月影さんと紫雲さん
ボクは、どうやらファルテスとして産まれてきてしまったらしい。
この世の中には、
ファルテスとアルクェス、その他一般人
で構成されている
目に"イロ"を宿した人間と目に"イロ"を宿していない人間
幸せに、なれる筈だったんだ。
事が、思い通りに運べば____
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「紫雲さんっ!!」
ドーンッ、といつも通りに抱き着く。
「これ…。人前ではあれ程辞めろと…」
これも、いつも通り。…紫雲さん、何時もボク思うンですが『人前では』ってことは2人っきりの時は沢山抱き着いてもイイんですかね?なんて、言ったらあの言葉しか貰えなくて、ボクが欲しい言葉はくれない。
「えへへ、ごめんなさい~」
にこにこと笑いながら紫雲さんの目を見詰める。
紫雲さんの目は『微かに紫の入った色』。
心の何処かで紫雲さんがアルクェスだったら良かったのに、なんて思ってしまう。
そうしたらボクの色に染めれるでしょう?
「ねーねぇー紫雲さんー」
「…なんだ…」
はぁ、と溜息をつきながらもボクに返事してくれる辺り、ほんとに優しいと思う。
「ボク、紫雲さんがアルクェスだったら良かったなぁって思うンです」
ぴたり、と時が止まった様に紫雲さんの動きが止まる
「…?紫雲さんはファルテスでしょう?」
「…違うと、申したらお前はどうする」
次はこちらが固まる番だった。
紫雲さんは何を言った?ファルテスじゃない?アルクェス?…あ、そうだ、ファルテスの人はカラーコンタクトを付けてるって噂を聞いたことがある。紫雲さんも恐らくその例だろう。
全く気付かなかった
「…ねェ、紫雲さん」
漸く声が出たのは弱々しい声だった。
情けないことこの上ない
「……………なんだ」
「貴方の、本当の色を教えて下さい」
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紫雲さんの目の色は、ボクの色とも、初期の灰色とも違う、禍々しい赤色の目だった