第5羽:闇の足音
「ティア?」
エンは茂みの奥の暗闇に向って言った。
風がザァと吹いてエンの赤髪を揺らした。後ろからこっちに来るレキの気配があった。
「どうした?動きを止めて・・・。」
どうやら森の奥を見ているエンを不審に思って来たらしい。
「ティアに身に何かあったのか・・・?」
そうつぶやきつつエンは茂みの奥を見ていた。茂みの奥は暗くて何が居るのかはとてもわからなかった。
そんなエンを見てレキが気づいたように言った。
「そういえば、ザコはあらかた片付けたが―――――」
レキが後ろを向いてそのまま続けた。
「三頭犬が居ないな。」
レキがそう言った時には、もうエンは茂みの奥の闇へと走り出していた。
*
「きゃああああ!来ないでーーーーっ!」
森を脱兎の如く走るティアは後ろから追いかけてくる先ほどまでネズミの姿だった闇に向って言った。
先ほど、この闇はティアの前に突如姿を現して突如、姿をボコボコと恐ろしい音を立てて変えたのだった。今は不気味な姿となっている。
カサカサカサカサ・・・・・
「!」
カサカサカサカサカサ・・・・
闇の足音は確実に近くなっていた。しかも足音を聞いただけで姿の想像がつく。
そう、ティアだけではなく、ほとんどの女の人が嫌いなアレだ。
ネズミも台所に出るがこっちの方が怖い。ティアは思わず後ろを振り向いてしまった。
「っ!!」
ティアがそのおぞましい姿をもう一度見て小さく悲鳴を上げた。
闇は何に姿を変えても黒くなるが、その闇はちょっとテカテカ光っていた。背中に羽が生え、ネズミのヒゲが触覚になり、ネズミの足は6本あった、その6本の足がしきりに動いている。しかも人の足並みに大きい。
ちょっと気を失いかけたティアの耳に闇の足音、ではなく、救いの声が聞こえてきた。
「ティア!」
「!!―エン!?」
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