片付きましたよー」
「あら、ありがとう。じゃあ、次はマッサージをお願い」
幽香さんは疲れているらしく、僕が掃除をしている間ソファで横になっていた。
凄く気だるそうにしていたので、マッサージをすると幸せそうな笑顔になり、僕はこれがご褒美でもいいかもしれないな、なんて思ってしまう。
「ふぅ……気持ちよかったわ。ありがとう。ご褒美をあげなくちゃね」
「チョコレートですか!?」
「踏まれるのと、足を舐めるの、どっちがいいかしら?」
「踏んでください! ……じゃなくてー!」
「わかってるわよ。もう焦らさないわ。……お茶を淹れるからお外で食べましょう」
と、にっこり微笑んでこそっと取り出したそれは綺麗なお花柄の包み。
夢見てたこの瞬間。あまりにも嬉しくて、感動して僕は幽香さんに思いっきり抱き着く。
「……幽香さん……大好きっ!」
「あ、あまり大したものじゃないわよ……。チョコレートなんて作るの初めてだったんだから」
「でも、すごくうれしいです! それに手作りだなんて……」
外、お花に囲まれてティータイム。
包みを開けてみると向日葵の形をしたチョコレートがいくつか入っていた。
綺麗に象られていて、幽香さんの頑張りが目に見えるようでとてもうれしくて。
「早く食べなさいよ……恥ずかしいわ」
「はい!」
一つとって食べてみると、いたって普通の味。
だけど、このバレンタイン・デーという行事にはそんなことは全く関係ないのだろう。
「おいしいです、幽香さん」
「そう……まぁ、あなたの喜んでる顔もたまには悪くないわね」
幽香さんは顔をすこし赤らめ、微笑む。
「ちょっと作るのに疲れちゃったわね……おやすみ」
そういうと幽香さんは僕の膝を枕にして、眠りにつきました。
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